本日3/4、21時からフジテレビで『アナと雪の女王』が地上波初放送になります。
本作において、手袋の演出というのが非常に大きな意味を持っています。それは「寒いシーンでは手袋をしていて、室内のシーンなどは外している」という単純な意味を超えて、明らかにそこには様々な意図が込められています。
それどころか最初に劇場で見た時から思っていましたが、この映画は少なくとも前半30分は片手袋を中心に物語が動いていくんですよ!冗談だと思われるかもしれませんが、その理由を解説してみたいと思います。
①エルサの手袋がいつ外れるのか、何故外れるのかに注目してみよう!
エルサは自分の能力を封印する為に、幼少の頃に経験したある事件以降ずっと手袋をしています。
しかし、大人になったあるタイミングでアナが片方だけ外してしまいます。アナがエルサの手袋を片方外す、という事の裏にはどんな意味があるでしょう?
そして片手袋だけの状態になったエルサは、雪山でもう片方も空に放り投げます。彼女が手袋と共に放り投げたものは何なのか?まさに数年前、何百回と聞いた『Let it go』のサビに入る瞬間ですのでお見逃しなく!
※幼少時のエルサに手袋を嵌めたのは両親です。それを考えると、公開時に本作はよく「社会に抑圧されている女性が解放されるまでの映画」と言われていましたが、「子供が成長し、両親の呪縛から解放される映画」と見る事も出来るでしょう。
さて、ここまでで約三十分。でもここからは(いや、実はもっと前から)片手袋と言わないまでも、『アナ雪』は手袋をめぐる演出が冴えわたっている映画なのです!
②『アナ雪』において手袋はその人の心の壁を表している
これは特にエルサとハンスに顕著な演出なのですが、手袋は二人の心の動きを表しているんですよね。
先程も述べたように、幼少の頃からエンディングまで、エルサが素手なのか手袋をしているのかに注目してみて下さい。それは見事にエルサの心の動きと呼応しています。「ありのままで」と歌う瞬間に片手袋を放り投げるのですから、そこから逆に手袋がエルサにとって何を意味していたのか分かると思います。
ハンスは登場時からずっと手袋をしています。でも後半、暖炉のある部屋で片手袋を外すんですよね。それは彼の隠された本心が露になるタイミングと呼応しています。さらに言うと、この時ハンスが外すのはあくまで片手袋です。彼が最後まで外さなかったもう片方の本当の内面、それは案外臆病で自信を喪失している男の姿かもしれません。
「片方だけ外す」というのはエルサもそうです。彼女の手袋はアナによって片方外され、もう片方は彼女自身が放り投げます。つまり、両方自分の意思で外した訳ではありません。
「ありのままで」と歌いながら、彼女はむしろ自分の心を閉ざし氷の城に立て籠もってしまうんですよね。この時点の彼女はハンスと同様、まだ片方しか自分の本心を解放していないように思います。
③『アナ雪』において、手袋は人間関係を表している
物語冒頭、幼き日のアナとエルサは二人とも手袋をしていません。しかし、いつしかエルサは常に手袋をするようになります。それをアナが片方外してしまった事から物語は動き出します。
でも、再び二人共に素手で向かいあう事はなかなか出来ません。二人は幼少の頃のように、再び素手で手と手を取り合う事が出来るのか?というのはこの物語において大きなポイントです。是非この点にも注目して下さい。
物語の中盤はアナとクリストフが中心になって進みます。実はクリストフは(冒頭の幼少時を除いた)初登場時から、アナに素手を見せているんです。ギターを弾いているシーンですね。クリストフは最初からアナに本当の姿を見せていたのです。
一方、いきなり恋に落ちてしまったアナとハンスですが、ハンスはアナに素手を見せる事は決してありません。先程も書きましたが、暖炉のある部屋でハンスは初めて片手袋を外します。その時、二人の関係は決定的に変わってしまいます。
手袋を外し素手を見せる事が、本当の姿を見せる事の比喩として用いられる為、それは人間関係が良い風にも悪い風にも変わっていく転機となります。
『アナ雪』は寒い寒い氷の世界のお話ですから、殆どのシーンで皆手袋をしています。しかし最後の最後、アナやエルサ、クリストフの手に注目してみて下さい。それは単なる気候の変化を超えて、きっと彼らの関係性の変化を象徴している筈です。
以上のように、『アナと雪の女王』は徹頭徹尾「片手袋(もしくは手袋)の映画」なのです!「そんなのお前の勝手な思い込みだろう!」と言われてしまうかもしれませんが、アニメというのは実写と違って映っている物は全て意図的に描きこまれているのです。
だから手袋をしているかしていないか、という事にも確実に作者達の意図が込められていると思います。
ここまで断言するのは、登場人物の身に付けているものに意味を持たせるのは映画ではよくある手法ですし、実はディズニー・ピクサー映画には他にも片手袋が登場する作品があるからなのですが、それはいずれまた解説したいと思います。
片手袋研究は、本当にあらゆる事に注目していないとなりませんね。