◆本と歩こう(49)◆
こんにちは。市民レポーターの 杉浦玲子 (すぎうら れいこ)です。今回は6月28日(水)に南公民館で行われた、『短歌の基本を学ぶ入門講座』のご報告です♪講師は、三枝浩樹(本名 三枝 亨)さん。甲府市生まれ、甲斐市在住の歌人です。
★講師プロフィール★
山梨県歌人協会会長。「沃野」編集発行人。
河野裕子氏、永田和弘氏、小池光氏、道浦母都子氏らと共に、団塊世代を代表する歌人の一人。
父・清浩(本名:福武)氏は植松寿樹門下の歌人。五人兄弟の五男。歌人で文芸評論家の三枝昴之氏は四兄。高校時代、歌誌「沃野」にて植松寿樹に学ぶ。法政大学文学部英文学科入学後、法政短歌会を結成、同人誌「風車」を創刊。著書は「第一歌集:朝の歌(1975年)ほか。短歌研究賞(2016年)、若山牧水賞(2017年)、迢空賞(2018年)を受賞。(当日資料より抜粋)
まず前半は、三枝先生のテキスト掲載の、小学生から現代歌人までの様々なジャンルの短歌にふれて、それぞれの作品の見どころを学びました。「こころにひびく歌との出会い」で、参加者のみなさんの感性に短歌スイッチが入った感じです。
短歌のポイント
◆定型(5・7・5・7・7の拍数)を味方にしましょう。詩歌はリズムが大事。
◆定型は不自由でなく、むしろ自由です。
◆こころに生じた感のさざなみ、小感とか実感を心のノートにスケッチする。
他にも、「好きな短歌のリズムや情感を丸ごと覚える」「多くの歌に親しむ」「ボキャブラリーを増やす」「一句でも二句でも、自分の見本・目標になるような歌を持っておく」など、短歌の上達のコツを教えていただきました。
休憩をはさんで、いよいよ後半は短歌づくりに挑戦です。三枝先生即興の上の句に、参加者がそれぞれ下の句を詠んでみました。
一つ目の上の句「エアコンが今日は使えず窓あける」に対し、「緑の風がテキスト飛ばす」「一筋の線描(か)きツバメ飛ぶ」「暑い日が射す目に痛いほど」などの下の句が詠まれました。(この日、南公民館はエアコンの工事中でした)
二つ目の上の句「金鳥の蚊取り線香に火をつけて」には、「夜空眺めて亡き人探す」「花火のにおいと孫の言いたり」「広告思う美空ひばりを」といった下の句が詠まれました。詠んだ方の背景が伝わってくるような、どれもすてきな歌ですね❣
最後に三枝先生は、「身近なもので、目の前のものを引き出して、自分の思いを添える。どんなものでも呼び水にして、歌を詠む素材にして詠んでみてください」と締めくくられました。
三枝先生からのおまけです。好きな短歌を探すには、山梨県立文学館の資料室がおすすめだそうです。「歌集や短歌雑誌など、これだけ揃っているところは全国的にも珍しいですよ」とのこと。興味のある方は、ぜひ足を運んでみてくださいね♪
★本と歩こう(49)★
『歌集 黄昏(クレプスキュール)』
三枝浩樹著
現代短歌社発行
三本木書院発売
初版:2020.7.30
※著者・出版社の許諾を得て書影を使用しています
「~ゆっくりと暮れてゆく町や遠やまなみや木々のたたずまい。そんな灯ともし頃が昔から好きだった。」(あとがきより)
今回は、講師・三枝浩樹さんの歌集から選書しました。タイトルの『黄昏(クレプスキュール)』には、そんな思いが込められています。
「綻びを秘めてふたたび歩きだす 繕うことも今はかなわず」(「深呼吸」より)
三枝浩樹さんの短歌には、思索的な印象があります。日常に埋もれてしまいがちなささやかな感情を、静かに受けとめて、共感を呼ぶかたちに表現しているように思います。みなさんも、こころにひびく歌を探してみてください。
―取材へのご協力、ありがとうございました―