礼儀正しく、勉強もよくできて、スポーツは抜群という「ハンカチ往時」のような少年がもてはやされると、わが子をどんな子どもに育てたいのか、という「子ども像」が狂わされてきているのではないか、と気になっています。「あんな子の親ってどんなにか幸せでしょうね」などと親たちが集まると話をしているのです。
■まっとうに育つ子は
私は教師になってこのかた、たくさんの子どもたちに出会ってきました。こんな子はしっかり自立し、まっとうに育つぞと思った子どもって、どんな子どもだったでしょうか。
○「ああおいし」と言いながらお腹をすかせて帰って来て喜んで食事をする子
○どろんこになって帰って来て、ことんとぐっすり眠る子
○三日坊主のくせに、なんでもやってみたいと目を輝かす子
○お年玉の袋だって、お気に入りのものを大事にしまっておく子
○がらくた大好き、いろいろ集めては、物を作るのを楽しむ子
○年齢相応のどこにでもいる子ども
○ケンカも失敗もするけど、翌日ケロッとして、またケンカして叱られる子
○動植物の名前を知っていて、世話をしたりかわいがったりする子
○抱いてやったら素直に甘えられる子
○自分の好きなことがあって、それに熱中できる子
○えがおのかわいい子
○本を読んでもらうのを喜ぶ子
○友だちのうれしいことやがんばりをいっしょに喜べる子
○欲しいものが手に入るまで時間がかかっても待とうとする子
○きれいだなあ、いいなあと心をふるわせて感動できる子
○許せないことがあるとくってかかってくるが、自分が悪いとわかったら謝れる子
○泣き虫でも甘えん坊でもいい、人にやさしい子
○これがいい、これにすると自分で決められる子
○百点でなくっちゃとキリキリせず、まっいいかと少し大らかになれる子
○家では兄弟ゲンカをしても、外へ出たら兄弟を守ってやれる子
○「母ちゃん洗濯物入れといたで」とたまには親を喜ばせてくれる子
○小さい子をかわいがったり、年上の子とも遊ぶが、同年齢の子と必死になって遊ぶ子
○大人が本気になったら、本気になって話が聞ける子
○学校では一人前えらそうなことを言ってがんばっていても、家に帰るとダラダラもするし甘える子
○できないことやわからないことをバカにしない子
○大人になったら父ちゃんみたいな消防士になるねん、と大人にあこがれている子
決して優等生ではないけれど、実に子どもらしく笑顔よしで甘えんぼでやんちゃな子どもたちでした。子育ては、何かをできるようにさせる能力を伸ばすことだ、とばかり思っていませんか。
次回は「こんな母ちゃんいいな」を紹介します。(とさ・いくこ 大阪市立加賀屋小学校教諭)