恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

5.コンビニ 1

2007年06月03日 | 自分の恋
 次の仕事が決まるまでの間、コンビニで深夜バイトをする事が決まった。
 都会のど真ん中にあるコンビニだ。
 昼は人通りが少ないが、夜になると明々とスナックや風俗店が開き始め、隣にはラブホテルが立ち並んでいる。
 目の前には、背が小さくて、気さくなおじさんが経営している居酒屋があり、その隣には、すし屋がある。
 コンビニの隣は、焼き肉屋があり、結構夜遅くまでどこの店も開いていた。
 私がコンビニのシフトに入るのは夜22時から朝の8時までだ。
 長い時間いる事になる。ここでは癖のある様々な客が訪れる。
 「いらっしゃいませ。こんばんは。」私が大きな声で言うと、がっちりした男が入って来て、そそくさとレジの前に仁王立ちしていた。
 「兄ちゃん。タバコくれる。」声が低くゆっくりとした口調だった。見るからにヤクザである。額には大きな傷跡があった。
 「何の銘柄ですか?」
 「ショートホープ2個くれる。」
 「はい。こちらですね。」私が二個手渡すと、パッと取ってその男は店を出て行った。
 その男が、表の駐車場でタバコを吸っていると、パトカーが一台停まり、一人の警察官が降りてきて男と話しをしている。
 私は何かあったのかなと思っていたら、見る見るうちにパトカーが増え、10台くらい停まり、警察官がウジョウジョと集まっていた。
 警察官の一人と指紋を取る人がコンビニに入って来て、店員の私にトイレを見せて下さいと言った。
 私は「何かあったんですか?」と聞くと警察官は知らない振りをした。
 表ではさっきのヤクザともう一人のヤクザが増えていて、怒鳴り声をあげて、警察官に喚いていた。
 あれだけの警察官がいたのでは、犬の遠吠えくらいしかならないだろうと思った。
 一時すると、警察官がトイレから出てきて、表の警察官がヤクザを連れて行った。
 周りは野次馬だらけで、今日は本当なら暇なのに、滅茶苦茶忙しくて、泣きたくなった。
 いつも来る隣の焼き肉屋のおばさんが眠眠打破を飲んで呟いた。
 「警官の団体が来るなんてどんな店やろ。」
 私は、苦笑いを浮かべて「ありがとうございました。」と言った。
 夜が明け、警察官の団体がいなくなった後、お客もあまり来なかった。さっきは何の騒ぎだったのだろうとほうきを持って駐車場を掃除をした。
 タバコの灰皿には、ショートホープの欠片が残っていた。
 
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