光を灯したイザナギが見たものは、イザナミの身にわいた宇士<ウジ>でした。
“宇士多加礼<ウジタカレ>斗呂々岐弖<トロロキテ>”
と有ります。斗呂々岐弖<トロロキテ>ですが、イザナミの身をとろかすと言う意味です。その身はとろけて、昔の美しいイザナミの姿がありません。ウジ虫が、只、その身にまぶれ付いている様な状態になってしまっていたのです。しかも、その頭、胸、腹、陰部<ホト>、左右の手、そして左右の足に、八つの雷神が生まれておりました。
この時、イザナミは大変立腹します。そうでしょう。女性です。常に、自分の美しさを追求している身でありながら、その女性の一番醜い姿を、あろうことか、最愛の夫に見られてしまったのです。「見ないでください」と頼んでおいたのに、約束をほごにしてみられてしまったのです。今までに培った深い深い愛情もいっぺんにどこかへ吹っ飛んで行ってしまい、その反作用でしょうか、その愛が憎しみに、突然に倍増して、しかも、世の中で、最も、恐ろしい雷神に変身しているのです。そのまま、その場にいようものなら何時その雷神たちに打ち殺されるかも知れないという状況です。逃げるが勝ちです。大急ぎてイザナギは
“畏而逃還<カシコミテ ニゲカエリ>”
ます。「畏」を「カシコミテ」と読ましておりますが、今までに感じていた愛情はいささかも見えず、ここに来た事さえ悔い悩んで、唯だ、一目散にこの場から退散することだけを考えているようなイザナギの身の勝手さにあきれたイザナミの憎しみは募るばかりです。
さあ、どうなりますやら??また明日にでも・・・・・