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【連載小説】竹根好助の経営コンサルタント起業7章 誘惑と模索 1 五年ぶりの東京の街

2025-01-17 00:21:00 | 【小説風】竹根好助のコンサルタント起業

  【連載小説】竹根好助の経営コンサルタント起業7章 誘惑と模索 1 五年ぶりの東京の街 

 
■ 【小説】 竹根好助の経営コンサルタント起業 
 私は、経営コンサルタント業で生涯現役を貫こうと思って、半世紀ほどになります。しかし、近年は心身ともに思う様にならなくなり、創業以来、右腕として私を支えてくれた竹根好助(たけねよしすけ)に、後継者として会社を任せて数年になります。 竹根は、業務報告に毎日のように私を訪れてくれます。二人とも下戸ですので、酒を酌み交わしながらではありませんが、昔話に時間を忘れて陥ってしまいます。
 これからコンサルタントを目指す人の参考になればと、私の友人が、書き下ろしで小説風に文章にしてくれています。 原稿ができた分を、原則として、毎週金曜日に皆様にお届けします。
【これまであらすじ】
 竹根好助は、私の会社の後継者で、ベテランの経営コンサルタントでもあります。
 その竹根が経営コンサルタントに転身する前、どのような状況で、どの様な心情で、なぜ経営コンサルタントとして再スタートを切ったのかというお話です。

 1ドルが360円の時代、すなわち1970年のことでした。入社して、まだ1年半にも満たないときに、福田商事が、アメリカ駐在事務所を開設するという重大発表がありました。
 角菊貿易事業部長の推薦する佐藤ではなく、初代駐在所長に竹根が選ばれました。それを面白く思わない人もいる中で、竹根はニューヨークに赴任します。慣れない市場、おぼつかないビジネス経験の竹根は、日常業務に加え、商社マンの業務の一つであるアテンドというなれない業務もあります。苦闘の連続の竹根には、次々と難問が押し寄せてくるのです。
 日常業務をこなしながら、アテンドという商社マンにつきものの業務を自分なりに見つめ直す竹根です。慣れないニューヨークを中心としたアメリカでのビジネスですが、時として折れそうになってしまいます。そのようなときに、若い竹根の支えとなってくれたのが、本社で竹根をフォローしてくれるかほりでした。彼女の父親は地元の名士ということから、竹根などに娘をやるわけにはいかないと厳しかったのです。かほりと竹根の努力で、結局、父親は折れざるをえず、晴れて結婚が認められました。

◆7章 誘惑と模索
 1ドル360円時代の商社マンは、「企業戦士」と言われるほど海外赴任活動は、心身共に厳しいです。たった一人でニューヨークに乗り込んだ竹根好助(たけねよしすけ)も5年の任期を終え、東京に戻れる日が来ました。
  ※ 直前号をお読みくださるとストーリーが続きます。
     直前号 ←クリック

◆7-1 五年ぶりの東京の街
 五年ぶりの東京の街は、ニューヨークに負けず劣らずクリスマスの雰囲気が盛り上がっている。東京駅から福田商事へ歩く途中、かほりと五年前に入った喫茶店ベルフワーの灯が見え、何かホッとした。後になって知ったのであるが、ベルフワーは、キキョウ科カンパニュラ属に属し、桔梗のような花の形をしたうす紫色の五弁の花びらを持つかわいい花である。花言葉は期せずして「真剣な恋」で、かほりと竹根にピッタリする花である。深く記憶に残るような恋という意味で使われる。
 竹根は、五年ぶりに東京で机に座った。新入社員も多く、浦島太郎の気分が半分わかるような気がする。かほりがいつも座っていた席には、竹根が顔は覚えているが、名前が出てこない女性が座っていた。かほりでないのが、何となく違和感として竹根にまとわりついた。
 いつの間にか、その女性が竹根の机のところに来て、「加丘です。アメリカのことをいろいろと教えてくださり、ありがとうございました。相本さん・・・奥様の後を引き継がせていただいてから、仕事が楽しくなりました。それも竹根さんのおかげです。あい・・・奥様は、幸運な方ですね」
「ああ、加丘さん、いろいろとお世話になりました。おかげさまで、妻がニューヨークに来てからは、それまで以上に面倒を見てくださり、本当に助かりました」
「いいえ、奥様が有能な方でしたので、私では至らないことばかり。ご迷惑でしたでしょ」
「そんなことはありませんよ」
「これからは、奥様の代わりに何かできることがありましたら、おっしゃってください」
「それはありがとう。でも、事業部長の秘書に仕事を頼むわけにはいきませんね。その代わり、わからないことがあったら教えてください。何しろ、浦島太郎ですから」
「ええ、もちろんです。何でもおっしゃってください。お礼が遅くなりましたが、皆にお土産をありがとうございました。皆喜んでいました」
「妻に任せっきりで・・・皆さんが喜んでくれたと、妻に伝えます」
 加丘は、席に戻った。
――そうか、彼女が加丘さんなのだ――竹根は、ようやく名前と顔が一致し、妻のかほりの後釜として数々の連絡手紙のことが昨日のように思い出された。
  <続く>

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