八雷神と黄泉軍がすぐ後ろまで迫り来ます。イザナギは
“抜所御佩之十拳剣而<ミハカセル トツキツルギヲヌキテ>。而於後手布伎都都<シリヘニ フキツツ>逃来<ニゲキマセル”
手に持った剣を後にぐるぐると振り回しながら(「布伎は振るなり」・・・古事記伝)一目散に、只、逃げるのみです。と云うことは。イザナギは立ち止まって相手と剣を交わすのではなく、要するに、「逃げるが勝ち」とばかりに逃げ来るのです。「攻撃」で無く、「防御」こそが、最大の、今、我が身に降りかかっている危険から逃げ切る事の出来る唯一の戦術とばかりに!!!!黄泉の国です。その地理も攻撃する者たちの戦力も何もかも分ってはいません、その上、真っ暗な暗黒の世界です。唯、むやみに手にした刀を後に振り回すだけで、相手の攻撃から自分の身を防ぐしか方法がなかったのです
なお、このイザナギがやみくもに振り回した「十拳剣」とは。その長さが10握りほど、約100cmほどの刀です。どのような形をしていたかは分かりませんが、このような剣ではないかと云う写真をどうぞ。これは真庭市中津井の大谷古墳から出土した大刀です。