ある教育書関係の取次帳合の書店から注文があったので、すぐ近所にあるその取次の大阪支社に納品に向かった。ところが、なんと、閉鎖されているではないか! あれ? おかしいなと思いながら駐車場フェンスの鍵の部分を見ると、「こちらに移転しました」とビニールファイルに挟まれた案内書が風に吹かれてゆらゆらと揺れている。見ると移転先は港区になっている。はあ? ずいぶん遠い場所だ。納品先は某大手運送会社倉庫になっている。そういえばある情報では某大手N取次との合併話があるとかないとか言われていたが、もしかしてこれはその布石の1つか、などと勘ぐってしまう。
ところで、この取次への納品注文は時々しかない。しかも1回の納品が1冊や2冊なのである。でも電話やFAXで注文があると「必ず搬入はいつですか?」と聞かれるので、「いついつに納品します」と答えなくてはならない。答えたら必ずその日に納品することになっている。そうしないと特にお客さんの注文品場合は、書店さんに迷惑がかかることになる。たとえ1冊の注文でもだ。うーん、港区かあ、自転車では行けないしなあ…。送料がかかるなあ、受領書の返信用切手要るしなあ、などつい考えてしまう。
例えばある日、1冊の「ミケ本」を受注したとしよう。まあ、それ自体はありがたいことで結構なことなのだが。問題はここからだ。この取次への卸価格は700円。送料が往復で290円。つまり1冊売れれば410円の収入になるが、本を作る固定費が初版の場合は定価の約30%~35%なので、そうすると正味の利益は少なく見積もると60円しかない。ここから印税・編集・営業経費などを捻出しなければならない。重版できずに初版在庫を抱えたままになると、悲惨な結果が待っている。まあ極端な話で、実際にはもっとこうなる、ああなるという意見もあるが、出版とはそういう世界なのだ。
えっと、何の話だったか? そうそう、その納品先移転の話だった。それにしても、いくら取扱量が少ないからと言っても、移転の連絡ぐらいしてくれればいいのに。ところで支払いは、これまでと同じように持ってきてもらえるんやろうかねえ? N教販さん。