昨夏の電力不足対策として「計画停電解消に向けての提言」といった私なりの見解を表明しておりました。当時は未だピーク電力の削減といったことがあまり知られておらず、無用な節電の方向へ走った方々も多かったのではないかと思います。最近は、ピーク電力を抑制しさえすれば、電力不足は回避できることが広く認識されてきつつあるようです。
電力不足対策のために電気料金をピーク時に高く、それ以外を安くすれば簡単に解決できるといった見解が、識者・評論家から多く寄せられております。確かに、ご主張の通り、一定の効果が期待できると考えます。しかしながら、問題はどのように実現するかです。この夏の問題ですから、あと3ヶ月の内に準備しなければなりません。スマートグリッドなどが普及しているのならばいざ知らず、今日明日の議論をしているのに何とも悠長なことではないかと感じてしまいます。
ご承知のように電気料金は電力量計器によって計量されております。大口を除く高圧受電している需要家の電力量計では、最大デマンド値(kW)と電力量(kWh)が計量されております。デマンド値によって基本料金が決定され、電力量によって使用量料金が決定されております。(詳細は「電気料金の仕組み」をご参照ください。)
先の主張は、使用量料金をピーク時(夏場の昼)に高く設定しようというものです。一般的な電力量計は時間帯別に電力量を計量できるようにはなっておりませんので、これを実現するためには電力量計を取り替える必要があります。3ヶ月やそこらで果たして全国の電力量計を取り替えることが出来るでしょうか。
さて、ピーク時の電力料金体系については、東電では「業務用季節別時間帯別電力」のように既にメニューとして提供されております。その他多くの電力会社で同様のメニューがあります。先の主張は本質的にこのメニューと同じことです。このためには時間帯別に電力量を計量するメータが必要になります。ですから言うのは簡単ですが、実現は困難ということになります。一年前に議論しても実現できたかどうかということでしょう。
できないことをあげつらっても仕方ありません。ではどうするかということです。
私の見解は、基本料金単価を変更することで対応してはどうかということです。即ち、高圧受電している需要家は最大デマンド値によって契約電力が左右され、これに基づき基本料金が決定されています。要はピーク電力を抑制するということは、デマンド値を抑制することと等価です。これをデマンド管理(デマンド制御)などと称して、高圧受電では広く行われております。
具体的には、現在の契約電力をベースにして、この夏場(7,8,9月)の最大デマンドが小さくなった場合には基本料金単価を割引き、逆にオーバーした場合には基本料金単価を割増するようにします。この割引・割増率を契約電力に対する増減割合に応じて逓減・逓増すれば、より大きなインセンティブ効果があるでしょう。このためには、電力会社が料金体系を見直せば直ぐにでも実現できます。より効果を大きくするためには、電力会社がデマンド監視装置を無償で設置する位の施策があっても良いのではないでしょうか。昨夏はこのような対策を行った電力会社があったと聞いております。
この議論は比較的大きな規模の事業所や工場に関してのことです。家庭や小規模事業所(基本的に家庭と同じ)に関するピーク抑制については別途検討する必要があります。基本的な考えは先に紹介した提言に書いているところですが「見える化システム」と電気予報を活用した表示端末などが今後開発されるのではないかと期待しているところです。
<参考> 「電力と電力量」 「九州電力の15%節電要請について」