瀬戸際の暇人

今年も偶に更新します(汗)

08年、クリスマスには歌を歌おう♪その7

2008年12月21日 17時02分19秒 | クリスマス
はぁい♪ミス・メリーよ♪
今日は冬至、1年で1番夜が長い日ね。
言うなれば1年の「底」…景気でも何でも、これより下が無いと思えば、気分がちょっぴり楽にならない?

今だけ電気の無い昔に、気持ちをタイムスリップさせてみて。
貴方は雪深い北国の一軒家に、独りきりで暮らして居るの。
吹雪の音が家を押し潰さんばかりに轟々と鳴っている。
圧迫感に苛まれながら、夜が明けるのを待つのは、どんなに辛かったでしょうね。

暗く長い夜を越えるのに、人が出来る事なんて知れてるわ。
闇に対抗出来るくらい明るく火を燃やして、吹雪の音に負けないくらい賑やかな音を立てて、物理的な暗さを精神的な明るさで吹き飛ばす。
1年で1番陰気な日だからこそ、1年で1番陽気な日にしたの。

光の無い闇の中でも、人の目には色んな物が見えたわ。
魔女に死霊に悪鬼に堕ちた神々…それらが吹雪を操って、天駆ける様を想像したの。
「ワイルドハント」と言って、日本の百鬼夜行に似てるかしら。
化物達を率いるのは古ゲルマンの主神オーディンで、サンタクロースがそりで空を飛ぶイメージは、此処から来たとする説が在るのよ。

夜が1番長いクリスマスの頃は、闇を好む(と考えられた)化物達にとって絶好の時期。
彼らは白い雪に身を潜め、超自然的な力で人に災いをもたらすと信じられたの。
恐ろしい存在だけど、昔の人はその力を敬いもしたわ。
キリスト教が伝わる前まで、一方で彼らは自然を司る神として、土地の人間に信仰されていたの。

ゲルマンの伝説に「ペルヒタ」と言う夜の魔女が居て、ドイツ南部やオーストリアでは今でもそれに関する行事がクリスマスの頃に行われるそうよ。
ペルヒタの格好をして町を練り歩き、冬を追放するという物だけど、現在ではブットマンドル同様、聖ニコラウス行列のお供に組み込まれてたりするみたい。
その姿は真っ赤な目と捩れた鼻と大きな口を持った醜い老婆で表されるけど、元は古ゲルマンの女神で美しい姿をしていたと云うわ。

ドイツの伝承話にも「ペルヒタ」に似た存在が出て来て、やはりクリスマスの頃に現れると云われているの。
「ホッレ小母さん」と呼ばれていて、数多い話が残されているから、その中で幾つか紹介するわね。


ホッレ小母はヘッセン州マイスナー山辺りの池の底に棲んでると伝わっている。
小母は池の底に花や果物や菓子を貯え、類い稀な庭園に色んな物を生らせて居るが、気に入った人間に出会うとそれを領け与える。
小母はまた几帳面な性格で、家の中がきちんと整っていないと気が済まない。
人の世に雪が降るのは、ホッレ小母が布団を叩いていて、その綿屑が空中を舞っているのである。
小母は年に1度国中を歩き廻って田畑に実りの力を授ける。


降誕祭(クリスマス)の夜にホッラ小母が巡回を始めると、娘達は新しい糸巻棒に亜麻か粗麻をいっぱいに巻き付けてこれを夜中立てておく。
ホッラ小母はこれを見ると喜んでこう言う。

糸の数だけ、良い年積もれ

小母はこの様な巡回を大正月、即ち公現祭(1/6)迄続けると、再びホルゼルベルクの住処へ帰って行く。
この時に亜麻が糸巻棒に巻かれたままになっている所を見付けると小母は腹を立ててこう言う。

糸の数だけ、悪い年積もれ

それで娘達は皆1日の仕事が終ると、紡いでない亜麻を竿から綺麗に取り除いて、その身に災いが降りかからないようにする。
更に良い方法は巻いた亜麻を仕事終い迄に全部紡いでしまう事である。


テューリンゲンにシュヴァルツァと言う村が在る。
或る降誕祭の折に此処をホッラ小母が通り過ぎた。
その行列の先払いの群の中には忠実なエッカルトが居て、人に出会う毎に「痛い目に遭いたくなければ道を空けよ」と先触れした。
さて農夫の子供が2人酒屋にビールを取りに来て家に帰ろうとしていると、丁度ホッラ小母の行列がやって来た。
妖霊達が道いっぱいに広がって進んで来たので、2人の男の子は瓶を後生大事に抱えて脇へ避けた。
暫くすると行列の中から様々な女が寄って来て、子供の手から瓶を取上げて中身を呑んだ。
恐ろしさの余り2人は声も出なかった。
しかし空の瓶を持って家に帰ったらどんな目に遭うか知れたものではない。
するとそこへ忠実なエッカルトが寄って来てこう言った。

「お前達、一言も喋らなかったのは勿怪の幸いであった。もし喋っていたら首が後ろ向きになる所だった。さあ急いで家に帰るんだ。もしこの事を誰にも話さなかったら、その瓶にビールが絶える事は無かろう」

子供達は言付けを守った。
すると瓶は決して空にはならなかった。
しかしそれも3日の間だけの事、4日目にはどうにも隠して居られなくなって、2人は両親に一切を話した。
するとそれでお終い、瓶の底は干上がってしまった。


グリム童話にも「ホレのおばさん」というタイトルで、この伝承話を基にした話が載っているわ。
「森は生きている」と言うロシアの児童文学を知ってる方は多いでしょうけど、それと殆ど似た筋の話よ。

オーディンにペルヒタにホッレ小母…北国にとって彼女らは恐ろしい死(冬)の象徴、けれど光の復活(春)を告げる神でもある。
陰と陽、死と再生…この二面性がクリスマスを解く鍵よ。

といった所で7曲目のクリスマスソングを紹介するわね。
アイザック・ワッツが作詞し、ローウェル・メーソンが作曲した、クリスマスキャロルの決定版よ。

曲を聴きながら、今日はこれでお終い。
それじゃあ皆、次回も楽しく歌いましょうね♪




                 【諸人、こぞりて】



諸人 挙りて♪

迎え奉れ♪

久しく♪

待ちにし♪

主は来ませり♪

主は来ませり♪

主は♪

主は♪

来ませり♪


悪魔の 一夜を♪

打ち砕きて♪

虜を♪

放つ者♪

主は来ませり♪

主は来ませり♪

主は♪

主は♪

来ませり♪


此の世の 闇路を♪

照らし給う♪

妙なる♪

光の♪

主は来ませり♪

主は来ませり♪

主は♪

主は♪

来ませり♪


【英詞】

Joy to the world♪ the Lord is come♪

Let earth♪ receive♪ her King♪

Let every heart♪ prepare Him room♪

And heaven and nature sing♪

And heaven and nature sing♪

And heaven♪ and heaven♪ and nature sing♪



…日本じゃ正月が別に在るんで、12/25になったらお開きにしちゃいますが、ヨーロッパのクリスマスは正月も含めており、1/6迄やってるのが普通です。
とは言え最近の大都市圏では日本同様、12/25で打ち切っちゃうのも珍しくないとか…長くて12/26位迄?
明るく忙しく人口も娯楽も増えた世の中じゃ、何時までも1つの行事に関ってる訳にはいかんのでしょう。
寒さ厳しいカトリック圏の山村では、未だに2/2のキャンドルマスまでクリスマスを行ってるそうですが。

昔は収穫終えて雪に閉じ込められたら、何もやる事無かったでしょうからねえ。
北欧の冬の夜は想像を絶する長さと聞きますから…昇ったと思ったらもう終り?みたいな。
そんで来る日も来る日も降る雪見てたら、春が来る前にこのまま家埋っちゃうんじゃあ…なんて恐ろしくも思うわな。

厄払いついでの馬鹿騒ぎが発展して、何時しかクリスマスが形作られたのかもしれない。
いや太陽の復活を祈願し、1年の収穫を神に感謝する冬至祭は、遥か大昔から行われてたらしいですが。
北国でこそクリスマスが盛んな理由はとても良く理解が出来るのですよ。

Q)その村では雨乞いをすると必ず雨が降ったそうだが、何故だか解るかい?
A)降るまで続けたから

…昔の北国では、クリスマスは現在のハロウィーン~イースターの頃までやってたという記録も残ってるんだそうな。
1年の半分近くがクリスマスって、今の感覚で考えると目出度いな。

新しい朝が来た♪ってな感じで、毎度ようつべからですが、どうぞ。(→こちら

写真はハウステンボスの人気菓子店『ヘクセンハウス』のクリスマスデコ。
店名からしてクリスマス関りだからか、他店舗と比較して気合の入った飾付けに感じる。
鬼太郎に出て来る妖怪ポストみたいなのが何となく気になった…アンケートでも投函して貰うようしたら尚ウケるんじゃないかと。



【Nさんへの私信】

…ルロイ・アンダーソンの作る曲はタイトルにピッタリ合う感じがして楽しいです。
BGMとして頻繁に使われるのも良く解りまする。
曲だけだったら知らないって人は少ないんじゃないでしょか。
企画…延長した時は「麦藁団合流祈願祭」と銘打てばと…私の勘では来年の7/3頃迄は、全員揃わない気がするんで。
そんな予想すら軽く超えたら恐ろしいけど…。
コメント
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