朝の光は眩しくて。雲一つない空は、冬の寒さには厳しいけれど、それでも清々しい気持ちを運んできてくれる。
「よし!」
制服に着替え終わって給湯室に向かい、やかんを火にかける。<ピー!>と沸騰を知らせてくれるまでの間に、布巾を濡らして硬く絞る。朝一番の水は手に氷が刺さるかのような冷たさだが、かえって気持ちがシャキッと引き締まって好きだ。
そしてデスク周りを拭く。
今までは女性社員に任せきりだったこの始業前の作業。今のご時世「パワハラだ!」「モラハラだ!」となるので、各自自分のデスク周りだけでよいことになっているが、十人もいない部署だから、一人分でも全員分でも、そんなに時間はかからないから、さっとやってしまう。
花瓶の水を取り替えていれば、やかんが<ピー!>とこちらも気合を入れて沸騰したことを知らせてくれる。
ポットに注いでいると、一人二人と同僚が出勤してきた。
「おはようございます!」
「あ、おはよう、カガリ。」
こちらは同僚のキラ・ヤマト。ちょっとぼーっとしたところあるけれど、打ち込みは誰よりも早い。プログラミングも早くって、彼の企画は何度か通ったことがある。将来の有望株だ。
「おはよう、ミリィ」
「お早う。相変わらず早いのね、カガリ。」
こっちも同僚のミリアリア・ハウ。凄く気が利く女の子で誰にも優しい。
「おはようございまーす。」
「おはよう、ルナ。」
「ちわーっす。」
「挨拶ぐらいしっかりやれよ、シン。」
「朝っぱらから煩いな・・・アスハの癖に。」
「なんだと!?」
「シン!やめなさいよ。先輩に向かって。・・・すいません、アスハ先輩。」
ちょっと生意気な後輩、シン・アスカと、彼と同期のルナマリア・ホーク。
こうして続々と出勤してくる同僚たち。
―――気分がいいのはここまでだ。
ここから先、ある意味毎日気持ちがど~んよりする。
<キーンコーンカーンコーン>
始業を知らせるベルと共に、それはやってくる。
「あら、みんな、おはよう♪」
(来た・・・)
制服の上から存分に振りかけたらしい香水の香りをまき散らしつつ、高級シャンプー&リンス&トリートメントの効いた髪をふわりとなびかせてやってきた。
「始業時間ギリギリよ、フレイ。」
ミリアリアがこっそり耳打ちするが、彼女はどこ吹く風だ。
「ちゃんと間に合っているでしょ?・・・あ、この花瓶の花、活けたの誰よ。」
「・・・私だけど…」
「あ~やっぱりアスハさん!そうよね~活け方に気品のかけらもないもの。ガサツそのまんま。やっぱりお花って、活けた人の品格がわかるものよね~」
(くぅ~~~~~っ!!)
いかんいかん。腹立たしいけれどここで噛みついては彼女と同じ土俵に降りてしまうだけだ。
「そ、そうか~じゃぁ折角だし、アルスターさんに今後は頼もうかな~・・・」
「嫌よ。そういう雑用をやるのは下っ端の役でしょ?私みたいに有能な人間じゃなく、下働きがやることなの!」
(悪かったな!下働きで!!)
あ、いかんいかん!ここは深呼吸ー・・・っと。
フレイ・アルスター。私の一個後輩だけど、この子が目下の悩みの種。
ここSEEDコーポレーションのお得意様の会社社長令嬢な彼女は、確かに美人だがお嬢様育ちが良すぎたのか、鼻持ちならない発言が多い。特に女子社員に対してははっきり言って毒しか吐かない。先輩であっても女性社員にはため口だし。
これで仕事ができるんだったら、まだ救いようがあるんだけど・・・
「あ~ん!この関数わかんなぁ~い!・・・ねぇ、教えてくださいませんか?ヤマト先輩♥」
(はじまった・・・)
私の向かいの席に座るキラに思いっきり媚を売りながら、しなだれかかる様にキラに迫るフレイ。
「えーと。これに代入するだけでいいから。」
「すごーい!流石はヤマト先輩。わかりやすいご説明ありがとうございます✨」
「いや、別にクリックする場所教えただけだし。」
「そんなことないですよ~♪すっごく助かりました♥♥」
これだ・・・
目に余るのはこの男性社員に対する猛アタック。わざとらしい媚の押し付けは、はっきり言って吐き気を催すくらいなのだ。
別に気にしなきゃいいだけなのだが、最近のフレイのターゲットが目の前のキラになってから、正直嫌でも目に入るようになってしまった。
やれ「消しゴム無くしちゃったので、貸してもらえますか?」だの「シュレッダーが動かないんです(※コンセント自分で抜いていただろうが)」だの、部屋の一番端っこのフレイの席から対角線上に遠いキラの席までわざわざやってくる。
キラが先日のプレゼンで、自分の作成したプログラミングソフトを使い、これが大当たりしたことで、一気に将来の有望株となった。それを見てターゲットを彼にしたんだろうけど。
「フレイ、私の消しゴム一個余っているから、これ使えよ。」
そう言って私が消しゴムを差し出す、その次の瞬間<キッ!>とひと睨みと共に<スパーン!>と私の手を払いのけて「消しゴム貸してくれませんかぁ~?」と来たもんだ。
その目は「空気読めよ!!(# ゚Д゚)ゴルァ」と言わんばかり。
こんな状況がしばらく続き、うんざりしている。
無論私だけじゃなく、課のみんなもだ。
キラは・・・元々ボケてるやつなので、全くフレイの攻撃に気が付いていない。というか眼中に入んないんだよな…
だって、彼には可愛い彼女がいるんだもん。
ただ、その優しい気質に加えてぼんやりしているもんだから、フレイの「女の攻撃」に気づかず、文字通り「困っている同僚を助ける」くらいにしか思っていないはず。
毎日この繰り返しで、正直こっちの能率が下がる。
(いかんいかん!自分の仕事に集中しなきゃ!)
そう思って頑張っているのだが・・・
「あ~ら、アスハさん。どうしたのそのお弁当。」
就業時、唯一の楽しみのお昼休み。手作り弁当の蓋を開けて、「いっただきまーす♥」とおかかのふりかけをかけた白飯を口に頬張りかけたその時、上から嫌みがふりかかってきた。
「そのお弁当って、これのことか?」
そう言って私はフレイに見せる。今日のおかずは豚肉の生姜焼きに、野菜の煮物。それにフルーツを少々。
すると口に手を当て、フレイは笑い出した。
「何そのまっ茶色のお弁当!見ただけで食欲減退するわね~」
「美味しいけど…」
「貧乏人には口に合うようになっているのね。でもごらんなさい♪私もヤマト先輩に手作り弁当作ってきたのよ!彼のイメージに合うような見た目もきれいなのをね☆」
そう言って自慢げに見せつけられたお弁当は
(・・・うげ・・・)
確かにいろんな色が入っているが、イメージカラーとやらの「青いご飯」って何なんだよ!それにレア気味のローストビーフだの、ピンク色になるほどカニの身が入ったポテトサラダだの、どう見たって手作りじゃないだろう!
「貴女みたいな貧乏人は、一生口にできない代物よね♪さて、ヤマト先ぱぁ~い!一緒にお昼にしましょう!・・・って、あれ?ヤマト先輩は?」
「もうとっくに社食に行ってるけど。」
そうボソっと呟くシンに「えぇ!?」とオーバーリアクションして見せた後、キッとこっちを見返し、「アンタがくだらない弁当見せてくるから、タイミング逃したじゃないの!」
とまぁまたケチをつけられ猛然とフレイが社食に向かっていった。
「・・・こっちこそ、お前のせいで弁当が美味しく食べられないんだけど・・・」
口の中でモゴモゴ唱えながら、私はお茶を飲み下した。
昼休みも時間があとわずか。
化粧室で歯磨きをしていると、遠くからこちらにキャッキャと例の声が近づいてきた。
「やっぱりヤマト君のこと好きなの?」
どうにもフレイに捕まったらしいミリィが彼女の関心ごとに話を合わせている。
「もちろんよ!将来の有望株じゃない。絶対彼を落として見せるから!」
「でも、有望株っていうなら、『ザラ係長』の方が一番じゃないですか?」
ルナマリアの一声に、私も考えこむ。
(『ザラ係長』・・・)
アスラン・ザラ係長―――彼は確かにこの会社でも一番の将来性のある人だ。
何しろ私たちと同期で一番の出世頭。普通この年齢で係長に抜擢されるなんて、まずありえない。
数か国語を操り、海外の事業主とも折衝し、あっという間に幹部候補に躍り出た。来年度当たり課長補佐、あるいは課長に抜擢されるに違いないともっぱらの噂だ。
しかも端正な顔立ちと、落ち着いた物腰。少々人見知りなのか、仕事以外ではあまり顔を合わせたがらず、飲み会を開いても、顔を出した程度ですぐに帰ってしまう。
しかしその姿が余計孤高のイメージをアップし、女子社員の中でファンクラブがあるとさえ噂されている。
「そうね。最初は彼を落とそうかな?って思っていたんだけど、彼ってなかなか専用の個室から顔出さないじゃない?流石に個室に毎回押しかけてってなると、ファンクラブのメンバーたちと面倒ごとになるのは面倒くさいし。落とすにはちょっと時間かけて、と思っていたら、ヤマト先輩が凄いプレゼンして、こっちも有望株だってわかったし、席も近いから(※いや、部屋の端っこと端っこで遠いだろう…)落としやすそうなんで、こっちにしてみたの♪」
そう言ったところで彼女たちの姿が視野に入ってきた。
早速フレイは真っ先に敵視している私に噛みついてきた。
「あ~ら茶色のお弁当のアスハさん、お化粧直し?いいから、そんなの。アンタがやったってたいして美人にならないから、かえって化粧品代の無駄よ。どうせ将来「おひとり様」になるの見えているんだから、今から老後用に資金貯めておいたらどう?」
「ちょっと、フレイ、いい加減にしなさいよ。」
ミリィが一所懸命止めてくれていたけれど、もう構うの面倒になってきたので、言わせておけばいい。
無視していたら、面白くなかったのか、「フン!」と鼻を鳴らした後、フレイが二人に言って聞かせた。
「今日は何としてもヤマト先輩を誘って食事に行くから!これで距離を一気に縮めて見せるからね!」
(はいはい、せいぜい頑張れ)
散々心の中で吐き捨てて、私はルージュを引き直して、化粧室を出た。
・・・続く
***
何となく突発的に社会人パロ。
フレイちゃん好きな人には申し訳ない<(_ _)> 多分種最初の頃のフレイちゃんのイメージで書いたらこんなになったよ。本当はいい子なんですよ。いや、いい子になったんです。
カガリ視点ですが、「アスカガじゃない?」―――多分出てきますよ、後半で。
ちょっと長くなったので、容量がいっぱいになったから、一旦区切ります。
後編は明日あたりにUPできたらよいな。
「よし!」
制服に着替え終わって給湯室に向かい、やかんを火にかける。<ピー!>と沸騰を知らせてくれるまでの間に、布巾を濡らして硬く絞る。朝一番の水は手に氷が刺さるかのような冷たさだが、かえって気持ちがシャキッと引き締まって好きだ。
そしてデスク周りを拭く。
今までは女性社員に任せきりだったこの始業前の作業。今のご時世「パワハラだ!」「モラハラだ!」となるので、各自自分のデスク周りだけでよいことになっているが、十人もいない部署だから、一人分でも全員分でも、そんなに時間はかからないから、さっとやってしまう。
花瓶の水を取り替えていれば、やかんが<ピー!>とこちらも気合を入れて沸騰したことを知らせてくれる。
ポットに注いでいると、一人二人と同僚が出勤してきた。
「おはようございます!」
「あ、おはよう、カガリ。」
こちらは同僚のキラ・ヤマト。ちょっとぼーっとしたところあるけれど、打ち込みは誰よりも早い。プログラミングも早くって、彼の企画は何度か通ったことがある。将来の有望株だ。
「おはよう、ミリィ」
「お早う。相変わらず早いのね、カガリ。」
こっちも同僚のミリアリア・ハウ。凄く気が利く女の子で誰にも優しい。
「おはようございまーす。」
「おはよう、ルナ。」
「ちわーっす。」
「挨拶ぐらいしっかりやれよ、シン。」
「朝っぱらから煩いな・・・アスハの癖に。」
「なんだと!?」
「シン!やめなさいよ。先輩に向かって。・・・すいません、アスハ先輩。」
ちょっと生意気な後輩、シン・アスカと、彼と同期のルナマリア・ホーク。
こうして続々と出勤してくる同僚たち。
―――気分がいいのはここまでだ。
ここから先、ある意味毎日気持ちがど~んよりする。
<キーンコーンカーンコーン>
始業を知らせるベルと共に、それはやってくる。
「あら、みんな、おはよう♪」
(来た・・・)
制服の上から存分に振りかけたらしい香水の香りをまき散らしつつ、高級シャンプー&リンス&トリートメントの効いた髪をふわりとなびかせてやってきた。
「始業時間ギリギリよ、フレイ。」
ミリアリアがこっそり耳打ちするが、彼女はどこ吹く風だ。
「ちゃんと間に合っているでしょ?・・・あ、この花瓶の花、活けたの誰よ。」
「・・・私だけど…」
「あ~やっぱりアスハさん!そうよね~活け方に気品のかけらもないもの。ガサツそのまんま。やっぱりお花って、活けた人の品格がわかるものよね~」
(くぅ~~~~~っ!!)
いかんいかん。腹立たしいけれどここで噛みついては彼女と同じ土俵に降りてしまうだけだ。
「そ、そうか~じゃぁ折角だし、アルスターさんに今後は頼もうかな~・・・」
「嫌よ。そういう雑用をやるのは下っ端の役でしょ?私みたいに有能な人間じゃなく、下働きがやることなの!」
(悪かったな!下働きで!!)
あ、いかんいかん!ここは深呼吸ー・・・っと。
フレイ・アルスター。私の一個後輩だけど、この子が目下の悩みの種。
ここSEEDコーポレーションのお得意様の会社社長令嬢な彼女は、確かに美人だがお嬢様育ちが良すぎたのか、鼻持ちならない発言が多い。特に女子社員に対してははっきり言って毒しか吐かない。先輩であっても女性社員にはため口だし。
これで仕事ができるんだったら、まだ救いようがあるんだけど・・・
「あ~ん!この関数わかんなぁ~い!・・・ねぇ、教えてくださいませんか?ヤマト先輩♥」
(はじまった・・・)
私の向かいの席に座るキラに思いっきり媚を売りながら、しなだれかかる様にキラに迫るフレイ。
「えーと。これに代入するだけでいいから。」
「すごーい!流石はヤマト先輩。わかりやすいご説明ありがとうございます✨」
「いや、別にクリックする場所教えただけだし。」
「そんなことないですよ~♪すっごく助かりました♥♥」
これだ・・・
目に余るのはこの男性社員に対する猛アタック。わざとらしい媚の押し付けは、はっきり言って吐き気を催すくらいなのだ。
別に気にしなきゃいいだけなのだが、最近のフレイのターゲットが目の前のキラになってから、正直嫌でも目に入るようになってしまった。
やれ「消しゴム無くしちゃったので、貸してもらえますか?」だの「シュレッダーが動かないんです(※コンセント自分で抜いていただろうが)」だの、部屋の一番端っこのフレイの席から対角線上に遠いキラの席までわざわざやってくる。
キラが先日のプレゼンで、自分の作成したプログラミングソフトを使い、これが大当たりしたことで、一気に将来の有望株となった。それを見てターゲットを彼にしたんだろうけど。
「フレイ、私の消しゴム一個余っているから、これ使えよ。」
そう言って私が消しゴムを差し出す、その次の瞬間<キッ!>とひと睨みと共に<スパーン!>と私の手を払いのけて「消しゴム貸してくれませんかぁ~?」と来たもんだ。
その目は「空気読めよ!!(# ゚Д゚)ゴルァ」と言わんばかり。
こんな状況がしばらく続き、うんざりしている。
無論私だけじゃなく、課のみんなもだ。
キラは・・・元々ボケてるやつなので、全くフレイの攻撃に気が付いていない。というか眼中に入んないんだよな…
だって、彼には可愛い彼女がいるんだもん。
ただ、その優しい気質に加えてぼんやりしているもんだから、フレイの「女の攻撃」に気づかず、文字通り「困っている同僚を助ける」くらいにしか思っていないはず。
毎日この繰り返しで、正直こっちの能率が下がる。
(いかんいかん!自分の仕事に集中しなきゃ!)
そう思って頑張っているのだが・・・
「あ~ら、アスハさん。どうしたのそのお弁当。」
就業時、唯一の楽しみのお昼休み。手作り弁当の蓋を開けて、「いっただきまーす♥」とおかかのふりかけをかけた白飯を口に頬張りかけたその時、上から嫌みがふりかかってきた。
「そのお弁当って、これのことか?」
そう言って私はフレイに見せる。今日のおかずは豚肉の生姜焼きに、野菜の煮物。それにフルーツを少々。
すると口に手を当て、フレイは笑い出した。
「何そのまっ茶色のお弁当!見ただけで食欲減退するわね~」
「美味しいけど…」
「貧乏人には口に合うようになっているのね。でもごらんなさい♪私もヤマト先輩に手作り弁当作ってきたのよ!彼のイメージに合うような見た目もきれいなのをね☆」
そう言って自慢げに見せつけられたお弁当は
(・・・うげ・・・)
確かにいろんな色が入っているが、イメージカラーとやらの「青いご飯」って何なんだよ!それにレア気味のローストビーフだの、ピンク色になるほどカニの身が入ったポテトサラダだの、どう見たって手作りじゃないだろう!
「貴女みたいな貧乏人は、一生口にできない代物よね♪さて、ヤマト先ぱぁ~い!一緒にお昼にしましょう!・・・って、あれ?ヤマト先輩は?」
「もうとっくに社食に行ってるけど。」
そうボソっと呟くシンに「えぇ!?」とオーバーリアクションして見せた後、キッとこっちを見返し、「アンタがくだらない弁当見せてくるから、タイミング逃したじゃないの!」
とまぁまたケチをつけられ猛然とフレイが社食に向かっていった。
「・・・こっちこそ、お前のせいで弁当が美味しく食べられないんだけど・・・」
口の中でモゴモゴ唱えながら、私はお茶を飲み下した。
昼休みも時間があとわずか。
化粧室で歯磨きをしていると、遠くからこちらにキャッキャと例の声が近づいてきた。
「やっぱりヤマト君のこと好きなの?」
どうにもフレイに捕まったらしいミリィが彼女の関心ごとに話を合わせている。
「もちろんよ!将来の有望株じゃない。絶対彼を落として見せるから!」
「でも、有望株っていうなら、『ザラ係長』の方が一番じゃないですか?」
ルナマリアの一声に、私も考えこむ。
(『ザラ係長』・・・)
アスラン・ザラ係長―――彼は確かにこの会社でも一番の将来性のある人だ。
何しろ私たちと同期で一番の出世頭。普通この年齢で係長に抜擢されるなんて、まずありえない。
数か国語を操り、海外の事業主とも折衝し、あっという間に幹部候補に躍り出た。来年度当たり課長補佐、あるいは課長に抜擢されるに違いないともっぱらの噂だ。
しかも端正な顔立ちと、落ち着いた物腰。少々人見知りなのか、仕事以外ではあまり顔を合わせたがらず、飲み会を開いても、顔を出した程度ですぐに帰ってしまう。
しかしその姿が余計孤高のイメージをアップし、女子社員の中でファンクラブがあるとさえ噂されている。
「そうね。最初は彼を落とそうかな?って思っていたんだけど、彼ってなかなか専用の個室から顔出さないじゃない?流石に個室に毎回押しかけてってなると、ファンクラブのメンバーたちと面倒ごとになるのは面倒くさいし。落とすにはちょっと時間かけて、と思っていたら、ヤマト先輩が凄いプレゼンして、こっちも有望株だってわかったし、席も近いから(※いや、部屋の端っこと端っこで遠いだろう…)落としやすそうなんで、こっちにしてみたの♪」
そう言ったところで彼女たちの姿が視野に入ってきた。
早速フレイは真っ先に敵視している私に噛みついてきた。
「あ~ら茶色のお弁当のアスハさん、お化粧直し?いいから、そんなの。アンタがやったってたいして美人にならないから、かえって化粧品代の無駄よ。どうせ将来「おひとり様」になるの見えているんだから、今から老後用に資金貯めておいたらどう?」
「ちょっと、フレイ、いい加減にしなさいよ。」
ミリィが一所懸命止めてくれていたけれど、もう構うの面倒になってきたので、言わせておけばいい。
無視していたら、面白くなかったのか、「フン!」と鼻を鳴らした後、フレイが二人に言って聞かせた。
「今日は何としてもヤマト先輩を誘って食事に行くから!これで距離を一気に縮めて見せるからね!」
(はいはい、せいぜい頑張れ)
散々心の中で吐き捨てて、私はルージュを引き直して、化粧室を出た。
・・・続く
***
何となく突発的に社会人パロ。
フレイちゃん好きな人には申し訳ない<(_ _)> 多分種最初の頃のフレイちゃんのイメージで書いたらこんなになったよ。本当はいい子なんですよ。いや、いい子になったんです。
カガリ視点ですが、「アスカガじゃない?」―――多分出てきますよ、後半で。
ちょっと長くなったので、容量がいっぱいになったから、一旦区切ります。
後編は明日あたりにUPできたらよいな。
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