時代劇「子連れ狼 第三部」
3/3(月)午後1時29分スタート!
【BS松竹東急】
斬鉄剣胴太貫(どうたぬき)。
敵の刀を叩き斬る。
架空の刀。原作劇画では胴
太貫は尾張藩の清水甚之進
の作となっている。
原作中でも胴太貫は刀の号
であるが、実在の肥後菊池
の同田貫(どうだぬき)とは
無関係だ。
だが、原作者は一子大五郎
が主人公の「新・子連れ狼」
で拝一刀の刀は肥後同田貫
としてしまった。
そもそも、「新~」は時代
設定があまりにも出鱈目す
ぎて、奇天烈オカルト話と
なっており、原作者がどう
描こうとも子連れ狼の続編
であるとは認容できない。
1970年代の原作劇画に一番
近いのが萬屋錦之介版のTV
ドラマの「子連れ狼」だ。
先行する映画で拝役だった
若山富三郎がTV版が誕生す
る事を知って激怒して、日
本刀で萬屋錦之介に殴り込
みをしかけようとした。
大揉めに揉め、結局TV版は
若山は関係ないのに勝プロ
でプロデュースという段取
りになった。当時のよくあ
る業界パワハラだ。そもそ
も芸能界は山口組が牛耳っ
ており、役者先生たちも反
社との繋がりも濃かった。
一方、萬屋錦之介は映画界
でも珍しく役者が映画会社
の労働組合委員長を任じて
いて、俳優の地位向上と労
使紛争での交渉役を担って
いた。実は素顔は社会派の
人。
そして、素のキャラは破れ
傘刀州のようなべらんめぇ
の語り口の庶民派だった。
彼の当たり役は拝一刀だが、
一方で拝家と対立した設定
の柳生家の但馬守宗矩の役
もいくつもの作で演じたハ
マリ役だったのが面白い。
柳生但馬守役での剣さばき。
なぜか柳生新陰流ではなく
土佐の英信流系の居合業(笑
『柳生一族の陰謀』の殺陣
師が殺陣をつけたのだろう
が、明白に昭和新派の業前。
納刀所作は全剣連制定居合
にも採用されている。
刀身を寝かせるのは昭和新
派の特徴。戦後に登場した。
詳細といきさつは「中山博
道口述集」に詳しい。
直伝英信流では全剣連制定
居合においても江戸期と同
じく刀身は寝かせて納刀し
ない。刃を上に向けて納刀
する。刃を寝かせての納刀
は古流を自称していても、
どの流派であろうとすべて
昭和以降の創作。これは剣
術史的に明らかになってい
る。大刀の下げ緒の前垂ら
し右結束が江戸期に存在し
なかった事と同じ。
深作欣二監督のメガホンだ
が、本編では武士団が江戸
から下って行く河川沿いの
行列の背後や先に大きな送
電鉄塔が映っている(笑
また、この決闘のシーンで
は石仏ごと切ったという荒
唐無稽な表現よりもさらに
おかしい点がある。
それは真っ向唐竹割に切っ
たのに、小笠原源信斎の斬
られ痕が左袈裟。
首を傾けたところを真っ向
から切り下げられたとすれ
ば辻褄は合う。
まあ、活劇なので何でもア
リというのが映像の世界。
ピースメーカーから10数発
発射される西部劇と同じだ。
ただ、新陰流同士の対決。
こうした設定は面白い。
『子連れ狼』でも水鷗流
同士の対決もあった。
その時、相手を切り伏せた
後、拝一刀は号泣した。
それらは絵空事ではなく、
現実世界でも武士の世界に
はそうした似た例は実在し
た事だろう。
佛生寺弥助を殺害した時な
どは同門の武士たちはどの
ような心境であった事か。
しまったぁ。
今回の貴重な『子連れ狼』の
再放送、見逃しただど。