この夏の電力需給見通しについて種々報道されておりますが、総じて電力会社に批判的な内容になっているように思います。例えば、節電の見込みが東電10%に対して、関電は3%、中国電力は2%しかないとか、昨年の電力会社の予測と結果に大きな乖離があったとか、もっと供給能力があるのではないかとか、等々多くの疑問が呈されております。電力会社見通しの検証をすることも重要なことではありますが、一方ではこの見通しを前提に対策を講じることの方がより重要であると考えます。
これらの数字をあれこれ議論することに如何ほどの利益があると言うのでしょうか。関電の節電見込みを東電に合わせよというのは簡単です。しかし、それは単なる数字合わせの域を出ません。原発の安全基準策定に際して、津波の想定を危険性が指摘されているにも関わらず過小評価したことを思い起こしましょう。もう想定外は御免です。
電力会社からすれば、当然のことながら安全サイドに見積もるでしょう。であるならば、これをワーストケースとして、これを回避するための対策を検討した方が、より現実的対応であるといえるのではないでしょうか。しかし、これとてあくまでも予測の域を出ません。この見通しを大きく超えてしまうことが無いとは言えません。そのようなケースに備えることも重要な要素です。
電力需給に関して、現時点で正確に予測することは不可能に近いと考えます。ですから不確定要素が大きい事柄を予測することより、むしろコントロールすることに重点を置くべきだと考えます。幸い電力の需要は短時間の予測ならばかなり正確にできるようです。この短時間予測によって、供給不足が発生しそうな場合に警報を出し、需要を抑制させるシステムを構築すれば、大停電などの危機的状況を回避できます。「計画停電解消に向けての提言」は、昨年の夏の電力不足対策に関して書いたものですが、現在においても適用できるものと考えます。
議論、検証、批判等々が不要であるとは言いませんが、「百の議論より、一つの行動」と申します。甲論乙駁、議論の分かれるところは、両方取り入れて見るのも方法です。どれが有効に作用するか分かりません。安全装置は一つより、複数の方がより安全性が高まります。
<参考> 「電力不足対策における電気料金のあり方について」