新見公立大学では、毎年教員が学生たちに推薦図書を示すようになっています。
2019年度に紹介した本は以下の書です。
『ソール・ベローともう一人の作家』(彩流社)
日本ソール・ベロー協会 編
ノーベル賞作家ソール・ベローと他の文学者との関りをテーマに編集された同書に、ソール・ベローとジョン・スタインベック―二人のノーベル賞作家の比較研究事始め」と題した文を寄稿しました(第3章)。二人の作家は、パスカル・コヴィチという共通の編集者が担当し、スタインベックが1962年にノーベル賞を受賞した際、ベローに「次は君だ」と予言したことなどの関りを述べています。他の論考も興味深いものです。
『ハツカネズミと人間』(Of Mice and Men)(新潮文庫他)
ジョン・スタインベック(John Steinbeck)
以前も推薦しましたが、ネズミ年ゆえ、再び紹介します。タイトルに「ハツカネズミ」が出てきますが、主人公はネズミではありません。知的障害を持つ社会的弱者と、彼と行動を共にする男を中心とした話です。100年ほど前のカリフォルニア州を舞台にしていますが、テーマが普遍的であり、現代にも通ずるものがあります。福祉・看護・保育を学ぶ皆さんに読んでいただきたい一冊です。映画化、舞台化も何度もされています。
『この日をつかめ』(Seize the Day)(新潮文庫)
ソール・ベロー(Saul Bellow)
若い頃、読んだ作品ですが、スタインベックとベローを比較研究する必要性から読み直してみました。人生何事もうまくいかないトミー・ウィルヘルムという中年男性の主人公の心の中や父親との関係が、ニューヨークのホテルを舞台にして描かれています。ベローの他の作品と同様、物語の中で何か大きな出来事が起こるわけではありませんが、主人公の心の内を丹念に描くというベローの特徴が現れている作品です。
『オリヴァー・トゥイスト』(Oliver Twist)(講談社文庫)
チャールズ:ディケンズ(Charles Dickens)
健康保育学科の立浪先生の研究発表を聞き、学会で知り合いの先生がこの作品についての研究発表をしたのを聞き、学生時代の英文学講読の授業で読んだこの本を再読しました。ディケンズの当時(1830年頃)の英国社会の描写は秀逸で、当時のロンドンの様子を知りたければ、ディケンズのこの作品と『ピックウィック・ペーパーズ』を読めばよいとも言われています。時代や社会は違えど、登場する人間たちが現代と同様なのも面白いです。
『杉並区長日記 地方自治の先駆者 新居格』(虹霓社)
新居格は、スタインベック研究者の間では『怒りの葡萄』(The Grapes of Wrath)を初めて日本語に訳した人物として有名ですが、本学の元学長である新居志郎先生の伯父様でもあります。昨年の日本ジョン・スタインベック学会で新居志郎先生に新居格氏について講演いただく際の準備として、この書を読んでみました。文学者であり思想家でもある新居格が、型破りな杉並区長として1年間務めた際の記録です。
『身辺動物記』(あすなろ書房)
小林清之介
昨年6月に亡くなった読書好きの父が、私が子どもの頃薦めてくれたうちのこの一冊を父の蔵書整理をしていて見つけました。再読するととても懐かしく、この書を読んで我が家の庭に鳥たちが来てくれるようにエサ台を作りご飯粒などを置き、スズメなどが来るのを観察したことなどの思い出がよみがえってきました。父のほうでは、自分が薦めた本によって息子が鳥の観察をするようになったことを観察していたんだろうと思います。
『労働法入門 新版』(岩波新書)
水町勇一郎
2019年度より本学のキャリア支援センター長に就任し、センター長として10月に労働法セミナーに参加する際、準備として読んだ書です。私自身、これまで法律分野の本はあまり読んできませんでしたが、労働法の考え方が歴史的背景や諸外国の考え方も含め、とてもわかりやすく説明されています。「新版」のため(2019年改訂出版)、最近の「働き方改革」を踏まえた内容もあり、今後、社会人になって働く皆さんにも一読をお薦めする書です。
『観光公害』(祥伝社新書)
佐滝剛弘
成美堂からJoan McConnell氏と共著で出版した英語教科書Changing Times, Changing Worlds(『やさしく読める社会事情』)の中でChapter 2の“Overtourism is a Problem”の章を執筆する際、参考に読んだ書です。著者佐滝氏の住む京都の「観光公害」をはじめ、私たちが執筆した教科書でも触れたイタリアのヴェネチアやクロアチアのドゥブロブニクなどの観光公害についても説明されています。SNSの発達とも大いに関係のあるこの新たな社会問題「観光公害」、皆さんも是非考えてみてください。
2019年度に紹介した本は以下の書です。
『ソール・ベローともう一人の作家』(彩流社)
日本ソール・ベロー協会 編
ノーベル賞作家ソール・ベローと他の文学者との関りをテーマに編集された同書に、ソール・ベローとジョン・スタインベック―二人のノーベル賞作家の比較研究事始め」と題した文を寄稿しました(第3章)。二人の作家は、パスカル・コヴィチという共通の編集者が担当し、スタインベックが1962年にノーベル賞を受賞した際、ベローに「次は君だ」と予言したことなどの関りを述べています。他の論考も興味深いものです。
『ハツカネズミと人間』(Of Mice and Men)(新潮文庫他)
ジョン・スタインベック(John Steinbeck)
以前も推薦しましたが、ネズミ年ゆえ、再び紹介します。タイトルに「ハツカネズミ」が出てきますが、主人公はネズミではありません。知的障害を持つ社会的弱者と、彼と行動を共にする男を中心とした話です。100年ほど前のカリフォルニア州を舞台にしていますが、テーマが普遍的であり、現代にも通ずるものがあります。福祉・看護・保育を学ぶ皆さんに読んでいただきたい一冊です。映画化、舞台化も何度もされています。
『この日をつかめ』(Seize the Day)(新潮文庫)
ソール・ベロー(Saul Bellow)
若い頃、読んだ作品ですが、スタインベックとベローを比較研究する必要性から読み直してみました。人生何事もうまくいかないトミー・ウィルヘルムという中年男性の主人公の心の中や父親との関係が、ニューヨークのホテルを舞台にして描かれています。ベローの他の作品と同様、物語の中で何か大きな出来事が起こるわけではありませんが、主人公の心の内を丹念に描くというベローの特徴が現れている作品です。
『オリヴァー・トゥイスト』(Oliver Twist)(講談社文庫)
チャールズ:ディケンズ(Charles Dickens)
健康保育学科の立浪先生の研究発表を聞き、学会で知り合いの先生がこの作品についての研究発表をしたのを聞き、学生時代の英文学講読の授業で読んだこの本を再読しました。ディケンズの当時(1830年頃)の英国社会の描写は秀逸で、当時のロンドンの様子を知りたければ、ディケンズのこの作品と『ピックウィック・ペーパーズ』を読めばよいとも言われています。時代や社会は違えど、登場する人間たちが現代と同様なのも面白いです。
『杉並区長日記 地方自治の先駆者 新居格』(虹霓社)
新居格は、スタインベック研究者の間では『怒りの葡萄』(The Grapes of Wrath)を初めて日本語に訳した人物として有名ですが、本学の元学長である新居志郎先生の伯父様でもあります。昨年の日本ジョン・スタインベック学会で新居志郎先生に新居格氏について講演いただく際の準備として、この書を読んでみました。文学者であり思想家でもある新居格が、型破りな杉並区長として1年間務めた際の記録です。
『身辺動物記』(あすなろ書房)
小林清之介
昨年6月に亡くなった読書好きの父が、私が子どもの頃薦めてくれたうちのこの一冊を父の蔵書整理をしていて見つけました。再読するととても懐かしく、この書を読んで我が家の庭に鳥たちが来てくれるようにエサ台を作りご飯粒などを置き、スズメなどが来るのを観察したことなどの思い出がよみがえってきました。父のほうでは、自分が薦めた本によって息子が鳥の観察をするようになったことを観察していたんだろうと思います。
『労働法入門 新版』(岩波新書)
水町勇一郎
2019年度より本学のキャリア支援センター長に就任し、センター長として10月に労働法セミナーに参加する際、準備として読んだ書です。私自身、これまで法律分野の本はあまり読んできませんでしたが、労働法の考え方が歴史的背景や諸外国の考え方も含め、とてもわかりやすく説明されています。「新版」のため(2019年改訂出版)、最近の「働き方改革」を踏まえた内容もあり、今後、社会人になって働く皆さんにも一読をお薦めする書です。
『観光公害』(祥伝社新書)
佐滝剛弘
成美堂からJoan McConnell氏と共著で出版した英語教科書Changing Times, Changing Worlds(『やさしく読める社会事情』)の中でChapter 2の“Overtourism is a Problem”の章を執筆する際、参考に読んだ書です。著者佐滝氏の住む京都の「観光公害」をはじめ、私たちが執筆した教科書でも触れたイタリアのヴェネチアやクロアチアのドゥブロブニクなどの観光公害についても説明されています。SNSの発達とも大いに関係のあるこの新たな社会問題「観光公害」、皆さんも是非考えてみてください。
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