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【小説】竹根好助の経営コンサルタント起業5章 中小企業を育てる 6 アテンド客との同行でロングアイランドへ

2024-08-30 00:21:00 | 【小説風】竹根好助のコンサルタント起業

  【小説】竹根好助の経営コンサルタント起業5章 中小企業を育てる 6 アテンド客との同行でロングアイランドへ 

 
■ 【小説】 竹根好助の経営コンサルタント起業 
 私は、経営コンサルタント業で生涯現役を貫こうと思って、半世紀ほどになります。しかし、近年は心身ともに思う様にならなくなり、創業以来、右腕として私を支えてくれた竹根好助(たけねよしすけ)に、後継者として会社を任せて数年になります。 竹根は、業務報告に毎日のように私を訪れてくれます。二人とも下戸ですので、酒を酌み交わしながらではありませんが、昔話に時間を忘れて陥ってしまいます。
 これからコンサルタントを目指す人の参考になればと、私の友人が、書き下ろしで小説風に文章にしてくれています。 原稿ができた分を、原則として、毎週金曜日に皆様にお届けします。
【これまであらすじ】
 竹根好助は、私の会社の後継者で、ベテランの経営コンサルタントでもあります。
 その竹根が経営コンサルタントに転身する前、どのような状況で、どの様な心情で、なぜ経営コンサルタントとして再スタートを切ったのかというお話です。

 1ドルが360円の時代、すなわち1970年のことでした。入社して、まだ1年半にも満たないときに、福田商事が、アメリカ駐在事務所を開設するという重大発表がありました。
 角菊貿易事業部長の推薦する佐藤ではなく、初代駐在所長に竹根が選ばれました。それを面白く思わない人もいる中で、竹根はニューヨークに赴任します。慣れない市場、おぼつかないビジネス経験の竹根は、日常業務に加え、商社マンの業務の一つであるアテンドというなれない業務もあります。苦闘の連続の竹根には、次々と難問が押し寄せてくるのです。
 日常業務をこなしながら、アテンドという商社マンにつきものの業務を自分なりに見つめ直す竹根です。

◆5章 中小企業を育てる
 商社マンは、商品を輸出すれば良い、というのが、それまでの商社の生き方でした。
 はたしてそれで良いのか、疑問に纏われながらの竹根好助でした。その竹根が、何とか現状で仕事をしながら活路を見いだそうと考えていました。
  ※ 直前号をお読みくださるとストーリーが続きます。
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◆5-6 アテンド客との同行でロングアイランドへ
 午後は、ケント光学の北野原社長と、ロングアイランドにある顕微鏡を主体とした光学機器の販売店に行くことになっている。
「これから行くところは、竹根さんの知っているところかい?」
「いいえ、先々週初めて電話をしたところ、快く社長の訪問を受け入れてくれました。アメリカ人というのは、自分にプラスにならないとなかなか会ってくれないようなのです。ニューヨークといっても、ロングアイランドにあり、まだ田舎の良いところが残っていて、いわゆるヤンキーの伝統的な良さを持ち続けているようです」
「ケントの顕微鏡が売れるようなところだろうか?」
 ニューヨークの喧噪から離れた、マンハッタン島の東にある東西に細長い、その名を表すようなロングアイランドである。
「不勉強で申し訳ありません。私もアメリカでどのような顕微鏡が売れているのかよく知りません。それどころか、社長の会社で二日間の研修を受けながら触らせてもらったのが十何年ぶりというお恥ずかしい次第です」
「福田商事は、事務機、電子機器、文房具、学校教材、理化学機器など幅広いから、当たり前だよね」

 昨日の雪で、郊外に入るとさすがに雪の積もっているところが多い。高速道路で四十五分ほどのところにあるフィルモア光学に近いインターを出た。高速道路がほぼ西から東に延びているので、高速道路をおりてから右方向、すなわち南に数マイル行ったところである。さらにその道をまっすぐ行くと大西洋だ。運転には自信のある竹根だが、高速道路をおりた雪道はさすがに怖い。VIPを乗せているだけに慎重だ。
 フィルモア社長は、大学の医学部の学生を対象としたビジネスが核であるために、光源つきの、安価な単眼顕微鏡が中心である。安価といっても、ケントの顕微鏡はおもちゃのようなレベルであることがわかった。
 ケントの双眼顕微鏡が安く作れるのであれば、ライバルが嘆願顕微鏡を中心にしているだけに差異化(差別化)ができてビジネスがうまく行くのではないかと竹根は心の中で思った。口にしなかったのは、今のケント光学の力では、双眼顕微鏡を安く作れるだけの力を持っていないことを承知しているからである。

 帰りに、ロングアイランドを東に、すなわち東端方向にさらに三十分ほど行ったところにある漁港のレストランまで足を伸ばした。大西洋の波が押し寄せる海岸に建っている。時間的にディナー時間までには早いこともあるからだろうが、客は竹根たちだけである。窓側の席に案内された。
 レストランのほぼ中央に大きな水槽がある。水槽にいるメインロブスターを自分で選ぶと、それを料理してくれる。日本の伊勢エビとは比べものにならないほど大きい。左のはさみが異常に大きく、挟まれたら痛いだろうと思いながら一匹ずつ、二人で格闘することになった。
 北野原の要望で、しっぽの部分は生で出してもらった。醤油はないが、何もつけずに口にほおばるとプリプリした新鮮な歯あたり、甘味が口に広がり、かくもうまいものがこの世にあるのかと二人とも夢中になった。言葉もない。ひたすら、皮をむき、身を食べて行く。
 白ワインでも飲みたいところなのだろうが、運転をする竹根のことを考えて、さすがに北野原はアルコールを控えた。

 ホテルに戻ってから、近所のバーに入った。ピアノがおいてあり、曲を選ぶとピアニストが演奏をし、それにあわせて歌を歌うのである。ピアノバーと呼ぶことを日本人から教えられていた。今日のカラオケの前進のようなお店である。北野原が美空ひばりの悲しい酒を頼むと、ピアニストが上手に弾いてくれる。日本を思い浮かべているのか、昔を懐かしんでいるのか、北野原も良い声で歌った。それから二人が交代で何曲か歌ってから、その日はお開きにした。
  <続く>

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