817)亜麻仁油やえごま油(紫蘇油)はがんや認知症には効かない

図:α-リノレン酸(①)は亜麻の種子や荏胡麻(エゴマ)の種子など植物油に含まれる(②)。エイコサペンタエン酸(③)とドコサヘキサエン酸(④)は微細藻類(⑤)や魚類(⑥)に多く含まれるが植物油には含まれない。α-リノレン酸を摂取すると一部はエイコサペンタエン酸に変換される(⑦)。しかしドコサヘキサエン酸への変換は極めて少ない(⑧)。がん、認知症、うつ病、心臓疾患などの予防や治療にはDHAが有効であるが(⑨)、α-リノレン酸はこれらの疾患の予防・治療への効果は低い。したがって、亜麻仁油や荏胡麻油(紫蘇油)を多く摂取してもこれらの疾患には効果が期待できない。

817)亜麻仁油やえごま油(紫蘇油)はがんや認知症には効かない

【多価不飽和脂肪酸にはオメガ3 系とオメガ6 系がある】
リノール酸 CH3(CH2)3 CH2CH=CHCH2CH=CH(CH2)7COOH では、CH3 に最も近い二重結合はCH3から6番目のC(炭素)にあります。この位置に二重結合を持つ全ての脂肪酸をオメガ(ω)6系不飽和脂肪酸に分類します。
α-リノレン酸CH3CH2CH=CHCH2CH=CHCH2CH=CH(CH2)7COOH では、CH3に最も近い二重結合はCH3から3番目のC にあります。この位置に二重結合を持つ脂肪酸をオメガ(ω)3系不飽和脂肪酸に分類します。
最近は、ω6の代わりにn-6 を用いてn-6系不飽和脂肪酸、ω3の代わりにn-3を用いてn-3系不飽和脂肪酸と呼ぶことが多くなっています。(下図)

図:メチル基(CH3)側から数えた炭素の番号はω1(あるいはn-1)、ω2(あるいはn-2)と表示する。最初の二重結合がω3の位置にある不飽和脂肪酸をω3系不飽和脂肪酸あるいはn-3系不飽和脂肪酸と言い、ω6の位置にある不飽和脂肪酸をω6系不飽和脂肪酸あるいはn-3系不飽和脂肪酸と呼ぶ。

オメガ6系不飽和脂肪酸はリノール酸 → γ-リノレン酸 → アラキドン酸のように代謝されていき、アラキドン酸からプロスタグランジンやロイコトリエンなどの生理活性物質が合成されます。
オメガ3系不飽和脂肪酸はα-リノレン酸 → エイコサペンタエン酸(EPA) → ドコサヘキサエン酸(DHA)と代謝されていきます。オメガ3 系不飽和脂肪酸は炎症やアレルギーを抑え、血栓の形成や動脈硬化やがん細胞の発育を抑える作用があります。

【アラキドン酸からプロスタグランジンが産生される】
プロスタグランジン(PG)はアラキドン酸からシクロオキシゲナーゼ(COX)の働きにより合成されます。細胞外からの種々の刺激に反応して生体膜のリン脂質にホスホリパーゼA2が作用してアラキドン酸が遊離し、アラキドン酸からCOXの作用によりPGG2, PGH2へと変換され、さらに各種細胞に存在する特異的な合成酵素により様々なプロスタグランジンとトロンボキサン(TX)A2が合成されます。
COXにはCOX-1COX-2の2種類のアイソザイムが知られています。
COX-1は胃や腸などの消化管、腎臓、卵巣、精嚢、血小板などに存在し、胃液分泌、利尿、血小板凝集などの生理的な役割を担います。
一方、COX-2は炎症性刺激や増殖因子やサイトカインなどの刺激により、マクロファージ、線維芽細胞、滑膜細胞、がん細胞などで誘導され、炎症反応や血管新生やがん細胞の増殖を促進します。(下図)

図:ホスホリパーゼA2(PLA2)の働きで、細胞膜のリン脂質からアラキドン酸が生成される。シクロオキシゲナーゼ(COX)はアラキドン酸からプロスタグランジンを合成するときに最初に働く酵素で、COX-1とCOX-2の2種類がある。COX-1は生体の生理機能に必要なプロスタグランジンを生成し、炎症性の刺激でCOX-2から合成される大量のプロスタグランジンは炎症反応やがん細胞の増殖を促進する。

炎症ががんを悪化させるのは、炎症刺激がホスホリパーゼA2を活性化し、プロスタグランジンE2の産生を増やすためです。(下図)

図:炎症性刺激によってホスホリパーゼA2が活性化され(①)、細胞膜のリン脂質からアラキドン酸が生成される(②)。アラキドン酸は炎症刺激によって誘導されるシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)によってプロスタグランジンH2に変換され(③)、さらにプロスタグランジンE2が大量に産生される(④)。プロスタグランジンE2はがん細胞の増殖・浸潤・転移を亢進し、血管新生やアポトーシス抵抗性を増強し、抗腫瘍免疫を抑制する(⑤)。

ω6 系不飽和脂肪酸はリノール酸 → γ-リノレン酸 → アラキドン酸のように代謝されていき、アラキドン酸からプロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサンなどの重要な生理活性物質が合成されます。プロスタグランジンなどのアラキドン酸代謝産物は炎症や細胞のがん化を促進したり、がん細胞の増殖を速める作用があるのですが、体のいろんな生理作用に必要であるため、動物は食物(植物および肉類)からリノール酸を摂取しなければ生存できません。

ω3系不飽和脂肪酸はα-リノレン酸 → エイコサペンタエン酸(EPA) → ドコサヘキサエン酸(DHA)と代謝されていきます。ただし、人間の体内ではα-リノレン酸からエイコサペンタエン酸(EPA)への変換は極めて少なく、ドコサヘキサエン酸(DHA)への変換はほとんどゼロだと言われています。したがって、α-リノレン酸を多く摂取してもEPAやDHAのような抗がん作用や健康作用は得られません。

ω3 系不飽和脂肪酸は炎症やアレルギーを抑え、血栓の形成や動脈硬化やがん細胞の発育を抑える作用があります。血栓性疾患、脳梗塞および心筋梗塞、炎症、アレルギー、発がん、がんの転移、高血圧などの発症率が低下すると考えられています。

EPAやDHAを前駆体として生成されるレゾルビンやプロテクチンという物質が、炎症の収束に重要な役割を果たしていることが明らかになっています。つまり、DHAやEPAを多く摂取すると体内の炎症を抑制し、これががん予防効果の一つのメカニズムになっているようです。

【DHAとEPAは抗炎症性メディエーターの前駆体になる】
ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)には抗炎症作用や鎮痛作用があります。実際に関節炎などの痛みを緩和し、CRP(C反応性たんぱく)などの炎症マーカーを低下させる作用もあります。
そのメカニズムとしては、プロスタグランジンE2などの炎症を引き起こす物質を生み出すω6系のアラキドン酸がω3系のDHAやEPAに置き換えられ、したがって炎症物質ができにくくなるからと言われていました。すなわち、ω3系不飽和脂肪酸を多く摂取すると、細胞膜中のω3系不飽和脂肪酸が増加して、アラキドン酸濃度が低下するので、その結果アラキドン酸由来の炎症促進性物質の産生が抑制されるという機序です。(図)。

図:食事からω6系不飽和脂肪酸のリノール酸やアラキドン酸の摂取が多いと細胞膜のアラキドン酸(細胞膜の図の青で示す)の量が増え、プロスタグランジンE2の産生量も増え、炎症やがん細胞の増殖や転移が促進される。ω3系不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)の摂取量が多いと、DHAやEPA(細胞膜の図の赤で示す)がアラキドン酸と置き換わるのでプロスタグランジンE2の産生は低下し、炎症やがん細胞の増殖・転移は抑制される。

最近の研究では、ω3系不飽和脂肪酸のDHAとEPAが炎症を抑える物質を生成することが明らかになっています
外傷や感染などに反応して急性炎症反応が起こりますが、異物の排除が完了すると炎症反応は速やかに消散し、組織の修復過程に移行します。炎症反応が終了することを「炎症の収束(resolution of inflammation)」と言います。
炎症の収束は、これまで起炎反応の減弱化によると考えられてきましたが、最近の研究で、受動的なものではなく、能動的な機構であることが明らかになっています。
急性炎症の特徴は白血球の組織への浸潤に伴う浮腫、発赤、発熱、痛みなどで、これらの反応にはアラキドン酸から生成されるプロスタグランジンやロイコトリエンなどの脂質メディエーターが関与します。これらの物質によって好中球の浸潤や活性化、血管透過性の亢進などの炎症反応が起こります。

炎症の収束過程においては炎症性サイトカインの産生が抑制され、血管透過性が正常に戻り、好中球の遊走阻止や浸出液中のリンパ球の除去や、マクロファージによる死滅した細胞の除去などが起こります。この炎症の収束過程には、EPAやDHAなどのオメガ3系不飽和脂肪酸から体内で生成されるレゾルビンやプロテクチンという抗炎症性メディエーターが関与します。
つまり、ω3系脂肪酸はアラキドン酸と競合することで炎症性ケミカル・メディエーターの産生を阻害するだけでなく、DHAやEPAは抗炎症性(炎症収束性)の脂質メディエーターを生成することによって積極的に炎症を抑制する作用があるということです
EPAやDHAの抗炎症作用やがん予防効果や心血管保護作用や脳神経系保護作用など多くの作用に、EPAやDHAから代謝されて生成される抗炎症性の脂質メディエーター(レゾルビンやプロテクチン)が関与しているようです。(下図)

図:オメガ6系多価不飽和脂肪酸のアラキドン酸はプロスタグランジンE2やロイコトリエンなど炎症性メディエーターを産生して炎症や組織のダメージを悪化させ、がん細胞の増殖を促進する作用を持つ。一方、オメガ3系多価不飽和脂肪酸であるEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は代謝されて抗炎症作用を示す多様な脂質メディエーター(レゾルビン、プロテクチンなど)を産生することによって、慢性炎症や組織のダメージを軽減する効果や、がん細胞の増殖を抑える効果を発揮する。

【ベジタリアン(菜食主義者)はDHAが不足しやすい】
ベジタリアン(vegetarian)』とは、肉や魚介類などの動物性食品を食べず、野菜などの植物性食品を食べる人のことです。日本では『菜食主義者』とよばれています。卵製品と乳製品は本人の判断に任せられており、食べても構いません。
肉や魚介類のほか、卵製品や乳製品、蜂蜜を含めた動物性食品を一切口にしない人のことを『ビーガン(vegan)』と言います。日本では「完全菜食主義者」と呼ばれています。ビーガンの人のなかには、肉や魚介類などの食品だけでなく、衣類や生活用品も動物性のものを使わない人もいます。ビーガンの思想は動物愛護が基礎になっているためです。

一般に、「ベジタリアンでいることは健康に良い」と言われています。がん、高血圧、糖尿病、肥満などの生活習慣病や認知症などを引き起こすリスクが減少するという研究結果も報告されています。
 しかし、食生活が極端になってしまうことから、かえって健康に良くないという考えも指摘されており、一概に健康に良いとは言い切れません。

完全菜食主義のビーガンにとって特に懸念される微量栄養素には、ビタミンB12ビタミンDカルシウム長鎖n-3(オメガ-3)脂肪酸DHAが含まれます。ビーガンがこれらの栄養素で強化された食品を定期的に摂取しない限り、適切なサプリメントを摂取する必要があります。
n-3(オメガ-3)脂肪酸にはα-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサンエン酸(DHA)があります。
α-リノレン酸は炭素数18で二重結合は3個です。EPAは炭素数20で二重結合は5個です。DHAは炭素数22で二重結合は6個です。α-リノレン酸は亜麻の種子(亜麻仁)の油の亜麻仁油、荏胡麻(エゴマ)の種子のエゴマ油など植物油に多く含まれます。

一方、EPAとDHAは微細藻類や魚に多く含まれ、植物にはほとんど含まれません。体内でα-リノレン酸からEPAには多少の変換はありますが、人間ではα-リノレン酸を摂取してもDHAにはほとんど変換されません。従って、完全菜食主義のビーガンの人はDHAが不足することが指摘されています。(下図)

図:α-リノレン酸(①)は亜麻の種子や荏胡麻(エゴマ)の種子など植物油に含まれる(②)。エイコサペンタエン酸(③)とドコサヘキサエン酸(④)は微細藻類(⑤)や魚類(⑥)に多く含まれるが植物油には含まれない。α-リノレン酸を摂取すると一部はエイコサペンタエン酸に変換される(⑦)。しかしドコサヘキサエン酸への変換は極めて少ない(⑧)。したがって、完全菜食主義の人はドコサヘキサエン酸が不足しやすい。

ある報告によると、ビーガン食にはDHAが含まれておらず、乳製品と卵を含む菜食主義者の食事は1日約0.02 g のDHAしか含まれていません。
通常、DHAは1日に200mg(0.2g)から300mg(0.3g)が最低必要と言われています。菜食主義の妊婦の場合、胎児のDHA不足は神経精神機能に障害を起こす可能性があります。DHAは人間の体内でほとんど合成できませんが、中枢神経系と網膜の主要な構造脂肪酸であり、その利用可能性は脳の発達に不可欠です。 

【菜食主義の人は微細藻類由来DHAのサプリメントの摂取が推奨されている】
以下のような論文があります。

Bioavailability and potential uses of vegetarian sources of omega-3 fatty acids: a review of the literature(菜食主義者におけるオメガ3脂肪酸の供給源の生物学的利用能と潜在的な使用:文献のレビュー) Crit Rev Food Sci Nutr. 2014;54(5):572-9. 

【要旨】
現在、α-リノレン酸は菜食主義者における最も広く使用されているオメガ3多価不飽和脂肪酸であるが、人間の健康に強く関連しているエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)に変換されるのはごくわずかである。
現在、EPAとDHAの主な食事源は魚油であるが、魚油は菜食主義者には使用できない。
代替の供給源として、亜麻仁、クルミ、藻油などが含まれるが、EPAおよびDHAへの変換を検討する必要がある。この系統的レビューは、菜食主義における長鎖オメガ-3(n-3)多価不飽和脂肪酸のバイオアベイラビリティ(生体利用能)を調べる介入研究からの情報を得ることを目的としている。
過去10年間に発表された10の主要な論文のうち、7つの論文ではナッツや種子由来の油からのα-リノレンがDHAにまったく変換されなかったことを報告していた。
3つの研究は、微細藻類由来油の摂取が血液中の赤血球と血漿DHAの有意な増加につながることを示した
菜食主義者の長鎖オメガ-3(n-3)多価不飽和脂肪酸の代替供給源に最適な投与量を特定し、これらを毎日の食事にどのように利用できるかを特定するために、さらなる研究が必要である。藻油の潜在的な役割は特に有望であり、さらなる研究が必要な分野である。

植物油に含まれるα-リノレンがドコサヘキサンエン酸(DHA)にほとんど変換されないこと、微細藻類由来油の摂取が血液中の赤血球と血漿DHAの有意な増加につながることを指摘しています。以下のような報告もあります。

Algal supplementation of vegetarian eating patterns improves plasma and serum docosahexaenoic acid concentrations and omega-3 indices: a systematic literature review.(菜食主義者の食事への藻類補給は、血漿および血清ドコサヘキサエン酸濃度とオメガ-3指数を改善する:系統的文献レビュー)J Hum Nutr Diet. 2017 Dec;30(6):693-699. 

【要旨】
背景:菜食主義者は、魚や動物製品を消費する雑食性の集団よりも、事前に形成されたドコサヘキサエン酸(DHA)の摂取量が少ない可能性がある。そのため、菜食主義者の人々は、水産物を消費する人々よりもオメガ3指数が最大60%低い。
海洋食物連鎖におけるDHAの主要な生産者である藻類は、海洋または動物製品を消費しない人々にDHAの代替供給源を提供する。この系統的レビューは、藻類型のDHAの補給と菜食主義者集団におけるDHA濃度の増加との関係の証拠を調べることを目的としている。

方法:SCOPUS、Science Direct、およびWeb of Scienceの科学データベースを検索して、菜食主義者(ビーガンを含む)の集団による藻類DHA消費の影響を評価する関連研究を特定した。

結果:4件のランダム化比較試験と2件の前向きコホート研究が選択基準を満たした。含まれているすべての研究は、DHAの藻類源が、ベジタリアン集団のDHA濃度(血漿、血清、血小板、赤血球画分を含む)、およびオメガ3指数を大幅に改善することを報告した。これまでの研究数が少ないため、時間または用量反応は明らかではなかった。

結論:将来の研究では、藻類のDHAを使用して、菜食主義者の長鎖n-3多価不飽和脂肪酸の欠乏に対処し、これらの個人の潜在的な生理学的および健康上の改善を調査する必要がある。

菜食主義者のDHA不足を解決する方法として微細藻類由来の油が有効という提案です
菜食主義者だけでなく、通常食の人も微細藻類由来の油の有用性が指摘されています。それは海洋汚染が深刻になり、メチル水銀やマイクロプラスチックなどによる魚の汚染が、魚食を制限するレベルまで悪化しているからです。
日本の厚生労働省や米国食品医薬品局は、マグロなどの大型魚に水銀濃度が高い例をあげ、妊婦や子供は食べないようにと呼びかけています

【ドコサヘキサエン酸(DHA)は微細藻類が作っている】
魚に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は魚の体内で合成されているのではありません。EPAとDHAを作っているのは微細藻類です
プランクトンが微細藻類を食べ、小型魚がプランクトンを食べ、大型魚が小型魚を食べるという食物連鎖によって、サバやサンマやカツオやマグロなどの魚油にEPAやDHAが蓄積しています。人間はこれらの魚を食べることによってEPAやDHAを摂取しています。

菜食主義の人は魚を食べることができません。魚由来のDHA/EPAも動物由来という理由で拒否される場合もあります。しかし、微細藻類は植物ですので、微細藻類由来のDHA/EPAの摂取は抵抗がありません。菜食主義者のDHA補充の目的で微細藻類のDHAが注目されています。

 

図:オメガ3系多価不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は微細藻類が合成している。プランクトンが微細藻類を食べ、小型魚がプランクトンを食べ、大型魚が小型魚を食べるという食物連鎖によって、魚油にEPAやDHAが蓄積している。

がんや認知症や循環器疾患の予防や治療にDHAやEPAが有効であることは確立しています。従って、DHAやEPAの多い脂の乗った魚を多く食べることが推奨されています。
しかし、魚のメチル水銀やマイクロプラスチックなど海洋汚染に由来する有害物質の魚への蓄積の問題が、魚食を安易に推奨できない事態になっています

メチル水銀は毒性が強く、血液により脳に運ばれ、やがて人体に著しい障害を与えます。母親が妊娠中にメチル水銀を体内に取り込んだことにより、胎児の脳に障害を与えることもあります。
魚は自然界に存在する水銀を食物連鎖の過程で体内に蓄積するため、日本人の水銀摂取の80%以上が魚介類由来となっています。魚摂取が増えるとメチル水銀の体内摂取が増え、胎児の脳の発育に悪影響を及ぼすことが明らかになり、厚生労働省は平成15年(2003年)に妊婦の魚摂取に関する注意事項を公表しています。つまり、妊婦や小児は魚は多く食べてはいけない食品になっています。

海洋でDHAとEPAを作っている微細藻類を培養して、培養した微細藻類からDHAとEPAを取り出せば、汚染物質がフリーのDHA/EPAを製造できます。
微細藻類の中でもDHA含有量が極めて多いシゾキトリウム(Schizochytrium sp.)をタンク培養して製造したDHAサプリメントが欧米などで販売されています。日本でも今後増えてくると思われます。
閉鎖環境での培養のため、汚染の心配がありません。植物由来なので菜食主義者も抵抗なく摂取できます。(下図)

亜麻仁油や紫蘇油(エゴマ油)はがんの食事療法で推奨されています。オメガ6:オメガ3の比率を下げる効果があるので、多少は意味があるかもしれません。しかし、亜麻仁油や紫蘇油(エゴマ油)に含まれるα-リノレン酸は体内ではDHAにほとんど変換されないという点から、がん治療における有用性は低いと言えます
DHAを1日に5g程度を摂取すると、がん細胞の性状を変えて、死滅することができます。

 

詳細は以下のサイトで紹介しています。

http://www.f-gtc.or.jp/DHA/DHA-51.html

 

画像をクリックするとYouTubeの動画に移行します。

https://www.youtube.com/watch?v=fJ8Vyb39q7A&t=14s

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