朝寝-昼酒-夜遊

日々感じたことを思いのままに書き散らすのみ。
※毎週土曜更新を目標にしています。

五街道雲助師、人間国宝へ

2023年07月23日 08時21分57秒 | 落語・講談・お笑い
「この名が国宝でいいのか」 落語界4人目の人間国宝・五街道雲助:朝日新聞デジタル

雲助師が人間国宝に認定された。
落語界4人目、というのは5代目小さん、米朝、小三治の各師に続く、ということ。
前の3師に比べると、知名度はかなり低いだろう。

先代の(ブラック師風に言うと「本物の」)金原亭馬生師の弟子。
色々と理由はあったようだが、「金原亭」ではなく「五街道」という亭号と言うか家号と言うかを引っ張り出してきて、
自身の弟子も真打昇進時にはいろいろと変わった亭号になっている。

以下、私自身の経験。
□初めて聞いたのはけっこう早い。
ABCラジオ「土曜名人会」(上方落語がメインだが、恐らく東京から1人くらい呼んで公開収録していたのだと思う)で、
まだ高校生だったと思うから30年以上前か。
ネタは忘れた。
けっこうダミ声で、ごついおっさんなのだろう、という印象だった。
実際にはかなり小柄な人なので、声とのギャップがあった。

□その後はテレビで見た「つづら」の印象が強い。

□定席では(トリで見ていないせいでもあるが)あまり大したネタを聞いていない。
「ざるや」の印象が強いが、
上方落語に慣れた身としては「米揚げ笊」の方が面白いと思うのであまり楽しくない。
或いは「権助魚」など。
恐らく、ホールの人情噺やちょっと変わった落とし噺がこの人の強みだろう。

□珍しいネタだから、と照れたり、客に合わせてセリフや設定をいじったりしない人、というイメージ。
きちんとネタを深掘りし、きちんと伝える人なのだと思う。

□芸風は古風なのだが、
ホームページを始めたのは落語界でも早い方だと思う。
師のホームページはかなり情報が充実しており、よく読んでいた。

□自伝本があるらしいが、絶版になっているようだ。これを機に再販して欲しいところ。


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第910回田辺寄席(最終回)

2023年04月09日 17時11分01秒 | 落語・講談・お笑い
大阪最古の地域寄席、49年間の歴史に幕 「田辺寄席」3月で終了 _ 毎日新聞

学生時代から社会人になってしばらく、
「田辺寄席」は頻繁に通った落語会だった。
顔ぶれはそこそこ良く、非常に安価で、客席と高座が近い。

仕事が忙しくなり、まして「新型コロナウイルス感染症」などというライブ活動の阻害される状況になって、
落語会はご無沙汰してしまっていた。

ただ最終回というこのニュースを目にして、
久し振りに行ってみることにした。

整理券を受け取り、会場の周りや展示物を色々と見る。
ここで見たが、既に亡き3代目や松喬、松葉、吉朝、鶴志といった方の写真もある。


「開口0番」(文太):△+

久し振りに見たが、あまり老いを感じない。

田辺寄席に40年以上出演し続けている文太にとって、
「最終回」というのは思い入れがあるものでは、と思っていたのだが、
非常に淡々と喋っている。
「落語会というのは、始まりがあれば終わりもある」という感じ。
世話人の大久保さんが亡くなった時点で、ある程度諦めていたのかも知れない。

文太が言い出した(「開口一番」の前、という意味の)「開口0番」について少し喋り、
下座に出囃子を弾いてもらって舞台の上で笛を合わせて見せる。
「廓丹前」「船行」「野崎」など。
文枝(当然先代)が襲名前にNHKホールで撮った録音(「立ち切れ」じゃないかな)の
放映が襲名後になり、後から「廓丹前」で出たように合わせた話など。

笛や三味線は流石なのだが、下座の太鼓のリズム感が酷過ぎる。
このあたりの曲、聞いていないのだろうか?


「いのちのおうどん」(鞠輔):△-

女性。恐らく、見るのは初めて。
確か繁昌亭の落語教室の先生だった師匠に弟子入りした、という人じゃなかったかな。

ネタは全く分からない。メッセージ性はあるっぽいが。
子どもが二人出てくるのだが、まず、この二人の人物描写が全く出来ていない。違いが分からん。
二人の気や気持ちの変化が見えないし、上下や目線での位置関係といった技術的なものが皆無。
声が一本調子でハンデがあるのだから、何とかしてくれ。

プロなんだからきちんと勉強して欲しい。まず落語をきちんと見たら?
まあ、師匠選びが(略


「天王寺詣り」(文太):△+

淡々と会話し、進んでいく。
でも位置関係が明確できちんと風景が見え、登場人物それぞれの年齢やハラが分かるのだから、
これがプロというものでしょう。


「義士外伝 山岡覚兵衛の妻」(旭堂南華):△+

この人も聞くのは久しぶり。
以前聞いたときは細かいカミ・トチリが気になったのだが、
この日は特に気にならなかった。
講談の力強さと、女性らしい柔らかさがマッチした良い高座。


「愛宕山」(文太):○-

大阪と京都の違いのあたりは、濃く描かずに中で持たせている。
山登りも特にクサく演じる訳ではないが、ポイントポイントで疲れを入れたり、
姿勢を変化させることできっちりと伝わる。

この旦那が非常に良い。
小判を投げるところも挑発に押される感じではなく、
最初から計画的に(実際、そのつもりで持ってきている)投げている。
かわらけのように投げられるかどうか、色々試してみた挙句、普通に「行こうか」となる。
旦那の理屈や価値観が終始一貫している感じ。

そこに大阪の幇間2人が絡んでいく訳だが、
こちらも悪くはないが、華は弱い。
戻る場面など、もう少し動きを大きくしても良いかも。

戻って来た場面での旦那もあっさりと。
勿論、もっと濃く驚きの描写を入れた方が、下げの落差が大きくなって分かりやすいだろうが、
まあ、それをやらないのがこの人の持ち味ではある。


「抜け蟹」(文太):○

元は「抜け雀」だが、小田原から坂下宿(鈴鹿峠の下)に舞台を移している。
小田原なのに何故上方言葉?という疑問への対応になっている。
その他「雀」でなく「蟹」にすることに伴う様々な設定の変更、サゲも変わってくる。
サゲは「蟹」に伴うこのネタの方が、
「駕籠かき」の説明をしてしまいがちな「抜け雀」よりも良いのでは、と思う。

「養子」の繰り返しは文太の遊び。
これは好き嫌いがあるでしょう。

この人は、「天王寺詣り」や「愛宕山」よりも、こういった変わったネタの方が生き生きしているなあ…。


最後、大阪締めで終わり。
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上野鈴本演芸場七月上席昼の部(初日)

2022年07月07日 10時32分17秒 | 落語・講談・お笑い
用事があり、4,5年ぶりに東京にやって来た。

翌日も夕方にZoomの会議があるだけだったので、
そのまま泊まることにした。
どこか行こう、と検索していたら上野鈴本演芸場の顔ぶれが目に止まった。

鈴本に行くなんて、いつ以来だろう、と思って検索してみると、
2011年に旅行中に行っているのが最後。
上野鈴本演芸場9月中席夜の部 - 朝寝-昼酒-夜遊
というか、東西問わず落語会に行くのが久々。
コロナ前もしばらく行っていなかったから、これも3,4年ぶりにはなるんじゃないかな。

マスクやら飲酒・食事の禁止やら細かい注意が多く、
鬱陶しいと思いつつ、
何かあったらお上には勝てないから仕方ないか、と思いつつ。

「寿限無」(左ん坊):△

柳亭左龍(前名小太郎。喬太郎の弟弟子)の弟子らしい。
きっちり演っているけど、もう少し調子が軽い方が好み。
悪くはなく、好みの問題だが。


「黄金の大黒」(小もん):△

口上の件まで。
店賃のあたりのやり取りが長く、重く感じられる。
ここはもう少し適当に、パアパア言い合う方が良いと思う。

飲む場面までいかないのであれば、口上を上手く言えないところが重点になってくるだろうけど、
そこをもっとクドく、濃く演る方が、アクセントが付いて良いと思う。

全体にダラダラしてしまった印象。


「マジック」(松旭斎美智・美登):△+

非常に危なっかしい(タネが見えかけたり、出てきた紐を蹴って誤魔化したり)のだが、
それがどこまで地で、どこからが演技なのか分からないあたりが
面白いマジック。


「権助魚」(小平太):△+

この人も喬太郎の弟弟子(前名さん若)。
にこやかな人で好感が持てる。
田舎者は最初キツ目で「田舎者」ということを見せておき、
後はそこまでキツくしない。
単なる人物描写でなく、こういった全体の重みづけが重要だと改めて感じる。

まあ、無理ネタっちゃ無理ネタ(かまぼこが泳いでいないのは分かるだろ)、とも思うが、
おかみさんをいじっている、という解釈もあり得るのかな。


「漫談」(馬風):○-

出番表に入っていたのだが、元々好きな人でもなかったので、意識していなかった。
足が悪いのか、ヨロヨロと出てくる。安易に板付にしないのは好感が持てる。

話は、まあ、談志の選挙噺などでよく聞く話ではあるのだが、
改めて聞くとやはり面白いな。噺家の毒を感じさせるし、寄席が盛り上がる。
お体に気を付けて長生きして欲しい。


「音楽」(のだゆき):△+

ピアニカを付けて出てくる。
小さなハーモニカ、ピアニカでの様々な演奏など。
良い色替わり。


「湯屋番」(柳枝):○-

正朝の弟子なんやね。もしかしたら見たことがあるかも、というレベル。

この人もにこやかで、この軽いネタによく合っていたと思う。
パアパアした雰囲気がよく出ていた。
「こぎ飯」のあたりの説明が非常に丁寧。

「かぼちゃ屋」(市馬):○+

登場人物に誰も悪気がなく、にこやかで、見ていて嬉しくなる高座。
与太郎に対する目も暖かい。

「上を見る」が(与太郎同様)伝わりにくくなっていることもあり、
丁寧に繰り返し仕込んでいた。
「くどい」と感じる向きもあると思うが、個人的にはその方が良いと思う。

与太郎は「抜けている」というより、「仕事をしていない、世間知らず」の色が強く、
そのあたりにいそうな感じ。


「漫才」(ロケット団):○

久し振りに見た。

三浦のボケは相変わらずなのだが、うーん、ちょっと不足感あり。
最後の方が「定例集会」ばっかりだったので、その刺激が基準になってしまっているのかも知れない。

倉本のツッコミが、非常に場数を多く踏んでいる感じが見受けられて良かった。
緩急などのバラエティがかなり増えている印象。


「臆病源兵衛」(さん花):△+

これも喬太郎の弟弟子。
マクラからにこやかで良いのだが、まあ、問題はネタ。
非常に珍しいこのネタを手掛ける心意気は素晴らしいと思うが、
如何せん、ネタが難し過ぎる。

臆病だが助平、という源兵衛の人物設定やそれを脅かそう、というのは面白いのだが、
その後がグダグダになっていくネタ、という印象。
最後の「地獄か、極楽か」といった部分だけでも切り離し、
別のサゲに持って行った方が良いのでは?


 仲入

「紙切り」(二楽):○

久し振りに見たが、やはり素晴らしい。
微妙に毒舌のあるところも良い。


「目薬」(文藏):△+

無筆の小噺などから、このネタに入る。
うーん、そんなに時間を掛ける程の話ではないと思う。
「お金がなくて、芋ばかりを食べている」繰り返しが多く、
まあ、これが「屁」に繋がっていく訳なのだが、
別にその設定はなくても良いのでは、と思う。
偶々屁がしたくなって、粉薬が飛んで、というだけの設定で良いのではなかろうか。


「猫の茶碗」(三三):○-

おさまり返っているところが、あまり好感の持てないところ。
上手いとは思うけど。

あと、喋るときに口が歪むのは、あまり良いクセではないと思う。
早めに直した方がいいと思うが。


「ジャグリング」(ストレート松浦):○-

今日は無言でやってみる、とのこと。
楽しくカラフルにやっている。
良い膝がわり。


「品川心中」(喬太郎):○

いつも通り、客を上げたり下げたりするマクラで快い。
ネタはきっちり演りつつ、ところどころに入れ事をする。
心中相手をお染が探すところで、噺家や二楽の近況も入れていく。
聞いてると、文藏と心中したら良いのでは、と思ってしまうのが
今日のメンバーの問題点(笑)

お染の描写で、ところどころ「現代的な女性」の表情付けや感覚を出していたのだが、
個人的にはそこが浮いて感じられた。
変化球を投げている、という感じが見えてしまう。
それならば、全ての場面を「現代的な女性」としてのお染で演ってみたらどうか、と
思うのだが(ネタとしてまとまらなさそうだが)。

心中の場面、上がる場面、元の長屋の場面などは克明で流石。

噛むところが少しあり、ややお疲れ気味かも知れない。

寄席全体としては、非常に満足。
早くマスクを外して、場内で飲食ができる日が来ますように。

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川柳川柳師の死と「ガーコン」について。

2021年12月31日 08時45分34秒 | 落語・講談・お笑い
落語家の川柳川柳さん死去:時事ドットコム

今年亡くなった噺家は何人かいるが、
その内の一人が「川柳川柳」師。
関西にはほぼ来ない方だった。

「川柳川柳」という名前を初めて知ったのは、恐らく高校時代。
何かの本で触れたのがきっかけだったと思う。
私自身は上方の人間であり、東京まで生の落語会に行く習慣はなかったし、
師はラジオにもあまり出演していなかったので、
実際に高座を聞いたのはテープか何かで、大学に入ってからだった。
入り口は当然のように「ガーコン」。

川柳師の少年時代から戦後までの経験や世相を語りながら、
当時の流行歌を歌いまくる。
「歌は世につれ」と書かれていることも多かったようだが、
普通のくくりで言えば「漫談」になるだろう。

東京に転勤になって、初めて生で見た。確か神楽坂。
(喬太郎師を生で初めて見たのもこの時。「白日の約束」で、これも強烈だった。)
「大ガーコン」+ラ・マラゲーニャだと思う。
その後、定席や「終戦記念寄席」等々、そこそこの回数見ているが、
殆ど(…全て?)「ガーコン」だったように思う。
もちろん「ジャズ息子」や様々な艶笑譚も素晴らしいのだが、
生ではお目にかからなかった。

常に「ガーコン」でも、寄席の中では爆笑を呼ぶ、名物だったと言えよう。
「漫談」ではあるのだが、
まずはよく通る声、美しい歌声、そして毒舌、
体験に裏打ちされた説得力、
実は基本となる確かな技術と客席の空気を読む力と、
そういったものが相俟った異色作だと思う。

こういったネタは継承されず、その人限りのものなのだが、
「歌は世につれ」等とネタ帳に書かれていたこのネタに「ガーコン」と名付けたと云う亡き右朝師や、
現小せん師が今でも演じていると云う。
右朝師は「お取次ぎ」と言って演じていた。
小せん師がどのようなスタンスで演じているか、一度聞いてみたい。
# 右朝師の「私小説、芥川狙い」というのがこのネタの本質だと思うので、
 「中沢家」同様、他の噺家が演じるのは難しいのでは、というのが
 私の率直な感想。

川柳師の自伝も面白いので、お勧め。
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酒乱だった川柳師の安らかなお眠りを祈って。
美空ひばり 530527 『賛美歌405番 神ともにいまして』 ひばりの陽気な天使


アーメン。
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柳家小三治師死去

2021年10月17日 07時51分25秒 | 落語・講談・お笑い
柳家小三治さんが死去 人間国宝、江戸の古典落語継承する本格派:朝日新聞デジタル

柳家小三治師が亡くなった。81歳。
数日前まで高座を務め、その後の高座も予定されていたと云うから
現役のままの突然の死、と言えるだろう。

以下、つれづれに。

「小三治」は「小さん次」である。初代小三治が3代目(柳家としては初代になる)小さんを襲名している。
周囲は「小さん」の名を継いで欲しい、と思っていたものと思われるが、
こういった予定調和を嫌がり、面倒くさいと言ってしまうであろうこの人らしく、
襲名を避け続けた挙句、
師匠の不出来な息子に名跡を押し付けることに成功した、と思っている。
# 「芸のない実子による襲名」なんて、小三治の嫌がりそうなことなんだけど、
 自分が小さんにならないためにOKした、というところなのかな。

初めて見たのは「赤旗まつり」かなあ。
私自身が基本的に上方の人間なので、生で見たのは2,3回程度だと思う。

私が落語を聞き出した当時、
小三治師の落語は「きっちりしている」「ネタの良さをきちんと伝える」という印象だった。
変にアドリブをぐちゃぐちゃ入れる圓蔵のような人より、こういう高座の方が好きだったので、
特に追いかけた訳ではないが、好感を持って聞いていた。
そのあたり、骨格がしっかりしているので、
徐々に「落語に遊ぶ」境地に至ったのでは、と思う。

説明過多にせず想像に委ねる範囲が広いところも、好みであった。

高座はある種「古風」だが、実際には多趣味で当時の噺家の常識から離れていた人、というあたりのギャップが面白い。
そのあたりの結節点として、独特の「まくら」に繋がってきたのだと思う。

「落語家論」という本がある。
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元は、「民族芸能」等に掲載されたコラム。
けっこう、「落語」「噺家」についての伝統的な「マナー」を語りつつ、
自分の趣味嗜好の話もあり、
小三治師の人となりがダイレクトに見えて面白い。

そういや、私が最後に映画館でちゃんと見た映画って、
東中野で見た「小三治」かも知れない。10年以上前か。

晩年はほとんど聞いていないのでそれ以前になるが、
テープや放送などで印象に残っているネタを振り返ってみる。
 小言念仏
 あくび指南
 ちはやふる
 馬の田楽
 品川心中
 うなぎの幇間
 青菜
 やかんなめ
 二番煎じ
 禁酒番屋
 茶の湯
 かんしゃく
 初天神
そんなところかなあ。

合掌。

# これ、改めて気になっている。
 1枚2000円を切る、と考えると高くはないのだが…。

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笑福亭仁鶴師死去

2021年08月21日 07時34分40秒 | 落語・講談・お笑い
落語家 笑福亭仁鶴さん死去 84歳 テレビ ラジオでも幅広く活躍 _ おくやみ _ NHKニュース

仁鶴師が亡くなった。84歳と云う。

生で見たのは3,4回かな。内1回はNGKだった。
私が落語を見始めたのはだいたい高校・大学くらいで、
その頃の仁鶴師はもう「爆笑派」ではなかった。
どちらかと言えばスローペースであり、とぼけた雰囲気が前面に出ていた。
それはそれで、得難いものではあったのだが。
ただ、今考えると、当時、師は60歳前後。
現在の60歳前後の諸師に比べると、かなり長老然としていた。

(10年から20年)上の人などは「このネタは仁鶴師が一番面白い!」と言っていたが、
私がリアルタイムで見た印象では、決してそうではない、ということがしばしばあった。

今になって、往時(1960年代後半から1970年代)の録音を聞くと、速射砲のようなスピード、リズム、テンポ、声のトーン、
理屈でなく面白いと感じる。

笑福亭仁鶴 貧乏花見


笑福亭仁鶴 初天神 昭和46年1月31日


もう少し、追いかけても良かったかな、という気がしている。
合掌。

# あと、「7代目松鶴」襲名を巡るゴタゴタは、仁鶴師の責任でもあるわな。
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「神田松之丞 講談入門」書感

2018年09月28日 10時05分30秒 | 落語・講談・お笑い
「神田松之丞 講談入門」(神田松之丞)読了。
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落語の入門書、解説書はそこそこある
(あり過ぎて、記載されている内容に矛盾もあったりして、困ることすらある)のだが、
講談の入門書、解説書というのは殆どないように思う。
筆者も「まえがき」でそのあたりに触れている。

この本は
1.講談の基本
2.ネタ解説
3.松之丞と一龍斎貞水の対談
4.松之丞が語る、過去・現在・未来
という構成になっている。
1,2は一般的な話ではあるが、
それも「松之丞に聞く」や「松之丞の持ちネタ」ということで書かれている。
「松之丞人気」に当て込んでいる面もあるかも知れないが、
一般的な解説よりも「自分はこう考えている」という(別に偏っているとは思わない)
具体的な記述になっており、良いと思う。

私自身、講談を見ている方だとは思うが、それでも知らないことはけっこうあった。
例えば「釈台は自分で作る」とか。

講談を見たことがある人は読んで損のない本だと思う。

# 対談やネタ解説等で講釈師の名前がけっこう出てくるので、
 「系図」のようなものを付けておいてくれると助かる、と感じた。
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第40回ひがしむき寄席

2017年06月03日 15時46分25秒 | 落語・講談・お笑い


先々週の日曜は、久し振りに落語会に行ってきた。
半年ぶりくらいか。
近くの教会での出丸師の会。
入場料が上がってきている今日、1,200円の落語会はリーズナブルと思う。

「まんじゅうこわい」(小鯛):△+

マクラは地方の落語会で苦労した話。
面白いけど、何となく地方の余興でやるようなマクラやな。
ネタの長さやサゲはこんな台詞です、といったところを最初に言うのは
邪道だし、この人はそんなことせんでもいいのに、と思う。

ネタは、まあまあ丁寧にやっている。
好きなもの、怖いもの嫌いなもの、
怪談も一通りやってサゲまで。
このネタ、「嫌いなもの」を言っている内に
いつの間にか「怖いもの」の話に移っていく訳なんだが、
そのあたりがどうもしっくり来ない。
若い連中が集まってのワチャワチャなのだが、
1対1がそれぞれ続いている感じで、
連中が集まっている雰囲気が弱いためかも。

みっちゃんのちょっと浮いた(嫌みな)感じも
もう少し出て欲しいかな。


「花筏」(出丸):△+

マクラは「八百長」を巡る話。
積極的に勝ちにいくよりも「落ちないための互助組合」というのは
なるほどねえ。

ネタに入ると、相変わらず若々しい。
たぶん出丸の「花筏」って20年位前に見ていると思うけど、
良くも悪くもあまり変わらない所が凄い。
相変わらず親方や網元も重々しくなく、
提灯屋は軽くて良い。もう少し重量感は欲しい。

今まで気になっていなかったのだが、
勧進元の一人である千鳥ヶ浜の父親は、
千鳥ヶ浜が花筏と当たるのを取組が決まった段階で知っているのではなかろうか。
まあ逆に、「腹は既に立てており、喜んだ千鳥ヶ浜に改めて叱る」みたいな
設定もあり得るかも。

千鳥ヶ浜がまわしを締めている話を仕込んでいないが、
まあ、なくても良いかな。

サゲまできっちりと進めていた印象。
「徳さんが焦るところ」「それを受けて千鳥ヶ浜が焦るところ」は
もう少し緊張感が欲しいけど、
サゲでウケていたので緊張感は充分伝えられていたのかも知れない。


「蛇含草」(文之助):○-

政治ネタなどを軽くマクラで。
強くメッセージを込めず「いじる」程度の辺りが流石。

ネタは全体にあまり暑苦しくなく、さっぱりしていた。
言うべき科白(砂糖のアンペラなど)はきちんと言っている。
ただ個人的には、喋り方や当事者の空気感など、
もっと暑苦しい方がこのネタの真夏の雰囲気に合うような気がする。
その方がこの家の「涼しいもの尽くし」も効いてくるだろうし。

最初に男が扇子で仰ぎながら入ってくるのだが、
袖口のところを摘まんで風を送り込んでいると、
「甚平1枚」と合わない気がする。
もっとダイレクトに体を仰いだ方が良いように思う。

餅を食べる場面、
そもそもクソ暑い中で火を起こして餅を食べる、
というのが矢鱈暑苦しい設定なのだが、
そこが然程暑く感じられない。
季節的にもまだそこまで暑くないからリアルにならないせいかも知れない。

餅が体に詰まるところはリアルで良かった。
「鼻の穴や耳の穴から」の「穴」はない方が自然かも。
詰まっていると言葉数が減るだろうし、「穴」言わなくも伝わるし。

サゲは言葉で。
個人的には仕草で落とすのが好きなのだが、
彼の芸風ならばさらっと言葉で伝えた方が良いかも知れない。
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松之助本、梅之助本

2016年11月06日 14時39分34秒 | 落語・講談・お笑い
仕事関連の本を読まにゃならんのだが、
どうもそれ以外の本ばかり読んでいる。

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「人生のこと」「芸のこと」「日々のこと」の三章立て。
日々酒を欠かなかった師だが、
酒を断ち、様々な仏教関連の本や僧の言葉に触れた体験が
芸や芸人、他の落語家に対する見方に反映されているように感じる。

勿論難しい話だけでなく、
子ども時代や入門後、
師匠や4代目米團治没後の演芸会社を移っていく際の体験などが描かれていて興味深い。
もしかすると、他で語られていることもあるのかも知れないが、
上方落語界最長老として、さらには上方演芸界全体でもほぼ最長老に当たる師の目から見た
当時の演芸界やその裏側に関する話がいろいろ描かれている。

「芸のこと」は落語界に関する話や「笑い」に関する分析的な話、
「日々のこと」はエッセイ風に。
ただそこには、タイトルの「草や木のように生きられたら」に通じる、
「自分の意思で生きているのではなく、生かせてもらっている」感覚がベースにある。


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父翫右衛門が創立した「前進座」に所属し、
結局昨年に亡くなるまで一貫して「前進座」の看板役者であった筆者の思い出話。
特に生まれた頃や戦中・戦後、長十郎の追放といったあたりの話が興味深い。

全体に「この年にこんな演目をやった」といった話が多く、若干、しんどい。
また子である梅雀退座の辺りの話については、
本当はもっと書くべきことがあるのだろうが秘められていることもあるのだろう、という印象。
史料的価値はあると思うけど、
読んでいてあまり面白くはない、というのが個人的な感想。
梅之助という役者の価値観や演劇観はあまり書かれていないので、
その辺りが知りたければ他の本を読んだ方が良いのだろう。
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喜多八師死去

2016年05月21日 10時04分13秒 | 落語・講談・お笑い
落語家の柳家喜多八さん死去:朝日新聞デジタル

柳家喜多八が亡くなった。
66歳は決して若いという程ではないが、
入門が遅かった(当時26、7歳?)のでキャリアとしては
まだまだこれからも、という印象でもある。

2003年夏から2009年夏まで東京に住んでいたのだが、
その間、よく見た噺家の一人が喜多八だった。
定席で見たり、
黒門町の落語協会の2階でやっていた「稽古風景」に通ったり(今、あのキャパでは無理だろう)、
「落語教育委員会」のコント(よく女装をしていた)を見たりしていた。

2005年の夏以降しか記録していないのだが、
それでも以下のような落語を見ている。
・もぐら泥       (落語教育委員会 2005/07/03(金))
・宿屋の仇討      (三平堂落語会 2006/05/20(土))
・鈴ヶ森        (落語教育委員会 2006/11/11(土))
・五人廻し・やかんなめ (ざま昼席落語会 2007/01/13(土))
・宮戸川        (落語教育委員会 2007/10/28(日))
・ラブレター・鶴屋善兵衛(ざま昼席落語会 2008/01/12(土))
・盃の殿様・猫の災難  (ざま昼席落語会 2009/01/11(日)) 
・千早ふる       (池袋演芸場昼の部 2009/8/7(金))

元々上方落語をメインで聞いてきた私にとって、
喜多八の落語は「ちょうど良かった」。
近年の落語は誰にでも分かりやすいよう説明過多になっていると思うのだが、
正直、それが「うざったい」と感じるケースも多い。
そこまで説明せんでも、そこは聞き手の想像や広がりに任せれば良いだろう、
説明することで芸としては「手抜き」になっているのでは、というところ。
それに対して喜多八は柳家らしく説明過多にはならず、
しかし微妙にセリフや表現を追加することで想像しやすく誘導してくれるところがあった。
そのあたりがちょうど私の好みであった。

やる気のなさそうな出からダラっと話し始めるのだが
実際にやる気がない訳ではない。
筋を進める際の低めの声そのもの、科白を張ったときとの高低差、表情など、
様々なところが個人的な好みに合ったのが
比較的よく見に行っていた理由なのだろうな。

最近あまり見る機会がなかったのが残念。

合掌。

# 落語ファンで喜多八が好きな人はけっこう多いと思うのだが、
 DVDはあまり出ていないみたいだなあ。
 これも残念な話。
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