恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

6.コンビニ 2

2007年06月06日 | 自分の恋
 夜の街にネオンが点く頃、私はコンビニのバイトに入る。
 風俗で働いている人や、スナックで働いている人がここのコンビニを利用する。
 ヤクザなんて毎日来るし、ホストもやって来る。
 私がコンビニのレジに立っていると、米米クラブの一員のような体格はごつくて、うっすらと化粧をしたおじさんが栄養剤を買っていった。またヤクザだろう。
 黒いスーツに身を包んだホストもよく来る。
 夜中なのにサングラスをかけて、m-floかよと思った。女を騙す為にあらゆる手を使っていた。
 サンボマスターの様な太った男三人組もよく来る。缶コーヒーやお菓子についているフィギアが目当ての様だ。
 オネェ系のナよっとした男も来る。
 おかまも多い。
 オジサンが女の格好をして、うっすらと髭を生やして、コーヒーを買って行ったのには、戸惑った。
 その後は、太ったギャルのドラえもんが来た。パジャマで全身からかぶるやつだ。私は、驚くというよりもそれを通りこして笑っていた。ドラえもんのポケットから財布を取り出したのには、苦笑いをした。
 次の日に、キティちゃんとオソロでコンビニに入って来たときは、メルヘンの世界かと思って、まさかミッキーマウスまでは来ないだろうなと呟いた。
 夜の街。どうして私はこんな所にいるのだろう。
 その後に短パンのジーンズをはいて、下着姿のような格好をした女の子が入ってきた。胸や尻が半分でていた。手には薄っすらと刻印が押してあった。
 クラブに行って来た帰りだろうと思った。
 コンタクトの洗浄液がどこにあるのか聞いてきたので、丁寧に教えたら喜んでいた。
 私が気になったので聞いてみた。
 「クラブかなんかの帰りですか?」
 「この格好は普段着ですよ。」一時考えて彼女が笑って答えた。
 「そうなんですか。」少しの会話だったが、私は興味を抱いた。けして胸や尻に目が言ったわけではない。帰った後、よほど服を着せようかなと思った。
 私はダンサーと名づけた。
 それから毎日ダンサーは来るようになった。
 私がジュースのサービス券をあげたら「ありがとうございま~す。」と言ってウィンクをして帰った。
 話しを聞くと本当にダンスをしているらしかった。
 今日の格好はダぼっとしたジーンズに赤いフードつきトレーナーを頭からかぶっていた。いつもは長い茶色の髪を結んでいるのだけど、今日は見えなかった。
 昔この人を見たことがある。
 前世なのかもしれない。ダンサーと話すと私は懐かしい気持ちになった。
 外を見ると小雨が降っている。
 その中を赤いフードをかぶった彼女が今日も来た。
 コンビニ内を一周して、アイスの所で立ち止まって選んでいた。ガリガリ君のアイスをレジに持ってきて呟いた。
 「明日から遠いところへ行くんですよ。」私は、アイスをレジに通しながら驚いた。
 「えっ。沖縄かどこかに行くの?」
 「ニューヨークで、本格的にダンスを学ぼうかなと思ってます。」
 「そうなんだ。」せっかく友達になれたのに、私の好きな子はみんな海外に旅立ってしまう。ショックで泣けてきた。
 「また来ます。」
 「応援しているよ。頑張って。」ガリガリ君のアイスを小さな袋に詰めて彼女の手に渡した。
 「ありがとうございま~す。」彼女が赤いフードをかぶった。目と目が合い、沈黙が少しあった後、自動ドアを出て行った。雨の中赤いフードがとても目立っていた。
 彼女が帰った後もずっと雨を見ていた。
 人と別れる時には必ず雨が降るのはなぜだろう。
 きっと私の分まで神様が泣いているに違いない。
 
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