「日本で一番やさしい職場のストレスチェック制度の参考書」(石見忠士)読了。
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今年の12月から改正「労働安全委衛生法」が施行され、
一部の企業について「ストレスチェック制度」の導入が義務化される。
しかし正直、「マイナンバー」に比べて対象範囲が限られていることもあり、
実際にどこまでやらなければならないのか?といったあたりが
いま一つよく分からない、というのが私の感覚。
そんなこともあり、この本を購入してみた。
「日本で一番やさしい」とついているが、
確かに非常に分かりやすく整理されている良書だと思った。
まず第1章に「ストレスチェック制度のポイント」がまとめられている。
【ポイント1】総合的なメンタルヘルス対策の一環
ストレスチェック制度は、「産業医」・「衛生管理者」が選任され、
「衛生委員会」が活動している事業場で実施することが大前提にある。
※ストレスチェック制度の実施義務を課せられているのは「労働者50人以上の事業場」。
これは法律上、衛生管理者、産業医が選任されており、衛生委員会が設置されている「はず」。
(現実には選任・設置されていない事業場が多いと思われますが…。)
筆者は、毎月開催される「衛生委員会」を通じてPDCAサイクルを回しながら、
職場のメンタルヘルス対策の一環としてストレスチェックを実施していくことを
提案している。
【ポイント2】ストレスチェック制度の目的
ストレスチェック制度の目的は1次予防にあり、
うつ病等を診断するためのスクリーニングが目的ではない。
1次予防とは「ストレスチェック状況について気付きを促し、
個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させる」こと。
旧法案では「メンタルヘルスチェック」だったが、
今回は「高ストレス状況でないか」「メンタルヘルス不調に陥るリスク」を
調べる、というのが目的であることが明確になっている。
【ポイント3】ストレスチェック個人結果への事業者の関与
法律上の実施義務は事業者(=会社)にある。
ただし事業者は、個人結果に関する情報を、
労働者から「医師による面接指導」の申出があった場合しか把握することができない。
【ポイント4】ストレスチェック個人結果への産業保健スタッフの関与
産業保健スタッフは、事業者にはたらきかけて日常的な産業保健活動の中で、
労働者への相談対応を行いやすい体制を整備する。
【ポイント5】ストレスチェックの結果の記録と保存
ストレスチェック個人結果に関する保存義務は事業者にある。
【ポイント6】一般定期健康診断との違い
「ストレスチェック制度」は、「一般定期健康診断」と別物である。
※「ストレスチェック制度」は労働者に検査を受ける義務はない。
結果を労働者の同意なく事業者に通知することは禁止されている。
「一般定期健康診断」では労働者に受診義務がある。
結果を事業者は知らなければならない。
よって、ストレスチェック「調査票」と健康診断の「問診票」は、
別シートにするなど情報の切り分けが必要となる。
【ポイント7】長時間労働者への医師による面接指導との違い
ストレスチェック制度における「高ストレス者への医師による面接指導」は、
「長時間労働者への医師による面接指導」とは別物である。
※両者の違いは、面接指導前に事業者が対象労働者を把握しているか否か。
# 今回の制度のキモは、
「いかに労働者に事実を回答してもらい、メンタルヘルス不調の予防策を講じるか」にある。
労働者が「回答を人事上使われるかも知れない」と思ってしまうと、
事実をそのまま回答しなくなる恐れがある。
そのため、
事業者とストレスチェック「実施者(=産業医など)」との役割を明確に分け、
実施者から事業者への情報提供にかなり強い制約を設けている。
第2章では会社の状況別の全体図や、スケジュールなどで
概要を具体的に分かりやすく説明されている。
ここを見ると、自社が実際に「いつ」「何を」しなければならないのかが概観できる。
その後第3章でストレスチェック制度の内容が詳細に説明されるが、
第2章で予め概観が示されているので、詳細説明の位置付けや関係が理解しやすい。
第4章以降は補足的であり、必要な場合に読めば良い、という位置付けかも知れない。
個人的には興味深く読んだ。
「ストレスチェック制度」を聞いたことはあるが、
そもそも関係あるか関係ないか分からない、
何をすれば良いか分からない、という際に
入り口として非常に良い本だと思う。