山内 圭のブログ(Kiyoshi Yamauchi's Blog)

英語教育、国際姉妹都市交流、ジョン・スタインベック、時事英語などの研究から趣味や日常の話題までいろいろと書き綴ります。

「大先輩・杉山隆彦先生を偲ぶ」(日本ジョン・スタインベック協会 Newsletter No.60より)

2016-12-25 16:13:25 | 日記
以下の文章は、日本ジョン・スタインベック協会 Newsletter No.60 (2016年8月4日発行)に掲載された杉山隆彦先生への私の追悼文です。

大先輩・杉山隆彦先生を偲ぶ
                 新見公立大学     山内 圭
私の出身高校は、静岡県立浜松北高等学校です。私は、大学院生の頃、日本ジョン・スタインベック協会に入会させていただきましたが、その頃から、大学教員になることを目指していたいましたので、浜松北高校のOB名簿をめくりながら、大学教員になられている先輩方を探していました。そこで目に飛び込んできたのは、成城大学の杉山隆彦先生のお名前でした。しかも、私の父親(山内 中)と同級生であることに驚きを隠せませんでした。学会でお会いした際は杉山先生に、帰省した際には父親に、このことを報告したところ、二人とも喜んでくれました。その後、父親は高校の同窓会で杉山先生に何度かお会いしているようです。そんな縁で、杉山先生に覚えていただきかわいがってもらえた私は本当に幸運でした。実は、今だから明かせる話ではあるのですが、私が、新見女子短期大学(当時)に就職した年である1995年、杉山先生から成城大学で教員を募集しているから応募してみないかと声をかけていただいたことがありました。静岡県出身で横浜にて学生・非常勤講師時代を過ごした私ですので、出身地にも近い関東の、しかも有名な成城大学の話はとても魅力的ではありました。しかし、新見女子短期大学に就職する際に、岡山大学の故坪井清彦先生に推薦状を書いていただいたのに、1年で移ってしまうというのは、坪井先生の顔に泥を塗ってしまうことになると考えた私は、杉山先生に丁重にお断りをさせていただきました。もちろん私が応募したからと言って採用されたという保証はないのですが、新見の地で妻と出会う前のことでしたので、この時に成城大学に採用されて新見を辞めていたら、私の人生は今とは全く違うものになっていました。
そのようにせっかくのお話をお断りしてしまった私に対しても、その後も杉山先生は変わらずに接してくださいました。学会や懇親会でお目にかかった際には、いつも激励の言葉をかけていただきました。また、2008年11月13日は、東京高円寺の明石スタジオで上演されたLink Projectの演劇『二十日鼠と人間』の初演日でしたが、杉山先生とご一緒に観劇する幸運を得ました。日本ジョン・スタインベック協会のNewsletter No.46(2008)に発表した「『二十日鼠と人間』観劇記」で、私は次のように書いています。

劇場に早めに到着したところ、待合室で杉山隆彦先生とお会いし、ご一緒に観劇させていただくことができた。杉山先生の隣での観劇は、自分の父親と一緒に劇を見ているようで、やや気恥ずかしいながらも落ち着いた気持ちでの観劇であった(実は、杉山先生は私の父の高校時代の同級生である)。

 放送は拝見したことはありませんが、杉山先生は1976年度から1978年にかけて、NHK「テレビ英語会話Ⅰ」の講師を務められていました。残念ながら現在NHKのアーカイブにも映像は残されていないようです。NHKの講師を務められたことからもわかるように、杉山先生が学会での質疑応答などで話される英語はとても格調高いものでした。
 私の手元に、1990年10月22日の第14回日本スタインベック学会を録音させていただいたカセットテープがあります。それは、私が大学院生の頃、同学会に初めて参加させていただいた時のものです。この時のシンポジアムは、次のような顔ぶれと内容でした。

シンポジアム「モダニストとしてのスタインベック」
司会・講師:坪井清彦「『キャナリー・ロウ』」
講師:江草久司「『朝食』--スタインベックのモダニスティックな修辞的技法の実験的短編」
講師:杉山隆彦「『怒りのぶどう』の重要な側面」

今となっては、お三方とも鬼籍に入ってしまわれましたが、杉山先生のお若い頃の声を聞くことができます。
 杉山先生は、2016年1月11日にお亡くなりになりましたが、先生からいただいた今年の年賀状には、「上優二さんの著書が上梓されたらぜひ小生にもお知らせ下さいますよう。これからの協会は貴兄を中心に盛り上げて頂かなくてはなりません。よろしくご指導下さい」と書いていただいておりました。杉山先生のご期待に応えられるかについては、はなはだ心もとないところではありますが、先生からの「遺言」であると思い、微力ではありますが、本協会を盛り上げるために頑張ってゆきたいと思っております。
コメント
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