稽古なる人生

人生は稽古、そのひとり言的な空間

No.54(昭和62年3月25日)

2019年05月15日 | 長井長正範士の遺文


○健康長寿を考えると血液の循環が基本である。
随分前になるが国士舘大学体育学部教授、
金子藤吉先生のお説が大変参考になったので紹介しておく。

運動で心臓も強くなれば胃腸をはじめ内臓も丈夫になる。
筋肉は使わないと萎縮する。先ず手足の指をもみほぐすこと。
手足は体の末端部に当り、時に手の端は体全体各部の最精密機関で、
足の指と共に循環系の末端部で心臓からの距離は一番遠い。
従って心臓のポンプから押し出される血液が、
この遠い手足の指に送るには大変心臓の負担になる。

故に心臓が一番骨を折って血液を送り込む手足の指をもんだり、強く押えたりするとよい。
そうすると指の運動が心臓の過労を助け、その障害を除くのに役立つ。
この運動を毎日欠かさず実行していると、心臓の鼓動が平静になり、
肩こりがとれ、頭痛も消え、熟睡が出来、食欲も進み、便通もよくなるという。

さて指をもみほぐす方法はいろいろあろうが、
指の根元から先の方にもんでいく動作を何回も何回も繰り返えせばよい。
そして最後に爪の上を強く押えれば上々である。

私は一本の指を二十回もみほぐしている。
さて指は心臓から一番遠くにある上に、組織が精密で、
神経系と循環系の毛細血管が交錯しているところなので、
心臓にちょっとした故障がおこっても、循環系が乱れて
順調に血液を送りのが困難になり、血液の抵抗となって血圧を高めることにもなる。

又、老化現象は末端部からはじまる。
従って指をもんで、心臓の働きを助け、末端部への血液の循環をよくすることは、
高血圧の予防、治療にも役立ち、老化現象をおくらすことにも効きめがある。
よくお寺の住職や、ご隠居さんが、掌の中に「くるみ」二個を入れて、
暇さえあれば「ゴリゴリ」ともてあそんでいるのを見かけるが、
これも指の運動として効き目がある。

然もこの効果の高い運動は、寝ながらでも、テレビを見ている時は勿論、
新聞を読みながらでも、人と対談中でも、電車やバスを待ち合わせている時でも
車中でもやろうという気さえあれば出来ることであり、
又、足の指の運動は寝床に入ってからでも、朝起きる前にも出来るのである。

もはや、激しい運動やスポーツの出来なくなったお年寄りには、
もってこいの運動であるといえよう。
別にわざわざゴルフ場まで出掛け、高い金を払って、クラブを振り廻さなくとも、
散歩は楽しく気分転換になり、テレビや本を読みながらでも効き目のある運動をやることは、
誠に結構なことと言わねばなるまい。
体育ということを、このように理解して欲しいものだ。

○以上を要約すると、健康は血液の循環からという事になる。
1、健康は細胞の新陳代謝によって保たれる。
2、細胞組織の新陳代謝は血液の循環によって行われる。
3、血液の循環は手と足の毛細管の刺激膨張によって完全である。
4、足の疲労は体全体の疲労である。 以上

○剣道は心身の鍛錬というが攻防打突の中に手足の指一本一本の働きがあることは、
№6、№23、№36等に述べた通り心すべきである。 完
コメント
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