土曜は仕事の後、一度帰って松竹座へ。
「車引」は特に見る気もしなかったので、
幕見で「伊勢音頭恋寝刃」の序幕・第2幕分を購入。
「油屋」「奥庭」は見ているが、
序幕を見るのは初めて。
2月に「毛谷村」を見たときは、通し狂言にすることで分かることが多かったので、
さて今回はどうか、と楽しみにしていた。
見終わった結果、
確かに刀や折紙の経緯、
お家騒動が背景にあることは分かったのだが、
いろいろ分かりづらいところもあり、
「毛谷村」の時ほど「通し」で良い、とは思えなかった。
序幕は刀と折紙の奪い合いと、
その背景にある伊勢名物の紹介がメインになってくるのかな。
第1場の「相の山」で「お杉・お玉」が出てきたり、
バックで流れる「伊勢津」を聞くと
「東の旅」を思い浮かべてしまうのは、まあ仕方がないか。
その後第2場から第5場まで、
奴と敵の侍との間でだんまりがあったり、
いろいろ隠れて見せたり、と
遊びとしては面白いが、筋が進む感じはしない。
あまり出ない幕なので洗練されていないのだろう、と感じた。
それは人物造型でも同じことで、
貢の作り方が第2幕の「辛抱立役」とはかなり異なるように思う。
そのあたりの一貫性のなさは、
通しで見るとちと違和感があった。
秀太郎の万次郎は、上方のトロンとした若旦那の雰囲気で悪くない。
ただ、いくらなんでもぼうっとし過ぎでは、と感じた。
刀を騙し取った人間を見過ごすあたりとか。
第2場の宿屋で我當・秀太郎・仁左衛門の3兄弟と
愛之助の奴が並ぶ場面は壮観。
我當、足が悪いのかな。少し歩くところや座り方が怪しかった。
声に陰影のない人で好きでもないのだが、
この程度の役なら特に違和感もなく見られた。
第5場の二見ヶ浦の場面は、
如何にも伊勢の話らしく作られている。
単純だが、まあ面白い。
第2幕はまず万次郎がやって来て出て行き、
その後貢がやってくる。
ここで上がらずに、
あっさり万次郎に会いに行けばいいのに、と個人的には思ったのだが、
それでは芝居にならんわな。
まあ、お紺に一目会いたい、という心があるのだろう。
仁左衛門の貢は声も良いし、
怒りを堪えるところで空気を作るのも流石なのだが、
個人的には、序幕とのギャップで少し感情移入し切れなかった。
やはり秀太郎の万野に満腹。
色街の手練手管に長けた年増の空気が出てくる。
声やじゃらじゃらした会話の間と強弱が流石。
団扇の動きで押したり引いたり、
自分の感情を出したり相手をかわしたりするあたり、
上手く表現されていると感じた。
料理人喜助は三津五郎なのだが、
この役、もう少し年上の役柄だと思う。
そのあたりに丁度良い役者がいないから
若い(仁左衛門より年下の)三津五郎に回ってきてしまうのかなあ。
まあ、左團次に出来る役ではなさそうだから
仕方ないのかも知れないが。
時蔵はあまり好きではないのだが、
この日はまあ、悪くなかった。
腹に持ちつつ愛想尽かしを言うところ、
程良いバランスと感じた。
貢が鞘ごと万野を打った後で鞘が割れるところがゾッとする。
ただこの辺りからは、「大丸屋騒動」の方が見る側の想像に委ねる分、
個人的には恐ろしく感じる。
刀が本人の意思とは関係なく人を切っていくあたりや、
踊りの輪に入って踊り子を切っていく場面など。
「奥庭」では踊り子そのものは切られないので、
そのあたりは少し消化不良。
あと、踊りはもう少し合わせて欲しい。
後で輪が乱れるところで落差が小さく、
「乱入された」恐怖があまり伝わらなかった。
全体に、序幕と第2幕の落差が気になった。
荒唐無稽な味を多く残した歌舞伎らしい幕と、
多くの人に手掛けられ、磨かれた幕とをつなげるのは
やはり難しいと思う。
「車引」は特に見る気もしなかったので、
幕見で「伊勢音頭恋寝刃」の序幕・第2幕分を購入。
「油屋」「奥庭」は見ているが、
序幕を見るのは初めて。
2月に「毛谷村」を見たときは、通し狂言にすることで分かることが多かったので、
さて今回はどうか、と楽しみにしていた。
見終わった結果、
確かに刀や折紙の経緯、
お家騒動が背景にあることは分かったのだが、
いろいろ分かりづらいところもあり、
「毛谷村」の時ほど「通し」で良い、とは思えなかった。
序幕は刀と折紙の奪い合いと、
その背景にある伊勢名物の紹介がメインになってくるのかな。
第1場の「相の山」で「お杉・お玉」が出てきたり、
バックで流れる「伊勢津」を聞くと
「東の旅」を思い浮かべてしまうのは、まあ仕方がないか。
その後第2場から第5場まで、
奴と敵の侍との間でだんまりがあったり、
いろいろ隠れて見せたり、と
遊びとしては面白いが、筋が進む感じはしない。
あまり出ない幕なので洗練されていないのだろう、と感じた。
それは人物造型でも同じことで、
貢の作り方が第2幕の「辛抱立役」とはかなり異なるように思う。
そのあたりの一貫性のなさは、
通しで見るとちと違和感があった。
秀太郎の万次郎は、上方のトロンとした若旦那の雰囲気で悪くない。
ただ、いくらなんでもぼうっとし過ぎでは、と感じた。
刀を騙し取った人間を見過ごすあたりとか。
第2場の宿屋で我當・秀太郎・仁左衛門の3兄弟と
愛之助の奴が並ぶ場面は壮観。
我當、足が悪いのかな。少し歩くところや座り方が怪しかった。
声に陰影のない人で好きでもないのだが、
この程度の役なら特に違和感もなく見られた。
第5場の二見ヶ浦の場面は、
如何にも伊勢の話らしく作られている。
単純だが、まあ面白い。
第2幕はまず万次郎がやって来て出て行き、
その後貢がやってくる。
ここで上がらずに、
あっさり万次郎に会いに行けばいいのに、と個人的には思ったのだが、
それでは芝居にならんわな。
まあ、お紺に一目会いたい、という心があるのだろう。
仁左衛門の貢は声も良いし、
怒りを堪えるところで空気を作るのも流石なのだが、
個人的には、序幕とのギャップで少し感情移入し切れなかった。
やはり秀太郎の万野に満腹。
色街の手練手管に長けた年増の空気が出てくる。
声やじゃらじゃらした会話の間と強弱が流石。
団扇の動きで押したり引いたり、
自分の感情を出したり相手をかわしたりするあたり、
上手く表現されていると感じた。
料理人喜助は三津五郎なのだが、
この役、もう少し年上の役柄だと思う。
そのあたりに丁度良い役者がいないから
若い(仁左衛門より年下の)三津五郎に回ってきてしまうのかなあ。
まあ、左團次に出来る役ではなさそうだから
仕方ないのかも知れないが。
時蔵はあまり好きではないのだが、
この日はまあ、悪くなかった。
腹に持ちつつ愛想尽かしを言うところ、
程良いバランスと感じた。
貢が鞘ごと万野を打った後で鞘が割れるところがゾッとする。
ただこの辺りからは、「大丸屋騒動」の方が見る側の想像に委ねる分、
個人的には恐ろしく感じる。
刀が本人の意思とは関係なく人を切っていくあたりや、
踊りの輪に入って踊り子を切っていく場面など。
「奥庭」では踊り子そのものは切られないので、
そのあたりは少し消化不良。
あと、踊りはもう少し合わせて欲しい。
後で輪が乱れるところで落差が小さく、
「乱入された」恐怖があまり伝わらなかった。
全体に、序幕と第2幕の落差が気になった。
荒唐無稽な味を多く残した歌舞伎らしい幕と、
多くの人に手掛けられ、磨かれた幕とをつなげるのは
やはり難しいと思う。