山内 圭のブログ(Kiyoshi Yamauchi's Blog)

英語教育、国際姉妹都市交流、ジョン・スタインベック、時事英語などの研究から趣味や日常の話題までいろいろと書き綴ります。

第171回直木賞受賞作予測(2024年7月)

2024-07-10 22:18:26 | 日本文学

第171回直木賞候補作5作が発表されました。

このところ、直木賞(と芥川賞)の受賞作の予測ごっこをしております。

今回も直木賞受賞作を予想します。

以下、読んだ順に短評を書きます。

 

青崎有吾(あおさきゆうご)著『地雷グリコ』KADOKAWA

最初の「地雷グリコ」は魅かれたが、途中からついて行くのが辛くなった。「宮本武蔵。遅れて登場した者が勝つ…」と巌流島の闘いの宮本武蔵のことが出てきておもしろい。僕の予想では直木賞の受賞はないと思う。

 

麻布競馬場著『令和元年の人生ゲーム』文藝春秋

 あまり印象に残らなかった。「僕たちは不安だった。少なくとも大学までは悪くなかった人生が、就活での失敗を機に下降の一途を辿ることが、不安で仕方なかった」(p. 183)は修学・キャリア支援センター長を務める身としては気になった。

 

一穂ミチ著『ツミデミック』光文社

 コロナ禍、コロナ後の社会描写にすぐれていてコロナ禍文学作品と呼べる、「さざなみドライブ」が特によかった。直木賞受賞予測

 印象に残った描写2つ

 最初こそ発作じみた喪失感と虚無感に襲われたが、すぐに「何であんなものに熱中してたんだろ?」と目が覚めた。手元に何も残らない、運営側の設定次第の架空世界で一喜一憂し、ログインボーナスや次から次に投入される期間限定イベント、あるいはコラボに血道を上げていた自分の愚かさを痛感し、以来、ゲームと名のつくものにはいっさい手を出さず、就職後は周囲から感心されるほどつつましく貯蓄に励んだ。(「ロマンス」p.48)

   『立ち別れ いなばの山の峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む』

 ようやく、ここが高校の教職員用駐車場だと気づく。片隅にぽつんと立っている松の木の中にはごくまれに三本松葉があり、それを見つけたらこの和歌とセットで木の根っこに置いて願を掛けると失くしたものが見つかる―というおまじないが伝わっていた。(「憐光」p.60)

 

岩井圭也著『われは熊楠』文藝春秋

 南方熊楠の人生一代記が描かれる。直木賞受賞予測

 印象に残った描写

「論文なんぞ関係ない。誰にも認められんで構わん。我の学問は、我だけが知っとればそれでええ」(p.138)

熊楠はくしゃみに関する俗信を思い起こしていた。江戸時代後期の風俗について記された『嬉遊笑覧』によれば、くしゃみはインドで不吉な兆候とされていたらしい。また、『トンガ諸島原住民についての報告』では遠出前のくしゃみは悪い予兆とされている。一方で清少納言の時代には、元旦のくしゃみは長寿を約束すると言われていた。結句、人の捉え方一つということである。(p.190)

 

柚木麻子著『あいにくあんためのめじゃない』新潮社

 残念ながらあまり印象に残らなかった、一穂ミチの方がうまいかな。

 

ということで、僕の今回の直木賞受賞予想作は、一穂ミチ著『ツミデミック』岩井圭也著『われは熊楠』の二作です。

このところ二作受賞が多いので今回もこの二作が受賞するのではないかと予測します。

一穂ミチの作品は、これまで『スモールワールズ』(2021)、『光のところにいてね』(2022)、『うたかたモザイク』(2023)を読んでいますが、ついに直木賞受賞なるか!

第170回直木賞の受賞予測記事と受賞作発表後の記事はこちらです。

 

第170回直木賞予測(2024年1月) - 山内 圭のブログ(Kiyoshi Yamauchi's Blog)

 

第170回直木賞予測的中(半分ですが…) - 山内 圭のブログ(Kiyoshi Yamauchi's Blog)

 


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