「県立高校新入生へのタブレット端末導入のために強制負担?」の続編です。この件を報道で知った時、何故に高校なのかといった疑問を持ちました。ICTを活用するならば、義務教育の方が先だろうと考えます。そもそも義務教育の目的や目標は、概ね中教審答申にあるようなことであろうかと思います。
ICTの特長として一斉授業では難しいとされる個々の習熟度に応じたこまめな対応が可能になることが挙げられると思います。一人の先生が多くの生徒に応ずる場合、個々の生徒の理解度を正確に把握し、その到達度に応じた対応を行うことは至難の技であろうと思います。いきおい、生徒の平均的なレベルに応じてといったことになりかねません。レベルに達していない生徒は取り残され、進んだ生徒は満たされません。このことは先生の能力というより、授業方法による必然的な帰結であろうと考えられます。この問題を解決する方法の一つが、ICTの活用といったことかと思います。
このようなICTを活用した授業が上手く機能するには、様々な場面に応じたきめ細かなシステムとなっていなければならないということです。そこで、義務教育と高校の違いをみてみます。
義務教育の場合、公立学校間での教育内容の差はほとんどみられません。逆に、差があっては教育の機会均等という側面から問題が生じることもあるでしょう。このことはシステムを作るにあたって有利に働きます。コスト的にも有利ですが、多くの知見を集めるといった観点からも有利に働きます。一方、高校の場合には、教育内容が一律ではないという点が挙げられます。普通科あり、職業科ありといった違いがあります。職業科でも工業系、商業系、農業系、佐賀県では窯業系といったものもあります。それから、いわゆる受験校といった高校もあります。そして、受験生は、高校の特色などの情報をもとに高校を選択して志願することになります。このことは、システムがこのバラエティに対応することを迫られます。
以上のことより、義務教育の目的や目標からいっても、高校への導入よりも義務教育への導入が先行されるべきであろうと考えます。学習内容がバラエティに富んでいる全ての高校で一律に導入する意味合いがさっぱり理解できません。ましてや、各高校で用いるであろうシステムが完備しているといった話は寡聞にして知りませんし、そのようなシステムが簡単に作れたり、修正したりできるとは到底考え難いことであろうと思います。
どうしても高校への導入を先行させたいと考えるならば、その高校の特色としてICTを掲げ、そしてタブレット端末は自己負担であることを明記した上で募集すべきではないかと考えます。