10月初めに放送され録画しっ放しにしていたドラマ『強制帰国 ~忘れられた花嫁たち』を観た。中国残留孤児問題についてはこれまでも知っていたが、中国残留婦人については「大陸の花嫁」という言葉ぐらいしか知らなかった。番組は中国残留婦人たちが日本政府に対して永住帰国を求めてたたかった実話をドキュメンタリータッチでドラマ化したものだ。いい番組だった。幸い、婦人たちの要求は細川内閣の時にまさにドラマ的に解決へと向かっている。
戦前、中国満州を侵略した日本は、広大な土地の開拓のために日本国内から大量の働き手(男性)を送り込むが女性が少なかったため、、「産めよ増やせよ」の号令下、男たちの花嫁相手として国内の貧しい農家の娘たちを満洲に送りだした。現地の花嫁訓練所を経た娘たちは、半ば強制的にまったく初対面の男性と合同結婚をさせられる。戦争が激しくなり夫を戦場に取られた人もいたであろう。敗戦を迎え、日本に帰国できなかった女性たちは地元の中国人男性と再婚し戦後を暮していたが、その間も日本に帰国する思いは絶えることがなかったのだ。
実は私の母はこの婦人たちと同世代の89歳。今は要介護状態で父との二人暮らしだ。戦前は、満洲ではないけれど中国に作られた日本の製菓会社で働いていた。敗戦後、なんとか生きながらえてそのまま中国で父と出会い結婚し、私の上の兄を生んでいる。
残留婦人たちのドラマも母の体験も、あの戦争があったからこその出来事だ。数百万、いや数千万人の人々の人生が同じように戦争によってそれぞれに深い影響を受け、それが今につながっている。この番組の企画力や取材力には程遠いだろうけど、あの時代を生き抜いた人々の想いを一人でも多く次の世代につないでいくことを急がねばと感じた。