がんの予防や治療における漢方治療の存在意義を考察しています。がん治療に役立つ情報も紹介しています。
「漢方がん治療」を考える
667)抗がん作用を強めるアブラナ科野菜の食べ方
図:ブロッコリーやカリフラワーやキャベツなどのアブラナ科野菜にはグルコシノレートというイオウを含みグルコースが結合した物質が含まれている(①)。グルコシノレートには多数の種類があり、その中のグルコラファニン(②)は、細胞が壊れるとミロシナーゼと反応してスルフォラファンを生成する(③)。別のグルコシノレートのグルコブラシシン(④)も、同様にミロシナーゼによって加水分解してインドール-3-カルビノールになり(⑤)、さらに胃の中の酸性の条件下では、インドール-3-カルビノールが2個重合したジインドリルメタンになる(⑥)。これらの物質は、抗菌、抗酸化、解毒、発がん抑制、がん細胞の増殖・浸潤・転移の抑制などの作用を持っており、がんの発生予防や治療に役立つ効果を発揮する。
667)抗がん作用を強めるアブラナ科野菜の食べ方
【植物が産生する二次代謝産物は薬の宝庫】
植物は光エネルギーを使って、空気中の二酸化炭素と、土壌から根によって吸い上げた水や無機塩類から、糖やアミノ酸など様々な物質を合成して蓄積しています。
この光合成によって、光のエネルギーを、糖やアミノ酸などの有機化合物の中に化学エネルギーとして変換し、貯蔵するのです。
このような植物が合成する物質は一次代謝産物と二次代謝産物に大別されます。
一次代謝は生命体にとって必須な細胞の増殖や恒常性維持に関与する代謝です。生物に共通に存在するタンパク質や核酸や脂質や糖質の合成や、エネルギーを産生する代謝経路に関わる化合物が一次代謝産物と呼ばれます。
一次代謝産物は人間を含め、全ての生物が持っている化合物なので、薬として利用されるケースは多くありません。
一方、二次代謝産物は、基本的な細胞活動に必須ではありません。一部の生物種に存在し、他の生物種には存在しないような代謝産物です。
例えば、鎮痛薬として医療に利用されているモルヒネはケシという植物の未熟果実に存在しますが、他の植物には存在しません。モルヒネは大量に摂取すると血圧低下や呼吸抑制などの強い毒性作用があります。つまり、植物のケシは捕食者となる動物から自分を守る防御物質としてモルヒネを作っており、それを人間が医薬品として利用しているのです。
その他の二次代謝産物の例としては、微生物における抗生物質の産生や植物における色素産生や感染防御物質などが挙げられます。
二次代謝産物には植物の感染防御や生体防御に関連するものが多くあります。このような成分は毒性に加えて、様々な薬理学的特徴を発揮し、医薬品開発に利用されています。
野菜や果物に含まれるポリフェノールやカロテノイドやビタミンCやEなどの抗酸化物質は、植物が日光の紫外線の害から身を守るために作っているのですが、人間はそれらを摂取することによって活性酸素やフリーラジカルを消去して、老化やがんの予防に役立てています。
また、昆虫や鳥や動物から食い荒らされないように、これらの生物に対して毒になるものを作っており、それらが人間の病気の治療にも使われています。
毒は適量を使えば薬になるということです。「毒にも薬にもならない」という言葉がありますが、基本的に毒にならないような物質は薬にもならないということで、薬になるような物質は大量に摂取すれば毒になるようなものです。
植物体は病原菌や寄生菌が侵入すると、植物細胞は抗菌性物質(生体防御物質)を生成する場合があります。このような物質は、人間でも抗菌作用や抗ウイルス作用が期待できます。また、抗菌・抗ウイルス作用をもった成分の中には抗がん作用を示すものもあります。
熱帯地域やジャングルなど過酷な環境で生育する植物には、そのような抗菌作用や抗炎症作用や抗がん作用の強い成分が多く含まれているので、病気の治療に役立つ成分が多く含まれている可能性も指摘されています。
【植物は病原菌や虫の害を防ぐ化学物質を生成する】
植物体に病原菌や寄生菌が侵入すると、植物細胞は抗菌性物質(生体防御物質)を生成する場合があります。このような生体防御物質をフィトアレキシン(phytoalexin)といいます。
例えば、赤ブドウの皮などに含まれ寿命延長作用やがん予防効果が話題になっているレスベラトロール(Resveratrol)もフィトアレキシンの一つです。 レスベラトロールはスチルベン合成酵素(stilbene synthase)によって合成されるスチルベノイド(スチルベン誘導体)ポリフェノールの一種で、気候変動やオゾン、日光、重金属、病原菌による感染などによる環境ストレスに反応して合成されます。
ブロッコリー、カリフラワー、キャベツなどのアブラナ科野菜には、グルコシノレート(glucosinolates)という分子中に硫黄原子を含む成分が多く含まれています。
このグルコシノレートはミロシナーゼという酵素によって分解され、イソチオシアネートという非常に辛い物質を生成します。
細胞内ではミロシナーゼとグルコシノレートとは隔離されて接触しないように貯蔵されています。しかし、昆虫などの捕食者にかじられると、細胞が壊れてグルコシノレートとミロシナーゼが接触して酵素反応が起こり、イソチオシアネートが生成します。イソチオシアネートは虫や病原菌を排除する効果があります。
また、別のグルコシノレートのグルコブラシシンも病原菌の感染から守るためにアブラナ科の植物で作られます。例えば、アブラナ科植物のホソバタイセイの葉に病原性ウイルスを感染させたり機械的に傷をつけるとグルコブラシシンが多く作られてくることが知られています。
アリウム(Allium)属の野菜(ニンニク、ニラ、ネギ、タマネギ、アサツキ、チャイブなど)に共通しているのは、豊富なイオウ化合物を含んでいて、酵素の作用で分解して臭気成分や薬理成分を生成することです。
たとえば、ニンニクの細胞内にはアリインという無臭の成分が含まれています。ニンニクを切ったり、すりおろしたりすると同じくニンニクに含まれているアリナーゼという酵素の作用によってアリインが強いニオイを発するアリシンという成分に変化します。
アリシン(allyl 2-propenethiosulfinate)の正体は揮発性のイオウ化合物で、各種の細菌やカビに対し強い抗菌活性を持っています。
野菜のセロリは虫やカビによって茎に傷がつくとソラレンをいう物質を防御の目的で大量に作り出します。ソラレンは光の吸収を増幅する作用をもち、ソラレンを摂取したあとに紫外線を浴びると、日焼けや湿疹を引き起こします。
このように、植物は病原菌からの感染や、虫や動物から食べられるのを防ぐために、生体防御物質や毒になるものをもっています。このような物質は、人間でも抗菌作用や抗ウイルス作用が期待できます。また、抗菌・抗ウイルス作用をもった成分の中には抗がん作用を示すものもあります。
【グルコシノレートはアブラナ科植物の生体防御物質】
がん治療に役立つ食物として、大豆やキノコやオリーブオイルや柑橘類など多くが知られています。
その中で、私ががんの予防や治療に役立つ食品として最も重要だと考えているのがアブラナ科の野菜です。
1990年代に米国立がん研究所が中心となって「がん予防に重要な野菜や果物や香辛料」がまとめられました。そのトップはニンニクで、キャベツ、大豆、生姜、タマネギ、お茶などが上位にランクされています。キャベツはアブラナ科の野菜です。
他のアブラナ科野菜のブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツは、タマネギやお茶や柑橘類(オレンジ、レモン、グレープフルーツ)と同じランクになっています(下図)。
図:1990年から米国国立癌研究所を中心に行なわれた「デザイナーズフーズ・プログラム」における研究から得られた結果に基づく「がん予防効果が期待される野菜や果物」。アブラナ科野菜のキャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツはがん予防に有効な野菜として上位にランクされている。
アブラナ科の植物にはグルコシノレートという物質を含むのが特徴です。グルコシノレートは二次代謝産物の一種で、分子中にイオウ(硫黄)原子を多く含み、グルコースが結合しています。グルコシノレートにはグルコース以外の部分の構造が異なる多数の種類が知られています。
このグルコシノレートはミロシナーゼという酵素によって分解され、イソチオシアネートという非常に辛い物質に変化します。
グルコシノレートは細胞内ではミロシナーゼと接触しないように安定して蓄えられていますが、昆虫などの捕食者にかじられると、細胞が壊れてグルコシノレートとミロシナーゼが接触して酵素反応が起こり、イソチオシアネートが生成するのです。
ワサビや大根を擂り下ろすと辛みが出てくるのは、細胞が壊れてグルコシノレートとミロシナーゼが反応してイソチオシアネートが生成するためです。
図:グルコシノレートは分子中にイオウ(硫黄)原子を多く含み、グルコースが結合している(①)。グルコシノレートは植物内でミロシナーゼと接触しないように安定して蓄えられているが、昆虫などの捕食者にかじられると、細胞が壊れてグルコシノレートとミロシナーゼ(②)が接触して酵素反応が起こり、イソチオシアネートが生成する(③)。
がん予防物質として有名なスルフォラファンは、グルコシノレートの一種のグルコラファニン(glucoraphanin)という物質がミロシナーゼによって分解されて生成します。つまり、スルフォラファンはイソチオシアネートの一種です。
グルコラファニンはブロッコリーやカリフラワーに多く含まれています。
スルフォラファンは抗酸化酵素やフェースII解毒酵素の活性を高めて、強いがん予防効果を発揮することが知られています。
図:グルコシノレートの一種のグルコラファニンがミロシナーゼで分解されるとスルフォラファンというイソチオシアネートが生成する。
細胞が壊れてグルコシノレートとミロシナーゼが反応して生成するイソチオシアネートは昆虫などの捕食者を忌避させる効果を発揮します。
別のグルコシノレートのグルコブラシシンも、同様にミロシナーゼによって加水分解してインドール-3-カルビノールになります。このインドール-3-カルビノールも植物の生体防御に働きますが、人間が摂取すると、胃の中の酸性の条件下では、インドール-3-カルビノールが2個重合したジインドリルメタンになります。
ジインドリルメタンはがん細胞のシグナル伝達系に作用して、増殖や浸潤や転移を抑制し、細胞死(アポトーシス)を誘導し、抗がん剤感受性を高めるなどの抗がん作用を発揮します。(下図)
図:アブラナ科野菜に多く含まれるグルコシノレートの一種のグルコブラシシン(①)は、ミロシナーゼによって加水分解してインドール-3-カルビノールになり(②)、さらに胃の中の酸性の条件下では、インドール-3-カルビノールが2個重合したジインドリルメタンになる(③)。がん細胞内ではAkt キナーゼや転写因子のNF-κBなどのシグナル伝達系が亢進し(④)、がん細胞の増殖・浸潤・転移が亢進し、抗がん剤抵抗性が高まっている(⑤)。ジインドリルメタンはAktやNF-κBを阻害する作用があり、その結果、がん細胞の増殖や転移を抑え、抗がん剤感受性を高めることができる。
アブラナ科の植物に見られるグルコシノレートとミロシナーゼのシステムは、最もよく研究されている植物の化学的防御の1つです。
ミロシナーゼ(myrosinase)はβ-チオグルコシダーゼとも呼ばれ、グルコシノレートのグリコシド結合を加水分解して、硫酸基を離脱させることでイソチオシアネートを生成します。
グルコシノレートとその加水分解酵素であるミロシナーゼは、無傷の植物組織の別々の区画に保管されています。組織が破壊されると、グルコシノレートの生物活性化が開始されます。
つまり、ミロシナーゼはそのグルコシノレート基質にアクセスし、グルコシノレートの加水分解により、毒性のあるイソチオシアネートおよび他の生物学的に活性な生成物が形成されます。グルコシノレート-ミロシナーゼ系の防御機能は、さまざまな昆虫や草食動物を用いた多くの研究で実証されています。
【アブラナ科野菜を加熱調理すると抗がん作用が減少する】
グルコシノレートは熱に安定ですが、グルコシノレートを加水分解するミロシナーゼはタンパク質で加熱によって変性して活性が無くなります。また、イソチオシアネートも熱に不安定なので、アブラナ科野菜を加熱料理すると、薬効成分のイソチオシアネートの量が減少します。
以下のような報告があります。
Effect of cooking brassica vegetables on the subsequent hydrolysis and metabolic fate of glucosinolates.(アブラナ属野菜の調理がグルコシノレートのその後の加水分解と代謝に及ぼす影響)Proc Nutr Soc. 2007 Feb;66(1):69-81. の運命
【要旨の抜粋】
アブラナ科野菜のがん抑制作用は、グルコシノレート含有量に部分的に関連している可能性がある。グルコシノレートは、植物組織の損傷後にミロシナーゼによって加水分解される。イソチオシアネートは、グルコシノレートの代謝物の主要なグループの1つであり、がん予防効果に関係している。
アブラナ科野菜の調理中に、植物ミロシナーゼの不活性化、エピチオスペシファイア(epithiospecifier)タンパク質などの酵素補因子の損失、グルコシノレートとその代謝物の熱分解および/または浸出または代謝物の揮発の結果として、グルコシノレート-ミロシナーゼ系が影響される可能性がある。
調理したアブラナ科野菜を摂取したのち、活性ミロシナーゼを含む生のアブラナ科野菜を摂取すると、イソチオシアネートは上部消化管で生成する。
ミロシナーゼ活性を欠く調理済みのアブラナ科野菜を摂取した場合、グルコシノレートは結腸の常在微生物叢によって加水分解される。
アブラナ科野菜に含まれるグルコシノレートから抗がん作用を発揮するイソチオシアネートの産生の量は、野菜の細胞破裂の程度、胃腸通過時間、食事の組成、腸内細菌叢の違いなど多数の要因によって影響を受ける可能性があります。
加熱調理したアブラナ科野菜と一緒にミロシナーゼ活性を有する生のアブラナ科野菜(ブロッコリースプラウト、大根おろしなど)を一緒に食べるとイソチオシアネートが上部消化管内で生成するということです。
また、腸内細菌もミロシナーゼ活性をもつので、加熱調理したアブラナ科野菜でも大腸内で生成する可能性があります。
このような様々な要因の存在が、アブラナ科野菜の消費とがんの予防とを関連付ける弱い疫学的証拠を部分的に説明するかもしれないと言っています。
つまり、アブラナ科野菜の単純な摂取量ではなく、調理法によるイソチオシアネートの摂取量の違いが重要と言うことです。
アブラナ科野菜のがん予防効果や抗がん作用を考察する際には、アブラナ科野菜の調理および摂取中に生じる生化学的変化の理解が重要だと述べています。
アブラナ科野菜の摂取とがんの発生率との関連を検討した疫学研究は多数報告されています。その多く研究で、アブラナ科野菜の摂取量が多いほど様々ながんの発生率で低いことが明らかになっています。
特に生のアブラナ科野菜の摂取量が多いほどがんの発生率が低い事が多くのがんで報告されています。
その理由は、アブラナ科野菜の抗がん物質のスルフォラファンやインドール-3-カルビノールやジインドリルメタンが本来は野菜の中に存在しないからです。
アブラナ科野菜に多く含まれるグルコシノレートという物質に、ミロシナーゼという酵素が作用してこれらの抗がん物質が生成します。
生の野菜を噛んだり、ミキサーなどで細切して野菜の細胞を壊さないとスルフォラファンやインドール-3-カルビノールは生成しないのです。
ミロシナーゼは酵素でタンパク質であるため、加熱調理するとタンパク質が変性して、酵素活性は消失します。
つまり、ブロッコリーやカリフラワーやキャベツを加熱調理するとそのがん予防効果や抗がん作用は低下することになります。したがって、アブラナ科野菜は生で食べたり、ジュースにして摂取するのがベストということになります。
ブロッコリーやカリフラワーやキャベツは生でも食べられますが、加熱調理しても、一つの工夫で抗がん作用を高めることができます。
前述の論文で記載されていた、「ミロシナーゼ活性を含む生のアブラナ科野菜を一緒に摂取する」という方法です。
【アブラナ科野菜の加熱調理に生のアブラナ科野菜を食べる】
加熱調理したブロッコリーでも、ミロシナーゼを含む食品と一緒に食べれば、ブロッコリーの抗がん作用が保たれるということが報告されています。以下のような報告があります。
Enhancing sulforaphane absorption and excretion in healthy men through the combined consumption of fresh broccoli sprouts and a glucoraphanin-rich powder.(新鮮なブロッコリースプラウトとグルコラファニンが豊富なパウダーを組み合わせて摂取することで、健康な男性のスルフォラファンの吸収と排泄を促進する)Br J Nutr. 2012 May;107(9):1333-8
【要旨】
スルフォラファンは、ブロッコリーに存在するミロシナーゼ(myrosinase)によるグルコラファニン(glucoraphanin)加水分解に由来する、がん化学予防効果を有するイソチオシアネート(isothiocyanate)である。
ブロッコリー粉末がサプリメントとして販売されているが、ミロシナーゼが不活性化しているため、スルフォラファンの供給サプリメントとしての有効性が疑問視されている。
以前の研究では、グルコラファニンが豊富であるがミロシナーゼ活性を欠くブロッコリー粉末が、ミロシナーゼを含む空気乾燥ブロッコリースプラウト粉末と一緒に摂取すると、スルフォラファンの体内吸収が増えることを明らかにした。
この研究では、以前の研究で使用されたグルコラファニンを多く含むブロッコリーパウダーと、市販の新鮮なブロッコリースプラウトを一緒に摂取した場合のスルフォラファンの体内吸収について検討した。
生のブロッコリースプラウトは、空気乾燥ブロッコリースプラウトに比べて、入手しやすく、日常の食事でより利用しやすい食材である。
合計4人の参加者がそれぞれ、70μmolのスルフォラファン含有量に相当するブロッコリースプラウト、120μmolのスルフォラン含有量に相当するグルコラファニン粉末、乾燥シリアルとヨーグルトからなる4食(1週間ごとに分けて)を摂取した。
スルフォラファンの代謝物は血液と尿で分析された。 24時間尿中スルフォラファン-N-アセチルシステインの回収率は、グルコラファニン粉末の食事が24%、ブロッコリースプラウトの食事が60%、ブロッコリースプラウトとグルコラファニン粉末を同時に摂取した食事では65%であった。
グルコラファニン粉末摂取後のイソチオシアネイトの尿および血漿への出現は、ブロッコリースプラウトを摂取した場合およびブロッコリースプラウトとグルコラファニン粉末を同時に摂取した場合と比較して遅れた。
グルコラファニン粉末またはブロッコリースプラウト単独と比較して、ブロッコリースプラウトとグルコラファニン粉末を組み合わせることにより、スルフォラファンの血中への出現が促進され、このような食品の組み合わせががんを予防する健康作用を強化することが示された。
これは米国のイリノイ大学の食品化学・人間栄養学部門(Department of Food Science and Human Nutrition, University of Illinois)からの報告です。
グルコラファニンを多く含むブロッコリーパウダーを摂取しても、ミロシナーゼが不活性化していると、スルフォラファンは生成しないので、血中や尿中のスルフォラファンの量は上がりません。腸内細菌のミロシナーゼ活性によってスルフォランができる分しか体内に吸収しないということになります。
しかし、ミロシナーゼ活性を有する生のブロッコリースプラウトを一緒に摂取すれば、スルフォラファンが十分に生成されるという報告です。
ブロッコリーを煮て、その煮汁を捨てるとグルコラファニンをロスします。煮汁にグルコラファニンが多く浸出しています。
ブロッコリーやカリフラワーを煮たときは、その煮汁を捨てないことです。
ミロシナーゼの活性の至適温度は 35〜40℃です。
つまり、煮汁が40℃以下になってから、ミロシナーゼ活性をもつブロッコリースプラウトや大根おろしを混ぜれば、スープの中にスルフォランやインドール-3-カルビノールなどの抗がん成分が増えます。
私は、がん予防の料理として、「大根おろしぶっかけアブラナ科野菜スープ」というレシピを勧めています。
ブロッコリーやカリフラワーやキャベツを少量の水で煮て、少し冷まして40℃以下にして、それに大根おろしをたっぷり加えた料理です。このとき、煮汁は捨てないのがポイントです。
煮汁の中のグルコラファニンやグルコブラシシンと、大根おろしの中のミロシナーゼが反応して、スルフォラファンやインドール-3-カルビノールなどの抗がん作用のある成分が生成します。
生のブロッコリー・スプラウトや擂り下ろしたワサビなども同様な効果が期待できます。
ブロッコリーやカリフラワーやキャベツを全て生で食べるより、加熱調理してスープを捨てないで、大根おろしやブロッコリー・スプラウトのミロシナーゼ活性でイソチオシアネートやインドール-3-カルビノールを生成する方が効果が高いように感じています。
ジインドリルメタンのサプリメントが米国で販売されています。これは抗がん作用が期待できます。
ブロッコリー・スプラウトの粉末が、スルフォラファンのサプリメントとして販売されていますが、ミロシナーゼ活性がなければ、あまり効果が期待できないと思います。ブロッコリー・スプラウト粉末に含まれているのはグルコラファニン(スルフォラファンの配糖体)であり、ミロシナーゼ活性がなければスルフォラファンは生成しません。
スルフォラファンの摂取には「大根おろしぶっかけアブラナ科野菜スープ」の方が効果が高いと思います。
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