瀬戸際の暇人

今年も偶に更新します(汗)

魔女の瞳はにゃんこの目・3 その4

2010年07月31日 15時02分22秒 | 魔女にゃん(ワンピ長編)
その3へ戻】






夜更けに話を終えた4人は、カウンター奥に有る梯子階段を使って2階に上り、更に奥の梯子階段を使って3階屋根裏部屋に上がりました。
そこは元々食糧貯蔵庫でしたが、今ではルフィとシャンクスの寝室に充てられていました。
2人の元寝室だった2階のマキノの隣部屋が、シャンクスの膨大な研究資料に埋め尽くされ、立ち入り出来なくなった為です。

身を屈めたマキノが、ランプで屋根裏部屋を照らします。
真っ暗な中に、鮮やかな花模様がペイントされた、箱型のベッドが浮び上がりました。
その横にはベッドとテーブルスペースを仕切る本棚が――もっとも本は並んでなく、エキゾチックな焼き物や人形、鉱石等が雑然と収納されてましたが――置いてあります。
テーブルと椅子は木製で、折り畳むと壁や棚にぴったり収納可能な様でした。

「3人横になるには手狭だけど、その分くっ付いて寝られて寒くないと思うわ」

マキノがベッドをランプで指し示して言います。

「こいつらと…くっ付いてェ…?」

ルフィ・ゾロとお揃いの白い寝巻きを着せられたナミは、ベッドの中を覗き込んだ後、マキノに向い殊更嫌な顔をして見せました。

「そりゃ私、形は子供だけどさ…立派な大人の女よ!なのに男2人と一緒に寝ろってェの?」
「ええ!子供同士仲良くお泊り、きっと楽しいと思うわよ♪」
「だから私子供じゃないって…千年生きてる大人だって言ってるのに…」

あくまで子供扱いを止めない彼女に、ナミは言葉を失くして頭を垂れてしまいました。
そんな彼女の横からゾロが嫌味をぶつけます。

「逆ならいざ知らず、若く見て貰ってんだから素直に喜べ、婆ァ!990歳近く鯖読むなんて、お世辞にしたって難しいんだからな、婆ァ!」
「口の減らないガキねェェ!!終いには1晩冷たい床の上に転がすわよキウィ頭!!」
「今夜は3人一緒にベッドで眠るのかァ!しししっ♪早く寝ようぜっ♪」

首根っこを掴み掴まれ揉める2人を他所に、ルフィが早々とベッドに飛び込みます。
壁際を陣地に取った彼は、上機嫌でマキノに言いました。

「しばらく独りで寝ててつまんなかったんだよな!どうせならウソップも誘えばもっと楽しかったのに!」
「あら!これ以上ライバルを増やしていいの?ルフィ!」

無邪気にはしゃぐルフィに、マキノがにっこり笑って返します。
1人意味を解したナミだけが、頬を赤く染めました。

「へ?ライバルって、何の――」
「ちょっとルフィ!!あんた何勝手に場所取ってんのよ!!」

目をきょとんと丸くして尋ねるのを遮り、ナミが叫びます。
被ってた布団を勢い良く剥がされたルフィは、口を尖らせて言い返しました。

「だって俺、いつもこっち側で寝てるし!」
「先ずお客様に伺いを立てるのがマナーってもんでしょ!?」
「そうか、解った!じゃあナミはどこで寝たいんだ?」
「私は……壁側か外側が良いわ」
「ゾロは?」
「俺も壁側か外側を希望するな」
「なら俺は壁側、ゾロは外側で、ナミは真ん中だな!」
「何でそうなるのよ!?」
「だってゾロ、寝相すんげー悪いんだぜ!隣で寝たら、け飛ばされて安眠出来ねーもん!」
「俺もルフィの隣は勘弁だな。蹴飛ばされて床に落ちるのは目に見えてる」
「私だってあんた達に蹴飛ばされるのは嫌よォォ!!」

寝場所を巡って侃々諤々大いに揉める3人に、マキノはジャンケンで決めるようアドバイスしました。
彼女の立ち合いの下、5回勝ち抜け勝負を行った結果――ルフィは壁側、ゾロは外側、ナミは真ん中に決定したのでした。




マキノがランプを持ち帰った後、部屋は真っ暗闇に包まれました。
ベッドに入って暫くは3人ボソボソと、時折喧嘩を交えて喋っていましたが、騒ぎ疲れた反動から、2人の少年はあっさり眠りに就いてしまいました。
左右から轟々と響く鼾が、真っ暗な中で存在を主張します。
2人の間で眠るナミは、指で耳栓をしたまま、窓の有る方へ顔を向けました。

暗闇の中、窓を塞ぐ木戸がガタガタ揺れている気配を感じました。

2人の目を覚まさないよう、静かに半身を起こします。
途端に家を押し潰さんばかりに迫って聞える風の音。
窓を開ければ猛烈な吹雪が舞い込む事でしょう。

体を伸ばして指を1本ベッドの外に出してみました。
窓から部屋に吹き込む冷たい風の通り道を感じます。

急に寒さを覚えたナミは、眠る2人の間に身を縮こませました。
触合う肌から伝わる熱で、心細さが解けて行きます。
鼓膜が破れるほど轟く鼾にも、不快さを感じなくなっていました。
信頼する人と寄り添って眠る幸福――それは彼女が千年生きて来て、初めて知るものでした。


――違う。初めてじゃない。


頭の中で記憶を呼び覚ます声が聞えます。
耳を澄まそうとしたその時、左から彼女の顔に――ゲンッ!!!と蹴りが入りました。

「ぐえっ…!!!」

思わず口からヒキガエルに似た悲鳴を漏らします。
あまりの激痛に、目の前で火花が散って見えたその時、右からも彼女の脇腹目掛けて――ドゴッ!!!と蹴りが入りました。

「ぐおぅっ…!!!」

またもや激痛からくぐもった悲鳴を漏らします。
両サイドで眠る2人はしかし、悲鳴に全く気付きません。
リズムを乱す事無く奏でられる寝息に、怒りが沸々と沸いて来ます。

「…やっぱ信頼なんて出来ない……して、たまるかァァ~~~~…!!!」

夜中なのも構わず絶叫し、やおら半身を起こした彼女は、それでも安らかな寝息を立てている2人の頭目掛けて、渾身の拳を振り下ろしました。




【続】
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魔女の瞳はにゃんこの目・3 その3

2010年07月31日 15時01分12秒 | 魔女にゃん(ワンピ長編)
その2へ戻】






話が纏まった所で、フランキーは全員に茶でも飲んでけと誘いました。
しかし降りが激しくなるのを恐れた村長は、彼の招待を丁寧に断り、ウソップを宜しく頼んだ後、マキノ達を連れて帰路に着きました。
『パーティーズ・カフェ』前での別れ際、マキノは村長に何度も礼を述べ、村長は雪のせいで2、3日珈琲を飲みに行けなくなる事を大層残念がりました。
積る雪が膝の高さを越える頃、外に居るのはルフィゾロナミマキノの4人だけとなりました。

ナミが白い息と共に、低く短い呪文を吐きます。
すると忽ち彼女の茶色かった瞳は、闇夜にキラキラ輝く金色に変化しました。
提げてたランプを消し、替って大きな古箒を出現させます。
1回転させ、右手に持ち替えた所で、ナミは空を見上げました。

真っ暗な空を背景に、白い螺旋を描いて落ちる雪が、これから吹雪になる事を彼女に教えます。

「ルフィ!ゾロ!延ばしてばかりで悪いけど、地図を持って来る件は明後日にさせて頂戴!マキノ!貸して貰ったコートも、その時返すわ!」

振向いたナミは、白い毛織のコートを抓みながらマキノに礼を述べ、ルフィとゾロに明後日の仕切り直しを約束してから、箒に跨りました。

「待って!」

ところが飛行の呪文を唱える寸でで、マキノに引き止められてしまいました。
驚いて振り返ったナミの両肩に、マキノの手が優しく置かれます。
自分を見上げる目線と合うと、彼女はにっこり微笑んで言いました。

「これから吹雪になるんでしょう?なら今夜は家に泊まって行きなさい!」

マキノの背後で彼女の言葉を聞いたルフィとゾロが直ぐに賛成します。

「そうだナミ!マキノの言う通り家に泊まってけ!遠慮はいらねーぞ!」
「疾うに道はかなりの雪が積ってて、今から帰るには危険だしな…俺も泊めて貰って良いか?マキノ」
「ええ、構わないわ!ルフィと一緒に居る事は、ゾロの家でも承知してるんでしょ?なら心配してないだろうし」
「今夜は皆で宴だな♪♪」
「ちょ、ちょっと待ってよ!私、此処に泊まってく訳にはいかないわ!」

承諾もしてない内に、早お泊りして行くと決め付け、大いにはしゃぐ3人に、ナミは慌てて断りを口にします。

「なんだよ!?せっかく盛り上がってんのに水をさすなよな!」
「吹雪に閉じ込められてる間、3人でシャンクスの資料室を片付けりゃ、時間を有効に活用出来るだろ」
「本当に遠慮する必要なんて無いのよ?1日や2日位、ルフィの分から少し都合して、ナミちゃんの分の食事に充てるから!」
「ええ!?俺の分から取るのか!?そりゃひでーよマキノ!!」
「別に遠慮してんじゃなくて!!…早く帰らなきゃ私のオレンジの森が大変な事になるんだってば!!」



ナミの住むオレンジの森は、彼女の魔法の力で1年中初夏の陽気に包まれています。
外界の様に四季は無く、地面が乾かない限り雨が降る事も有りません。
青空の下、樹々は瑞々しい葉を繁らせ、オレンジをたわわに実らせていました。
オレンジは毎朝収穫され、使い魔によって外界に売りに出されます。
もいだ後、樹は一晩で新しい実を熟す為、魔女の懐は毎日潤っていました。



「つまり毎朝収穫しないと、生っては熟し生っては熟し…枝から落ちたオレンジに森が埋め尽くされてしまうのよ!それでなくても此処数日留守にしたってのに、悠長に泊まってなんか居られないわ!」
「だから放っぽって鳥の餌にでもしろって」
「人の貴重な収入源を何だと思ってんのよあんたはァァ!!!」
「なら落ちたオレンジここへ持って来いよ!俺が全部食ってやる!」
「只であんたにあげる義理が何処に有る!!?」

2人のほほんと挙げる解決策を、ナミが片っ端から却下します。
そこへマキノが名案を思い付いたとばかりに、声を弾ませて話の輪に加わりました。

「そうだわ!落ちたオレンジをこの村の皆で買えば良いんじゃないかしら!?」
「止めとけマキノ!こいつのオレンジは1個730ベリーもするっつう、大層あこぎな――ブッ!!」
「あこぎとは何だ!?高級ブランドなんだから当り前でしょお!!」

価格にケチを付けたゾロの頬に、ナミの強烈な平手打ちがお見舞いされました。
1個730ベリーもすると聞いて、マキノの表情はみるみる曇りました。

「まァ、そんなに高いんじゃ手が出せないわ。私とナミちゃんの仲に免じて、せめて半額に負けて貰えないかしら?」
「そうだそうだ!他人じゃねーんだから只にまけろ!」

手が出せないと言いつつ、マキノの態度からは諦めが見えません。
流石はルフィの保護者、血の繋がりは無い筈なのに、一緒に騒ぐ少年とマキノは、目や髪の色だけでなく性根まで、不思議に似て思えます。
邪気無く「負けろ」と言うんだから性質が悪い…。

「…落ちて傷付いたオレンジを市場に出したら信頼ガタ落ちしちゃうし、特別に9割引で売ったげるわよ!」

根負けしたナミは、わざと重々しい溜息を吐いてみせて、そう約束しました。
途端にルフィが勝利の雄叫びを上げ、ゾロがくっくと忍び笑います。
2人を睨むナミをマキノはギュッと抱き締め、無邪気に礼を述べましたが、急に神妙な顔付に変ったかと思うと、彼女の金色の瞳を覗き込んで言いました。

「実はシャンクスの件で聞いて貰いたい話が有るの…」




店に入ったマキノは、3人をカウンター席に案内し、後ろの暖炉に火を熾しました。
暫く経つと火は勢いを増し、冷えた空気が次第に暖まって行くのを感じました。
赤々と燃える炭がパチパチ爆ぜて、薄暗い店内を照らします。
マキノはカウンターの下から両手鍋を取り出すと、半分位の嵩までミルクを入れて、暖炉に掛けました。
沸騰し、表面に薄い膜が張った所で、カウンターに並べて置いた4つのカップに、均等に注ぎます。

「寝る前だから、珈琲じゃなくって、ホットミルクねv」

花柄の木製カップを3人に配りながら、マキノが言いました。
そうして彼女自身も己に用意したミルクを口に含みます。

冷え切っていた体を全員が充分に温めた所で、彼女は2階の自室から抱えて来た束を、3人の目の前に積みました。
束を結わえていた紐を解きます。
山積みになったそれは手紙で、全て同じ差出人からの物でした。

「…アイスバーグ?」

束から1枚抜き出し手に取ったナミが、差出人の名前を読上げます。

「シャンクスの捜索をして下さってる、港街の市長さんよ」

目で問われたマキノが答えた途端、ナミの左右に座るルフィとゾロが反応し、素早く手紙を掴み取りました。
バランスを崩した束が崩れ、テーブル下にまで零れ落ちます。
それには構わず2人の少年は…特にルフィは、開封してある手紙を次々取り出しては広げ、目を皿の様にして黙読しました。
手紙は難しい言葉で書かれていて、ルフィにはチンプンカンプンな内容でしたが、シャンクスの行方について記した調査報告である事だけは解りました。
日付から判断するに、手紙は週1のペースでマキノに届けられているようでした。

「現在シャンクス達の捜索には、2つのチームが当たってくれているわ」

床に落ちた手紙を拾い上げながら、マキノが説明します。
ナミは文に目を走らせつつ、彼女の話に耳を澄ませました。

「1つは国の警察が派遣している捜索隊で、もう1つはそのアイスバーグさんが私的に出している捜索隊…噂では他にも幾つか動いてるチームが在るらしいけど」
「有名人だもの。不思議じゃないわね」

ナミが相槌を打って話を促します。

「シャンクスはアイスバーグさんの街の創生から関っていて、見付けた宝の殆どを彼の街の博物館に寄贈しているの。
アイスバーグさんの方でも、シャンクスの為に研究所を設立したり、彼の冒険に掛かる資金を調達したりしてくれてるわ。
言うなればシャンクスのスポンサー、大事な協力者ね」
「どうりで此処には財宝の影も形も見当たらない筈だわ」

前にルフィから見せられた、部屋を埋め尽くす資料の山を思い出して、ナミが溜息を吐きます。
カップから立ち昇る湯気が、吐き出した息に煽られ、拡散しました。

「1年前、シャンクスが行方不明になった知らせを受けて、アイスバーグさんは直ぐに捜索隊を出してくれたわ」
「それから週1のペースで、アイスバーグさんから報告の手紙が届くようになったのね?」
「ええ、そうよ」

マキノがカウンターに頬杖を着いて頷きます。

「けどあまり捗ってる様には思えないわ。手紙が段々薄くなってってるもの」
「ええ、そうね」

古い手紙と新しい手紙を並べて厚みを較べるナミに、マキノは続けて肯定の頷きを返しました。

突然――バンッ!!と勢い良くテーブルが叩かれ、ルフィが物凄い剣幕で吼えました。

「マキノ!!何で今まで俺に隠してた!?」

下を向いていた全員の視線が、椅子の上に膝立ちするルフィに集まります。
暖炉の火を反射して爛々と光る黒い瞳に向い、マキノは哀しみを含んだ笑顔で答えました。

「…教えたら直ぐにアイスバーグさんを訪ねて、行方を追おうとしたでしょ?嫌よ、私、シャンクスに続いて、ルフィまで居なくなるなんて……」

声は段々と小さくなり、顔を覆った手の中で聞えなくなりました。

「だったら何故今になって話すんだ?」

マキノの言葉に意気を殺がれ、大人しく座り直したルフィに代り、ゾロが質問を投げます。
問われたマキノは俯けていた顔を上げて答えました。

「『ナミちゃん』という翼を得た今、貴方達は止ろうとしないでしょう?…だから覚悟して話したの」

全てを打ち明けた後、マキノはナミの目を真直ぐ見て頼みました。

「ねェ、ナミちゃん!鉄砲玉みたいな2人だけど、見失わないように付いて行って頂戴!」

「…なんで私がこいつらのお守りを」

目を逸らして零したナミに、透かさずルフィとゾロが反撃します。

「婆さんの面倒を見る若者の苦労も察して欲しいね!」
「毎回ピンチを救ってやってんのになー!」
「負ぶってやったり、我ながら健気で泣けて来るぜ!」
「あんまりうるせーと合わせ鏡して閉じ込めっぞ、金目ババァ!」
「婆ァ婆ァ煩いのよガキ!!悪口言うにもも少し語彙増やしたらどうなの!?」
「「オールドミス!!」」
「なんだとー!!」
「はい、そこまでー!」

お定まりの口喧嘩の幕が切って落とされる前に、マキノが手を打って治めます。
振向いた3つの顔を笑顔で見回した彼女は、今後為すべき事を言聞かせました。

「吹雪が止んだら、私の手紙を持って、アイスバーグさんを訪ねなさい。きっとシャンクス達の足取りを纏めた、大きな地図を持ってると思うわ!」




【続】
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魔女の瞳はにゃんこの目・3 その2

2010年07月31日 15時00分03秒 | 魔女にゃん(ワンピ長編)
その1へ戻】






静まり返った夜道を川伝いに下ります。
道と言っても雪にすっぽり覆われてるせいで、本当の所何処を歩いているのかさっぱりでした。
ポツポツ点いてる家の灯りが途切れると、辺りは不気味な白い闇に包まれました。
川の水音が傍で聞えるのも不安を募らせます。
ランプを携え先頭を歩く村長は、頻りに後ろを振り返っては、絶対に列を乱さず、離れないよう注意しました。
積る雪は今や大人の膝位まで達しています。
村長は後ろを歩くマキノや子供達の為に、藁ぐつで掻き分け踏締め、道を作ってやりました。

「その『フランキー』って、どんな感じの人なの?」

掬い取った雪玉を珍しそうに眺めながら、直ぐ前を歩くゾロにナミが訊きます。

「一言で言うと『変態』だ!」

しかし何故か質問に答えたのは、ゾロの前を行くルフィでした。
そんな彼をじろり睨んだものの、ゾロが付け加えて答えます。

「ま、確かに見た目『変態』だな。冬でも半袖短パンだし」
「冬でも半袖短パン!?寒くないのォォ!?」

目を丸くして驚くナミの後ろで、ウソップがあからさまに嫌な顔を見せました。
長く付き合ってる村人にすら『変態』呼ばわりされる男。
そんな男と自分はこれから一緒に暮さねばならないのか?
不安に怯えるウソップに構わず、ルフィとゾロは無邪気に、件の男の人となりを暴露しました。

「前に『そんなカッコで寒くないか?』って訊いたら、『寒いに決まってんだろバカヤロー!!』って怒鳴られちまった」
「寒いなら着りゃいいじゃねェかって思うんだがな。ポリシーってヤツらしい」
「バカだなゾロは~!それを言うなら『ポリスー』だろォ!?」
「馬鹿、てめェが間違ってんだよ!…兎に角だな、『変態』に誇りを持って生きてるらしい」
「『変態』って呼ぶと喜ぶんだぜ!」
「何で喜ぶのよ!?」
「『変態』だからじゃねェの?」
「そそそんな奴の家に世話になって、俺大丈夫で居られるのか…?」
「さー?大丈夫じゃねーかもなー」
「大丈夫じゃねーかもじゃねェェ!!!他人事だと思いやがってテメェら!!!」
「ま、実際他人事だしな」

やいのやいの言い合ってるそこへ、前を行く村長とマキノから注意が飛びました。
慌てて2人の後を追い駆け距離を詰めます。
再び雪道を出発して約30分、一行は漸く噂の男が住まう家に到着しました。

目の前に建つ家を、ナミはゆっくり見上げます。

白い雪を被ったそれは、村に在る他の家と同じ木造でしたが、目立って風変わりに感じられる物でした。
まるで三角屋根の家を5軒重ねて潰した様な五重の塔。
重なった家は上へ行くほど小さく、親亀小亀孫亀なイメージも持てます。
雪を被ってない1階の壁にランプを翳し、太い極彩色で描かれた文字を見付けたナミは、声に出して読んでみました。

『フランキーハウス』

ナミが一回りして観察している間に、村長は扉の前にぶら下がる呼び鈴を鳴らしました。
静寂を壊す派手な音が轟きます。
扉からのっそり出て来た大男は、ルフィとゾロが話した通り、『変態』の標本の様でした。

水色のリーゼントヘアー、人相の悪さを引き立たせるサングラス、山間部に不似合いなサンダル。
半袖開襟シャツ+短パンから食み出した、筋肉質で毛むくじゃらのボディ。

てっきりウソップをからかってるだけだろうと思っていたのに…唖然として居るナミに向い、ルフィとゾロは「な、『変態』だろ?」と言って、にんまり笑いました。
3人目が合った所で、背後のウソップを振り返ります。
彼は哀れにもすっかり蒼褪め、両目を真ん丸に見開き、ガタガタと震えて居ました。

「ん?そんなに寒いのか??」
「鈍いわねルフィ。あいつを見て怯えてるに決まってるでしょ!」
「そう怯えんなって。見掛けはアレでも良いトコ有るぜ」
「ゾロの言う通りだぞ!見た目で人を判断しちゃダメだって、マキノも言ってた!」
「中身も『変態』だけどな。『住めば都』って言うし、一緒に暮してりゃ、その内慣れるだろ」
「うん!『朱に交われば赤くなる』って言うからな!その内慣れていきとーごーするさ!」

仲間が口々に慰めにならない言葉をかけます。
聞いて居たウソップは、終いに堪忍袋の緒を切らしてしまいました。

「交わってたまるかァ~!!!ホントお前ら他人事だと思いやがって…!!!」
「馬鹿言ってんじゃねェぜ村長!俺の家は託児所かァァ!?」

そこへフランキーの怒鳴り声がはもり、反射的に子供達は、大人達の方へ一斉に首を向けました。
扉を背に立つフランキーが、己に集まった視線を感じて、子供達の方を睨みます。
サングラスを弾き露にした目は、泣く子も黙って失禁しそうな凶悪さでした。
例えるならメドゥーサ、その禍々しい眼差しがウソップを捉えます。
忽ちウソップの顔から血の気がザザッと引きました。

フランキーがマキノと村長を脇に押し退け、ウソップの元へ向います。

ビッグフットが雪原をズンズン歩いて近付いて来るも、恐怖に凍り付くウソップの体は微動だにしません。
逃げる事叶わず、遂に真正面までやって来た彼は、身の丈がウソップの3倍近く有りました。
見上げるウソップの喉から、か細い悲鳴が零れます。


――良い子だから元の村にお帰りなさい。


あの時頷いときゃ良かった…ウソップの胸に後悔の念が浮びました。


「てんで性根が据わってねェ!形も貧弱でやがるし!こんなヒョロガキ、クソする手伝いにもなりゃしねェよ!」

己の前で氷像の様に硬直して居る少年を、穴の開くまでジロジロ観察し終えたフランキーは、首と掌を大袈裟に振って駄目出ししました。
彼の暴言を聞きフリーズが解けたウソップが、流石にむかっ腹を立たせ睨みます。
しかしフランキーは全く相手をせず、その隣に居るルフィの方へ、愛想良く声を掛けました。

「同じガキなら麦藁をよこしてくれよ!こいつの腕っ節には惚れてんだ!どうよ!?俺んトコに弟子入りしねェ!?」
「やだね!、俺、大工になりたくねーもん!」
「つれねェ事言うなって!大工くれェ安定して稼げる職は無ェぞォ!バブル弾けたって恐くねェさ!」
「やだね!俺はシャンクスみたいに、トレジャーハンターになるんだ!」
「フランキー!ウソップ君は発明の天才で、とっても器用だそうなの!」

ルフィから間髪入れず断られるも、フランキーはお構い無く勧誘し続けます。
このままではルフィが弟子入りさせられてしまう。
そう危ぶんだマキノは、必死でウソップを売り込みました。

「発明の才なんざ大工に必要無ェよ。…まァ器用なのは結構だがな」

けれどもフランキーはちっとも乗って来ようとしません。
己の付けた足跡を辿り、そのまま家の中へ戻る素振りを見せた彼を、村長は慌てて引き止めました。

「待てフランキー!頼れるのはお前しか居らんのじゃ!」
「悪ィが売り込むなら十年後にしてくれねェか?そのガキ、親から離して弟子入りさせるにゃ、ちと若過ぎに思うぜ!」
「じゃから、この子には両親が居ないんじゃ!」
「何だとォォ…!!?」

背を向けて扉を開けようとしていたフランキーが、勢い良く振り返ります。
彼は村長の肩を乱暴に掴んで問質しました。

「そいつはマジか村長!?」
「ときに先刻から思うとったんじゃが、お前さん、脛晒したまま雪ん中立ってて冷たくないのかね?」
「冷てェに決まってんだろバカヤロー!!――そんな事より、こいつ両親が居ねェのか!?じゃ、今迄独りで…!?」
「そうよ。彼此1年、独りで暮してたそうなの」

傍に立っていたマキノが、村長に代わってウソップの家庭の事情を説明します。



母親は彼が幼い頃に死んでしまった事。
父親はシャンクスのチームに居るヤソップで、シャンクスと共に行方不明である事。
ルフィ達に出会った彼は、同志の絆を結び、自分の手で父親を捜す決意を固め、遥々山越えこの村にやって来た事。



終いまで聞かない内に、フランキーは雪原を転げ回り、わんわん声を上げて泣き出しました。
大人気無い泣き様を見かねた村長が、優しく宥めるよう声を掛けます。

「こりゃ、フランキー。いい年した男が、そんな風に泣くもんじゃない」
「馬鹿泣いてねェ!!!泣いてねェったら!!!」
「そんな薄着で体を雪に擦り付けて…冷たくないのかね?」
「煩ェェェ!!!冷てェに決まってんだろバカヤロ~~~~オイオイオイ!!!」

何を言ってもフランキーは泣き止まず、諦めた村長は放って置く事にしました。
他の者達もどう声をかけて良いか判らず、駄々を捏ねる子供みたいに泣き喚く男を、黙って囲んでいました。
体の大きい彼がジタバタ手足を叩き付ける度に、派手な雪飛沫がバッシャバッシャと立ち昇ります。

大分経った頃、フランキーは鼻をグズグズ啜って立ち上り、何処からともなくギターを取り出すと、ジャカジャカ掻き鳴らしながら、自作の歌を歌い出しました。

――はァ~~~~るばるゥ~~来たぜ♪ゆゥ~~き山ァァ~~~~~~♪

「フランキー歌は結構じゃっ!!それよりこの子を家に置いてくれるかどうかを聞かせてくれんかね!?」

感極まるとギターを取り出し、即興で歌い出すという癖が、フランキーには有りました。
それを知る村長が、脱線を恐れて懸命に制止します。
演奏を止められたフランキーは、己を呆然と取り囲む輪の中にウソップを認めると、両手を大きく開いて抱き締めました。
分厚い毛むくじゃらの胸板に埋められたウソップの喉から、再びか細い悲鳴が漏れました。

「事情も知らずに済まなかったなァァ!!けどもう心配するこたねェ!!今日からこの家がおめェのマイホームだ!!何なら俺の事は『親父』と呼んでくれて構わねェ!!」
「いいいや折角だけど俺には既に血の繋がった親父が居るんで勘弁…!」
「これからは寂しい思いなんてさせねェさ!!温かく笑いの絶えない食卓ってヤツを、おめェに味わわせてやるぜ!!」
「いいいや別に俺今迄冷たくしんみりした食卓しか知らない訳じゃ…!」
「腕もみっちり鍛えてやるからな!!3年後には超スーパーな大工だ!!」
「いいいや俺大工じゃなくって発明家になりた――って冷てェ~~!!!!前は暑苦しいけど後ろは冷てェ~~~!!!!」

熱い抱擁を受けて押し倒されたウソップの悲鳴が、白い大地に響き渡ります。
暑苦しさと冷たさのコラボに耐え切れず、死に物狂いで抵抗するも、咽び泣くフランキーの腕は解く事が出来ませんでした。


「上手く行ったのかしら?」

事の成り行きを黙って見詰めていたナミが、同じく隣で静観していたゾロに尋ねます。

「行ったんじゃねェの?」

ゾロが何時も通りの惚けた口調で返しました。
ナミの口から、安堵とも呆れともつかない溜息が零れます。

ふと手袋の中に包んでいた雪玉を確めました。
丸めた時に較べて、小さく変わった結晶の固まり。
暫く眺めた後、彼女はそれを降り頻る雪のカーテンの向うへ放り投げました。




【続】
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魔女の瞳はにゃんこの目・3 その1

2010年07月31日 14時58分25秒 | 魔女にゃん(ワンピ長編)
【魔女の瞳はにゃんこの目・2―その20―に戻】







魔女の瞳はにゃんこの目

空の彼方を
海の底を
地の果てを

心の奥をも見通す力




        【魔女の瞳はにゃんこの目・3】

                          


或る小さな国に、1人の偉大な魔女が居りました。
世界中の何もかも知り、世界中の誰よりも愛らしい魔女でした。(←自己申告)

小さな国の外れの小さな村の、そのまた外れの小さなオレンジの森の奥に建つお菓子の家。

壁は卵色したスポンジケーキ。
屋根の瓦は色とりどりのマーブルチョコ。
煙突は生クリームがかかったウエハース。
窓は薄く延ばした氷砂糖。
扉は四角いビスケット。
けど――実体は木と蝋で出来たイミテーション。

魔女はそこに千年もの長い間、たった独りで住んでいました。

ところが或る日の事です。
魔女を尋ねて2人の少年が、隣村からやって来ました。

麦藁帽を被った怪力無双の少年、ルフィ。
チクチク緑頭の二刀流少年剣士、ゾロ。

1年前に消息を絶ったルフィの義父「シャンクス」の行方を捜して貰おうと尋ねて来た2人の少年に、優しい魔女(←自己申告)は快く力を貸し、仲間になる事を約束したのです。

3人力を合せて2つの冒険をし終えたところで、頼もしい仲間がもう1人加わりました。
トレジャーハンター「シャンクス」の仲間で、共に行方不明の発明王「ヤソップ」の息子。
才能だけなら父親すらも凌ぐと自称する、天才発明少年「ウソップ」です。

さても腕自慢の4人が揃い、今度こそシャンクスやヤソップは見付かるのでしょうか?




「呑気にしてる場合か!これから一体どうする積りよ!?」

甲高い声が天井で跳ね返って、店いっぱいに響きます。
正面並んで座るルフィゾロが両耳塞いで渋い顔を見せるのにも構わず、ナミは左隣で砂糖とミルクたっぷりの珈琲を啜るウソップをきつく睨み、容赦無い追求を浴びせました。

「着の身着のまま私達の後にホイホイ付いて来たけど、此処で暮してく当ては有るの!?まさか私達の内の誰かの家を頼って、ちゃっかり世話になろうなんて魂胆で居ないでしょうね!?」

聞いてたウソップの口から珈琲がブッと噴出されます。
そのまま彼は激しく咳き込み、テーブルに突っ伏してしまいました。
ゴホゴホゴホゴホ、ゴホゴホゴホゴホ、中々静まらない咳音に、店に居る全員の注目が集まります。
10分も経ったでしょうか?
漸く気を落ち着かせた彼はテーブルから身を起し、カップに残っていたミルク珈琲を一息に飲み干した後、覚悟を決めた顔でナミに臨みました。

「頼む、ナミ!お前の家に居候させてくれ!」

彼の目の前でナミの顔がみるみる微笑へと変化します。
それはもう天使の微笑と見紛うほど柔和で愛らしく、釣られてウソップも少々引き攣りがちの微笑を浮かべました。
2人の間に流れる和やかな空気、そんな中、ナミのカップを持つ左手がゆっくり上がって行きます。
不審を覚える頃には万事休す、カップはウソップの脳天まで来た所でクルッと反転、半分以上残されていたミルク珈琲は無情にも彼の頭へドボドボと注がれました。

「うあっちィィ~~~~~~~!!!!」

忽ち悲鳴を上げたウソップが、珈琲をたっぷり吸った黒モジャ髪を振り乱して、床を転げ回ります。
苦しみのたうつ彼の姿を一瞥したナミは、フンと鼻を鳴らして吐き棄てました。

「独り暮らしの女の家に厄介になろうなんて不躾な男には、相応の制裁を与えてやらなくちゃ!」

その言葉にプチンと切れたウソップは、やおら立ち上ると、指を突きつけ言い返しました。

「おいコラ冷血女!!てめェは仲間が行き場無く困ってんのに平気で居られるのか!?人間なら血の通った情ってもんが有るだろ!!」
「お生憎様!私は人間じゃなくて魔女だもの!だからちぃ~っとも平気!」

返す刀でバッサリ斬られ、ウソップは再び床に転げてしまいました。
こんな人でなし女を相手にしたって無駄だ、そう考えた彼はルフィを標的に変え、座り込んだ姿勢のまま、彼の方に手を合せて頼み込みました。

「ならルフィ頼む!!お前んちに居候させてくれっ!!」
「えー!?俺んちにかァー!?」

今迄ゾロと一緒に2人の喧嘩を傍観して居たルフィは、急にお鉢を向けられ素っ頓狂な声を上げました。

「ほへはへふに構わねーんだけどよー。マキノが何て言うか…」

珈琲の友に出されたクッキーを頬張りつつ、ちらりと奥のカウンター向うに居るマキノを窺います。
子供達に背を向けて暖炉の火を見ていたマキノは、ルフィの言葉を受けて振り返ると、思案顔を作って答えました。

「そうねェ…置いてあげたいのはやまやまだけど、ルフィの食費だけでも馬鹿にならないし…」
「優しい顔してシビアな言葉吐くよなァ、マキノって」
「だ、だったらゾロ!!お前んち居候させてくれよ!!この通~り!!…なっ!?」

ルフィ(と言うよりマキノ)に断られたウソップは、今度はゾロに向い、両手を強く叩いて拝みました。
しかし彼も短く刈った髪を掻き毟り、渋い顔をして答えます。

「俺も居候の身分で、家はしがない剣の道場兼寺子屋…テメェの判断だけで置いてやる訳にはいかねェよ」
「2ケ月や3ケ月位なら良いけど、ずっとじゃなー」
「期限定めず衣食住保証しろたァ、流石に調子良過ぎだろ」
「貯金も何も持って来てそうにないし、お役立ちな力も持ってなさそうだしねェ」
「なんでェ薄情者共!!!『俺達もう仲間じゃねェか』っつったのは大嘘か!!?結んだ友情は偽りだったってェのかよ!!?信じて付いて来た俺が馬鹿みたいじゃねェかァァ!!!」

ルフィとゾロとナミの遠慮の無い会話を聞いたウソップは、とうとう目に涙を浮かべて爆発してしまいました。
まさかの裏切りだと大いに詰る彼を、ナミは暫く黙って見詰めて居ましたが、やおら立上って傍に寄ったかと思うと、優しく宥めるように声をかけました。

「話を聞いて解ったでしょ?此処には貴方の居場所なんて無いの。良い子だから元の村にお帰りなさい」

「…『お帰りなさい』じゃねェっつの……おめェ全知全能を誇る『オレンジの森の魔女』だろが!?仲間の為に気前良く家の1軒も出してみやがれ!!この冷血ドケチ鬼女!!!」
「仲間を笠に着て甘えてんじゃないわよ!!元を辿ればあんたが無計画に付いて来たから悪いんでしょ!?せめて貯金位持って出なさいよ!!無一文で居候させてくれる家なんて簡単に見付かる訳無いじゃない!!」
「あだ!!!あだだだだ!!!!はだ!!はだ掴ぶば止べぼげぶっっ!!!」

肩に置かれた手を乱暴に掴み、ウソップが吠えました。
しかしナミも負けておらず、もう片方の手で彼の天狗の様に長い鼻を掴むと、思い切り捻ります。
ウソップが激痛にのたうち暴れるも、ナミは手を離そうとしません。
それでも彼は鼻抓み声で懸命に、持って来れなかった事情を説明しました。

「…持っで来る気ば有っばざ…貯金ばっべ、着る物ばっべ、当座ぼ食い物ばっべ、時間ざえ有べば鞄び詰べべ持っべ来べばざ!げどお前ば、事件が解決じばだ、ざっざど箒に乗っべ帰ろうどじやがっだがら、慌でで飛び乗っだんじゃべェが!!」



父親が行方不明になって以来、彼は自作のレーダーで捜す等、あらゆる手段を講じました。
しかし失敗の連続で月日は流れ、気付けば1年が経過していました。
このままじゃ埒が明かない、いっその事自分の足で捜しに行くか?
悩んでた所で、同じくシャンクスのトレジャーハンターチームを捜すルフィ達に出くわしたのは、ウソップにとって僥倖でした。
この機会を逃せば父親を捜す手立てを失うとの焦りから、後先なんか考えずナミの箒に飛び乗ったのです。

詳しい話は前回を参照して貰うとして、ルフィ達と共に血塗れで店に入って来たウソップを、最初マキノは悲鳴で出迎えましたが、直ぐに打ち解け、3人と同じ白い寝巻きを用意してやり、温かい御馳走でもてなしてくれました。



そのマキノは再び思案顔で「困ったわねェ」と呟くと、カウンターを出てテーブル席窓際に座るウープ・スラップ村長に相談しました。
騒がしい子供達の陰に隠れて存在感が極めて希薄でしたが、村長はずっと遠巻きに話を聞いて居たのです。

「ねェ、村長。ウソップ君の為に良い居候先見付けてあげられないかしら?折角山3つも越えてこの村に来てくれたんだもの。力になってあげたいわ」
「わしの所で預かれれば良いんじゃがなァ…何分うちも三世帯同居で手狭じゃし…」

相談を持掛けられた村長は、ブラック珈琲を一口啜った後、暫く熟考してから再び口を開きました。

「家族持ちの所は難しいじゃろ。子が居なくて暮らしに余裕の有る家が望ましいが、さりとて若過ぎても保護者を任すには不安じゃ。…となればフランキーの家に絞られる」
「フランキーって…川下に住んでる、大工の?」

マキノから尋ねられた村長は「うむ」と頷いた後、真横の子供達が座るテーブル席の方に、首を伸ばして問いました。

「その子は手先が器用かね?」
「おう!メチャクチャ器用だぞ!色んなもん発明しては爆発させる天才なんだ!」
「『破壊無くして創造叶わず』を体現してる様な奴だぜ」
「作るだけなら天才的なのよね」
「余計な紹介加えてくれてんじゃねェよお前ら!!」

ウソップに代わって答えた3人の言葉を聞き、村長は「うむうむ」と続けて頷きました。
「なら大丈夫じゃろ」と呟き、もう1度珈琲を啜ります。
店に居る全員の視線を集めた村長は、「フランキー」と言う男について簡単に紹介しました。



村で最も川下に在る家に、腕が良いと評判の大工が居る。
男の名は「フランキー」と言って、30をとうに越えてるが、未だ独身じゃ。
弟子を数人抱えているが、生活に困ってる様子は無い。
離れた街で暮す義理の兄貴から、仕事と金を貰っているらしい。
暮らしに余裕が有るせいか、気前が良くて面倒見も良い。
今丁度弟子を1人募集している。
手先が器用なら、きっと預かってくれるじゃろう。



話し終えた村長は窓から外を眺めます。
ランプの灯りを反射して橙色に輝く硝子の向うでは、夜の闇に真っ白な雪が深々と降り積もっていました。

「…これ以上積れば暫くは出歩けんようになる。今の内に頼みに行くか」

マキノ達の方へ首を戻した村長は、直ぐに出掛ける仕度をするよう言いました。





【続】
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上陸!ハウステンボス!!その9

2010年07月30日 22時16分58秒 | ワンピース
前回の続き】

※ル=ルフィ、ゾ=ゾロ、ナ=ナミ、ウ=ウソップ、サ=サンジ、チ=チョッパー、ロ=ロビン、フ=フランキー、ブ=ブルック、の台詞です。





ナ「さぁてそれじゃあ4番目の質問者、サンジ君いらっしゃ~い♪」
サ「よぉしよしよし!!漸く俺の順番が廻って来たァァ!!!――んナミっすわんvv今行くよォ~~~vvv」

ウ「こ、光速で移動しやがった…!!」
フ「あの超スーパーなスピード…大将黄猿に勝てるかもしれねェ…!」

ナ「それでサンジ君は上陸したら何を楽しみたいの?」
サ「勿論ナミさん、君とのデートに決まってるじゃないか!上陸したら何処のレストランで食事したい?何処で写真撮ろうか?何処のバーでグラスを合わせる?夜は何処のホテルに泊りたい?全部君の好きに決めてくれて良い!そしたら俺、直ぐにでもホテルと店予約して、スケジュール立てるよ!」
ナ「…あのね、私は今サンジ君の旅のスケジュールを立てる手伝いをしようとしてるの!私のスケジュールは決めてくれなくても良いのよ!?」
サ「だからナミさん、俺は君の行く所なら何処へでも付いて行きたいんだ!君の旅のスケジュールを立てる事、即ち俺の旅のスケジュールを立てる事でもあるのさ!」

フ「君の行く先、例え火の中水の中、地獄の底からお風呂の底までお付き合い、だな」
ウ「確かにサンジなら、風呂の底に忍んで居そうだよな」
ブ「ふふ風呂の底ですか?そそそれは見上げた瞬間インパクト!!私、想像しただけで鼻血が出そうです!!血なんて流れてないんですけどね!――あ!でも噴き出ちゃいました!」
チ「…ブルックの血液成分ってどうなってんだろう?」
ル「どうせすぐに見つかって雷落とされんの解ってんのに、何でしつこくのぞこうとすんだろうな?」
ウ「そりゃルフィ、お前がつまみ食いを止めねェのと同じ理由だろ。そこに裸の女が居ると解っていながら覗かないのは、サンジの男としてのポリシーに反するのさ!」
ル「ウソップ、それは違うぞ!ポリスーだ!」
ウ「ポリシーだよ!!!」
ロ「あっちもこっちも噛み合わないわねェ」

ナ「非実現デートはさて置いて、サンジ君はパークの何について知りたいの?レストラン?撮影スポット?バー?ホテル?」
サ「え?だから全部…ナミさんが気に入ったのを教えてよvv」
ナ「質問は1人1ジャンルに絞って!!でなきゃサンジ君だけに長時間割く事になってエコヒイキになっちゃうでしょー!?」
サ「じゃじゃあ、ホテルでお願いしマス…!」
ナ「ホテルで良いの?てっきりサンジ君は、レストランについて訊きたがると思ったのに」
サ「それはほら、ルフィがさっき訊いたから…!」
ナ「ホテルと言うか、宿泊場所は場内に3ヶ所、場外に2ヶ所在るそうよ。
  先ず場内から紹介すると――

  某国の老舗名ホテルをモデルに建てた、『ホテル・ヨーロッパ』。
  スパーケンブルグ、オレンジ広場の後ろに位置し、パークの中枢を担ってる、フラッグシップホテルだそうよ。
  チェックインはカナルクルーザーに乗って、ホテル専用の船着場から。
  このホテルは上から見ると口の字の造りで、庭園代わりに内海を持っているのよ。
  館内はまるで美術館、ポプリの香りがたち篭めていて、宿泊客は貴族気分を味わえるわ」

ロ「夜は建物全体が琥珀色に燈されるのね。側を流れる運河がその光を鏡の様に反射して、絵画の様に美しいわ」
ナ「素敵な写真でしょお?見ただけで泊りたくなっちゃうわよねーv」
ル「ナミが言ってた焼肉レストランと和食レストランと洋食レストランは、ここん中に有るのか?」
ナ「そ!『戎座』に『吉翠亭』に『デ・アドミラル』、場内で123を競う名店全て、このホテルに集合してるわ!
  てゆーか場内ホテルを統べる厨房が、このホテル内に在るらしいの」

サ「名ホテルに名レストラン在りか…第一候補は此処にすっかな。――ナミさん!それにロビンちゃんは、このホテルどう思う?泊ってみたいかい!?」
ナ「泊りたい♪♪」
ロ「1度は泊ってみたいわ」
サ「そ、それじゃあ俺予約しといて――」
ゾ「俺ァそういうホテルは趣味じゃねェな」
ナ「あれ?ゾロ起きてたの?静かだから寝てんのかと思った」
ゾ「居眠りしながら聞いてたよ。ハイソな宿だと居るだけで気ィ遣って安眠出来ねェ。もちっと身の丈に合ったトコにしねェか?」
フ「俺も居眠り剣士の意見に賛成だ!お高く留まってそうで、俺達にゃ居心地悪そうに思えねェか?」
ウ「マナーとか厳しそうだよなァ~。ドレスコードとか煩く有ったりして、下品な客はつまみ出されっかも…」
チ「え!?そんな恐いホテル、オレ泊りたくねェぞ!!」
ブ「その点は私、心配無いですね!身だしなみにも気を遣う紳士ですから!」

――ブッ!!!

ブ「あ、失礼!今屁をこいてしまいました!」

サ「どいつもこいつもデリケートぶりやがって…!高級だろうが王宮だろうが、テメェら今迄気ィ遣った例有ったかっ!!?」
ル「サンジの言う通りだ!どこに泊るにしたって堂々と入りゃあ良いじゃねーか!つまみ出されたら殴りこめ!!」
ナ「ルフィ、それ犯罪!」
フ「しかし正しい海賊の姿ではあるな!」

ナ「高級過ぎる所は気後れするなら、ちょっとランクを落として、『ホテル・アムステルダム』はどう?
  パークの中心に建ってて立地の面では最高よ。
  沢山買い物しても、直ぐに戻って置いて来れるわ。
  部屋は街側と海側の2タイプ有り。
  スタンダードでも45㎡と、ホテル・ヨーロッパのスタンダード以上に広々してるわ」

ロ「此処も綺麗な中庭を持ってて素敵だわ。外から見ると家が何軒も建ち並んでる様で、1軒のホテルに思わせない騙し建築も面白いわね」
ウ「ロビーはまるで神殿だな!…しかし大してランク落としてねェじゃん。此処も結構お高そうじゃね?」
チ「って事は此処もつまみ出されんのか!?」
ル「でもここに食いほうだいのレストラン有るんだろ?」
ナ「ビュッフェレストランの『ア・クールヴェール』ね」
ル「焼肉と食いほうだい、う~~ん…俺はどっちでも良いっつか、どっちも泊りてェなー」
サ「…おい待てお前ら!質問者は俺で、ナミさんは俺の事を考えてアドバイスしてくれてんだぞ!なのに割り込みしてんじゃ――」

ナ「ホテルじゃなくて『フォレストヴィラ』なんてのも有るわ。
  湖を囲む静かな森に隠された別荘村。
  2階建てのコテージは1階がリビング、2階にはベッドルームが2つも有って、グループや家族で泊るのにピッタリ。
  湖に突き出したウッドテラスに出れば、白鳥達が餌を貰いに近付いて来るわ」

ロ「御伽噺に出て来る家みたいで可愛いわvウッドテラスでゆっくり本を読んで過ごすのも良さそう」
ゾ「静かそうで安眠するにゃあ良さ気だな。今迄挙がった中では此処が1番気に入ったぜ」
ウ「けど同じ様な家が建ち並んでちゃ、ルフィやゾロは毎回迷って、帰って来れねェだろ」

ル・ゾ「「こいつと一緒にすんじゃねェ!!!」」

ウ「…自覚の無い迷子って本当に困り者だぜ。チョッパー、医学の力で何とか出来ねェの?」
チ「オレも日夜研究は続けてるんだけど、空間認識能力は本来経験から学習して身に着けてくものだし…」
フ「つまり学習能力が無ェって事か!」
ブ「ナミさんの爪の垢を煎じて呑ませてみるってのは如何でしょう?」
チ「それも既に試してみたんだ、ブルック。オレ、もう、どうしていいか解んねェ…!」
ロ「手の打ちようの無い難病ね」

ナ「場外に目を向けると、『ハウステンボスジェイアール全日空ホテル』と、『ホテル日航ハウステンボス』が有るわ。
  場外だから一旦パークを出なくちゃいけないけど、どちらも大浴場が有るのは嬉しいわ。
  加えて全日空ホテルは天然の温泉だって!」

ブ「温泉大浴場は良いですね!私、綺麗好きな紳士ですから、お風呂には拘りを持っていまして!」
フ「しかしおめェが入ると他の客ビックリ仰天して、湯から飛び出しちまうんじゃねェか?」
ウ「そこを狙って入れば、広い湯殿を俺達だけで独占出来るってわけか!」

サ「…温泉大浴場……湯上りの色っぽいナミさん&ロビンちゃんを観られるのは良いかもしれねェ…
  2階建ての広々としたコテージに3人泊り、右側のベッドルームにはナミさん、左側のベッドルームにはロビンちゃん、一晩行ったり来たりのハシゴ寝も男の浪漫…
  海を眺めるホテルにはトリプルルームも有ると言うし、3人仲良く枕を並べて寝るなんて、想像しただけで鼻血もの……
  クソォォオ…!!どれも美味し過ぎて1つに絞れんっ…!!」

ナ「それと場内に新しくキャンプ場がオープンしたらしいわ。
  調理器具にテントにシュラフまで貸し出してくれるから、手ぶらで行ってもOKで楽チン。
  街と自然が共生しているハウステンボスだからこそ楽しめる、贅沢な遊びをご体験下さいだって」

ル「キャンプが出来んのか!?それを早く言えよ!」
ナ「安全上の理由でキャンプファイヤーは×だけどね」

ル・チ・ウ「「「エ~~~!?キャンプファイヤー出来ねェの!?つまんねェ~~~!!」」」

チ「火を燃やさなくちゃキャンプじゃねェ!!」
ウ「まったくだぜ!キャンプファイヤー抜きのキャンプなぞ紛い物!」
ル「キャンプの夜はファイヤーやって〆んのがマナーだぞ!!解ってんのかお前!?」
ナ「私に怒らないでよ…テーマパークだもん、仕方ないわ。夏季限定で花火はOKみたいだから、それで我慢しなさい」

ル・チ・ウ「「「ブゥ~~~!!ブゥ~~~!!ブゥ~~~!!」」」

ナ「私にブーイングしたって無駄だってば!!!」
フ「キャンプファイヤーが出来ねェのは残念だが、バーベキューは出来るみたいだし、いいんじゃねェの?街中で楽しむキャンプも一興だ」
ゾ「堅っ苦しいホテルで寝るより、夜空を天井代わりに寝る方が性に合ってる」
ル「んじゃ皆、キャンプで良いか!?異議の有るヤツいねーな!?」

ゾ・ウ・チ・フ「「「「異議無しっっ!!!!」」」」

ナ「ちょっと待って!!大いに有るわよ!!…折角リゾートシティで過ごすってのに、何時もと変らずキャンプだなんてガッカリだわ!」
ロ「素敵なホテルが近くに幾つも建ってるのに、泊らないのは勿体無いと私も思うわ」
ル「なんだよ!?だったら女だけでホテルに泊れ!俺達男は楽しくキャンプすっから!」
ナ「そうさせて貰うわ!――ね、ロビン!最初は何処に泊る?」
ロ「そうね、何処にしようかしら?迷うわ」


サ「…あ、あれ?気付いたらレディ2人との間に見えない壁出来てね??俺が悩ましくも甘美な妄想に耽ってる間に一体何が起きたってんだ??」

フ「おう!随分長い事考え込んでたじゃねェか!」
ル「話し合いの結果、女はホテルに泊って、男は外でキャンプする事に決まったんだ!サンジもそれで良いだろ!?」
サ「エエエ!?あ、や!お俺もどっちかっつうと、ナミさんやロビンちゃんと一緒にホテルに泊りたいなーなんて…」
フ「んだとテメェ!?男のクセして俺達裏切ろうってのかァ!?」
ゾ「ホテルに泊ろうったって、あいつら2人で泊る気でいるぜ。おめェ独りで寂しく泊る気か?」
サ「そそそんな…!!俺も一緒に泊りた――」

――チョンチョン!

サ「ん?何だブルック?」
ブ「…実は私も言い出せなかったんですが、ホテルに泊りたかったんですよ。サンジさん、一緒に泊ってくれます?
サ「フザケんなっ!!!何っっで俺がテメェなんかと…!!!」
ブ「そう仰らずに泊って下さいよ!独りじゃ寂しくて…ね!良いでしょ!?」

ゾ「おいルフィ!スキモノコックはブルックとホテルに泊るらしいぞ!」
ル「え!?ブルックとか!?」
ウ「信じられん、サンジが男と2人っきりでホテルに泊るなんて…!」
フ「熱々だな!」







…写真は初夏のホテルヨーロッパ。
※ハウステンボスのキャンプ場ではキャンプファイヤー出来ます!!…嘘吐いて御免。(汗)
キャンプ場についてはこちらを。(→http://www.huistenbosch.co.jp/stay/camptenbosch/index.html)
※それと場内に新しく「アクティビティハウス」と言う、アパートメント型滞在宿泊施設が出来ました。
電子レンジ、炊飯器、洗濯機が有り、ここもキャンプ気分に浸るには良いかも。
(→http://www.huistenbosch.co.jp/stay/topics/acthouse.html)

ハウステンボスの場内外ホテルは何処もクオリティ高いです。
とはいえ各ホテルのメリット&デメリットについて、予約しようと考えてる方は知りたいと思うんで、↓に纏めて簡単に。(あくまで個人的見解です)

・ホテルヨーロッパ
メリット)…部屋のタイプ様々、至れり尽くせりのサービス、クルーザーで入館出来る、レストランのレベル高し、ルームサービス有
デメリット)…何故か部屋のトイレに鍵が無い

・ホテルアムステルダム
メリット)…部屋が広い、冬は街側泊まるとイルミネーションが綺麗、繁華街の中心
デメリット)…レストランはビュッフェのみ

・フォレストヴィラ
メリット)…広い、風呂と洗い場が分かれてる、環境が良い、白鳥に餌をやれる
デメリット)…パークから遠い、専用レストランが休んだり営業したり

・全日空ホテル
メリット)…温泉大浴場が有る、レストランのバリエーションが豊富、高い階からパークの全景が見渡せる、此処もクルーザーで入館出来る
デメリット)…朝パークを散歩出来ない、駐車場側に泊ると眺め悪い

・日航ホテル
メリット)…大浴場が有る、家族向けのサービス、リーズナブル
デメリット)…部屋が狭い、窓が小さい、同じく朝パークを散歩出来ない、部屋によっては眺め悪い

他にも『ホテルローレライ』、『西海橋コラソンホテル』というのが有るけど、少し離れた所に建ってるので、ハウステンボス観光をメインに置くなら、あまりお薦めしない。

・場内ホテルについての紹介頁(→http://www.huistenbosch.co.jp/hotel/)
全日空ホテル
日航ホテル

ワンピース目次にバトンから生れた作品を繋ぎました。
結果的に各キャラの誕生日企画になったという。(笑)
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上陸!ハウステンボス!!その8

2010年07月29日 23時23分42秒 | ワンピース
前回の続き】

※ル=ルフィ、ゾ=ゾロ、ナ=ナミ、ウ=ウソップ、サ=サンジ、チ=チョッパー、ロ=ロビン、フ=フランキー、ブ=ブルック、の台詞です。






ナ「それじゃ3番、ウソップ君お座りくださァい♪」
ウ「よっしゃあ!!座ってやろうじゃねェか!!宜しく頼むぜ!旅のアドバイザー!!」

フ「今回はのっけからテンポがノリノリだな!」
ゾ「お調子者だけに、テンポの上げ下げは得意だろ」

ナ「ではウソップ君、貴方が今回上陸する島で楽しみたい事は何でしょう?」
ウ「ん~~~…俺はショッピングだな!ってな訳で、此処は1つ、お友達に差を付けるイカシた土産の数々を紹介してくんねェか?」
ナ「だったらこんなのはどう?――じゃん♪『龍馬ちゅーりー』縫ぐるみ♪龍馬独特の、懐に右腕突っ込むポーズを決めた、可愛いチューリップの縫ぐるみは、ハウステンボスだけで販売しているオリジナルです♪」

ウ「…………あのな、そんなキュートな縫ぐるみ薦められても困るだけなんだが……」
ナ「何よ、気に入らない?だったら『龍馬テディベア』の縫ぐるみは?」
ウ「いやだから熊に替えりゃ良いってもんじゃなくて…!!」
ナ「熊が駄目なら兎はどう?ミッフィー生誕55周年を祝って登場したアニバーサリー縫ぐるみ2,100円♪ビネンスタッド地区に在るミッフィーグッズ専門店『ナインチェ』では、今年55周年に因んで550個限定5,500円のプレミアムグッズ入りお楽しみ袋をご用意して貴方をお待ちしていまーす♪」
ウ「熊も兎も要らん!!男に縫ぐるみ薦めてんじゃねェよテメェ!!!」
ナ「えーー?可愛いのに…」

サ「おいコラ調子に乗んじゃねェぞタラコ唇クソっ鼻!!勿体無くもナミさんから薦められた数々にケチ付けやがって!男だったら断らずに笑顔で全部買い上げろ!!そして薦めてくれたナミさんにプレゼントするぐれェの甲斐性を見せてみろよ!!」
ウ「俺が求めてるのは自分用の土産だ!!なのに何でナミにプレゼントしなくちゃなんねェんだよ!?」
サ「おめェこそ何言ってやがる!土産ってのは元来自分用に買うもんじゃねェ!人にあげてこその物だ!!」
ウ「べ別に良いだろ自分に買ってやったって…!訪ねた土地の思い出を忘れないよう、自分の為に記念品を買うのだって、世間的に土産と呼んでるだろぉが!」

サ「てめェの為に土産を買えば満足か…?」
ウ「いいいやその…自分だけに買うわけじゃあ…勿論カヤやタマネギ達にも買う積りでいるって…!」

サ「……この…エゴイストめ…!!」
ウ「ガーーーーン…!!!!

チ「ああ!?ウソップがサンジの一言で物凄いダメージを食らった…!!」
ロ「ブルック、どうやら出番のようよ」
ブ「任せて下さい!曲目はトッカータとフーガニ短調!!ヴァイオリンですが弾かせて頂きます!!」

――ヒャラリィ~~♪ヒャラリラリィ~~~♪

フ「何もあそこまで酷く責めなくてもいいだろうに…グルグルコックも人が悪ィぜ…!」
ル「ウソップ、しばらく立ち直れねーかもなァー。だったらサンジ、メシにしようぜ!!」
サ「ん?そういや昼飯まだだったな。じゃ、クソっ鼻が立ち直るまで、飯食って時間潰すか!」
ル「うっし♪メッシメッシメッシィ~~~~♪♪」
フ「………つくづく人の悪ィ奴らだな」



――只今食事中ですので、暫くお待ち下さい――



ナ「ウソップ…少しは立ち直った?」
ウ「アアア~~~?」
ナ「はいこれ、サンジ君があんたに作ってくれたオムライス!これを食べて、元気を出して!」
ウ「なァ…ナミ…俺はエゴイストか…?」
ナ「気に病む必要無いわ!どんな人間だって自分が1番大事だし、自分を基準にして他人を思い遣るしか出来ないでしょ?」
ウ「そうかなァ…?そうだよなァ~~…」

ゾ「…段々旅のアドバイザーから離れて行ってるな」
フ「あれじゃまるでお悩み相談室のカウンセラーだぜ」

ナ「でさ、話を元に戻すけど、こんな土産はどう?」
ウ「おおおこれは…!見事な火縄銃に長剣じゃねェか!!こんなイカシた土産売ってんなら最初から紹介してくれよ!」
ナ「格好良いでしょ?でも残念ながらレプリカなの、それ」
ウ「レプリカ!?玩具かよ!!?」
ナ「ミュージアムスタッド地区『フィギュアヘッド』は、パイプに帆船モデルに、店名にもなってる船首像と、海に関連した輸入雑貨を揃えてる怪しげな土産処で、少年心をくすぐる長短剣や銃も売ってたりするけど、そこはテーマパークだから、安全を考えてレプリカなのよねェ~」
ウ「…海賊にレプリカ武器薦められてもなァ~~」
ル「いーじゃねーか!オモチャだってカッコ良ければ!」
サ「まァ、てめェはそういう性質だろうな」

ナ「パンフで紹介された土産をざっと見た限り、ハウステンボスで売ってる土産の多くは女性向けで、今時だったら宮廷画家ルドゥーテが描いた薔薇絵がプリントされた雑貨なんかが目玉みたい。ちなみに売ってるのはパレス美術館2階だって」
ロ「まァ素敵vリアルな画調なのに、花弁に透明感が有って、ロマンティックな美しさね。欲しくなっちゃいそう」
ウ「男が花雑貨なんて買えるかよ…」
ナ「だからさ!カヤさんにプレゼントする気持ちで選んだら?」
ウ「…そういう考え方も有るか」

フ「何気にグルグルの意向に沿って来たな」
サ「ナミさん…!やっぱり貴女は俺の理解者だ…!」
ゾ「いや単に女としての見地からアドバイスしてるだけだろ」

ウ「カヤへのプレゼントは悩まず済むとして、タマネギ達への土産もその『フィギュアヘッド』とやらで適当に見繕うとして…やっぱ自分にも1つ位土産欲しいぜ…何かねェの?」
ナ「食べ物じゃ駄目?それならあんたのお眼鏡に適いそうな物、結構見付かると思うんだけどな」
ウ「ルフィじゃあるまいし…俺はそんな食い意地張ってねェぜ!」
ナ「例えばこの『キャラメルチーズケーキ』とか…」
ウ「どれどれ?――うおっ!?このケーキ滅茶苦茶美味ェじゃねェか!!こってりしたチーズにキャラメルの風味がマッチして何とも新しいぜ!!」
ナ「地元豆乳で作ったクリームをスポンジで巻いた、『佐世保豆乳ロールケーキ』とか…」
ウ「こここれも抜群に美味ェェ!!絶品のクリームにしっとりしたスポンジの組み合わせが芸術的マリアージュ!!」
ナ「『ガトータンドル』って名前の、チーズクリームを包んだスポンジ饅頭とか…」
ウ「フレッシュチーズそのままの自然な甘味!…これは至高の饅頭と表現しても差し支えないだろう!!」
ナ「龍馬をイメージして作ったオリジナルチョコ『幕末貯古齢糖』も、他の所じゃ口に出来ない味かもね」
ウ「確かにこれは…!炭墨そっくりの地味な見た目を裏切る洗練されたチョコの味…胡麻のプチプチ感を閉じ込めた生チョコとは、おのれパティシェめ、中々やりおる…!!」

フ「…なんか漫画が違って来てねェか?」
サ「気のせいかウソップの声が海賊王のロジャーに似て聞えるぜ」
ル「ウソップばっかり美味いもん食ってんなよズッリィなァ!!俺にも食わせろ!!」
チ「オレもオレも!!甘いもん食いてェ!!!」
ナ「じゃあ皆で味見する?そう思ってサンプル全員分用意して貰ったの」

――パクッ…!!

ル「うんめェェ~~~~!!!このキャラメルチーズケーキ、舌の上でとろける美味さじゃんか!!」
ナ「なんでも某所で開催された全国チーズケーキ博覧会で1位を獲得したって話よ」
チ「オレこのクリームたっぷり巻いたロールケーキが甘くて好きだァ~~vv」
フ「菓子だけでなく、パンもチーズもソーセージも、美味ェもんばっかじゃねェか!チーズに醤油とカツブシ葱なんて初めてかけたが、結構合うもんなんだな!目から鱗がコーラダッシュで落ちたぜ!」
ブ「ヨホホホホ♪タレを付けて干して焼いて作るという焼アゴも、美味しく戴ける上にカルシウムたっぷりで良いですねェ~♪私、古傷が全部消えてしまいました!」
ロ「私はこの生ワインが気に入ったわ。栓を抜いて数日経つと違う風味を楽しめるんですって?不思議ね」
ナ「1本で何回も味が楽しめるってお得よねェ~~♪」
ゾ「俺はもうちっと辛い方が好みだがな」

サ「うん!良い葡萄を使って造られてる!生ワインは有機栽培か減農薬栽培された葡萄を使用して、無濾過か軽く濾過して瓶詰めした物で、酵母菌が生きたままだから、抜栓後味が美味しく変化するのが特徴なのさ。肥料も土壌も栽培の仕方も天然・自然に拘る分手間が懸かる。それを惜し気も無く安価で提供する心意気が料理人として気に入ったぜ!」
ウ「フフフ…ハウステンボスめ…!上陸するのが楽しみになって来おったわ…!フフフフ…!ハハハハハ…!!ファ~~ッファッファッ…!!!」

ゾ「すっかりキャラが違ってやがる」
サ「他人に影響され易い性質なんだろ」








…海賊王ロジャーは「美味しんぼ」の海原雄山先生と同じ声の方が演じておられます…という声優オタネタ。(汗)

ハウステンボスの土産は全体的に女性向けだなぁと思う。
少年向けの土産はあまりない…エッシャーグッズとか、写真のマリン雑貨屋「フィギュアヘッド」で扱ってる物位かなと。
ちなみにフィギュアヘッドの店周りに散らばってる舵輪なんかは本物らしい。

↓は自分的お薦め土産店。

・リンダ(ブルーケレン)…テディベアショップ

・ブールンカース(キンデルダイク)…チーズ屋、試食の際、トーストしたパンに載せて振舞ってくれたり。

・チョコレートハウス(ニュースタッド)…チョコレート専門店、滝までもがチョコレート。

・フィギュアヘッド(ミュージアムスタッド)…ワンピースファンなら立ち寄らにゃあ

・アンジェリケ(ビネンスタッド)…オリジナル香水売ってます
・ホーランドハウス(ビネンスタッド)…オランダ雑貨店、店頭のでっかい木靴が目印
・エステラ(ビネンスタッド)…チューリップ染め
・びーどろ(ビネンスタッド)…硝子雑貨屋、季節物が可愛い
・島(ビネンスタッド)…ヤングにも買い易い、茶碗とかの和雑貨
・ナインチェ(ビネンスタッド)…ミッフィーグッズ
・ギャラリーハウス・ビス…ステンドグラス、観てるだけでも綺麗
・クロントン(ビネンスタッド)…アジア雑貨、だけでなく呪いっぽいアイテムなんかも有
・グリッター(ビネンスタッド)…真珠アクセサリー店、大村湾は真珠の有名な産地です
・柿右衛門ギャラリー(ビネンスタッド)…赤絵磁器の名品ギャラリー、手に入る値段じゃないのが殆どだけど目の保養にどぞ

・マイスターズドリップ(マルシェ・ド・パラディ)…珈琲専門店、喫茶としても利用出来ます
・オー&コー(マルシェ・ド・パラディ)…オリーブオイル専門店
・マジェスティーズブレンド(マルシェ・ド・パラディ)…紅茶やジャム等
・グランシェフ(マルシェ・ド・パラディ)…ハウステンボスオリジナルのソーセージにハム、ベーコン等々
・タンテ・アニー(マルシェ・ド・パラディ)…職場への土産は此処の菓子が1番
・ラフレシール(マルシェ・ド・パラディ)…人気のキャラメルチーズケーキは此処で売ってます
・ル・フロマージュ(マルシェ・ド・パラディ)…扱ってるチーズの種類は此処が1番多いのでは
・ヘクセンハウス(マルシェ・ド・パラディ)…バームクーヘンも美味いがクッキーも美味い
・ロゴグラム(マルシェ・ド・パラディ)…ハウステンボスオリジナル雑貨
・DEJIMA(マルシェ・ド・パラディ)…地ビールに焼酎、おつまみも沢山置いてます
・ディオニソス(マルシェ・ド・パラディ)…ワイン専門店、試飲が気軽に出来て嬉しい

・カフェデリ・プリュ(ユトレヒト)…ホテルヨーロッパクオリティの味、2011年現在『幕末貯古齢糖』は販売終了してるかもしれない(※後日談)

・キューケンホフ(スパーケンブルグ)…ハウステンボス老舗の花雑貨屋
・シーブリーズ(スパーケンブルグ)…場内宿泊者に嬉しいモーニングマーケットは、毎週土日7時半~9時迄この店で開催

・スキポール(出国棟)…場内の大半の土産を揃える総合ショップ

…他に場外の全日空ホテル1階の土産処は人気の土産を集めて売ってるので、選ぶ時間の無い人には有難い。
日航ホテル内ラヴァンドルのレジで売ってる焼き菓子は安くて美味いです。
「カフェデリ・プリュ」、「ディオニソス」については、まったりさんのブログで詳しく紹介されてますよ。


ワンピース目次にバトンから生れた作品をリンクしました。
この年は何だか変わったバトンが多く回って来たな~。(笑)
このバトンを回して下さった真牙さんは、出来た話を快く(?)受け取って下さったのです。
しかもこちらの我儘を呑んで、長崎ハウステンボスと大文字で入れてくれて。
その優しさとノリの良さに心から感謝!
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上陸!ハウステンボス!!その7

2010年07月28日 23時02分16秒 | ワンピース
前回の続き】

※ル=ルフィ、ゾ=ゾロ、ナ=ナミ、ウ=ウソップ、サ=サンジ、チ=チョッパー、ロ=ロビン、フ=フランキー、ブ=ブルック、の台詞です。






ナ「それじゃ此処で選手交替!ゾロ、いらっしゃい♪」
ル「だってよ!ゾロ、タッチ!」
ゾ「俺まで参加しなくちゃいけねェのかよっ!?」
ナ「何言ってんの、当然でしょ?楽しい遊びは皆で分かち合うのが、一味のルールじゃない!」
ゾ「楽しんでるのはテメェだけだ!!!……ハァ…しょがねェ、付き合ってやっから、さっさと始めろよ!」
ナ「何その尊大な態度!?あんた、自分の役所解ってる!?私が旅のアドバイザーで、ゾロはされる側なんだって事、忘れないでちょうだい!」
ゾ「…同じく初上陸するビギナーからアドバイスされてもなァ…観光の仕方なんて、各自好き勝手で良いだろ!」
ナ「1番ガイドが必要な奴がよく言うわ!」
ゾ「どういう意味だよ!?」
ナ「独りじゃどっこも行けないキング・オブ迷子のクセして、アドバイス必要無いとか、どの口でほざくのかしらァ?」
ゾ「俺が何時何処で迷った!?出鱈目ぬかしてんじゃねェ!!!」

サ「クソォ~~…ハゲ藻のクセして、ナミさんと親しく語らいやがって…!」
チ「サンジが血の涙を流して悔しがってるぞ」
フ「あれが親しく語らってる図に見えんのかねェ?」
ブ「BGMに懐かしの火サスのテーマを弾きたくなるよな険悪ぶりですよね。宜しければちょっと弾いてみましょうか?ヴァイオリンソロには適さない曲ですけど」
ロ「あら、でも喧嘩するほど仲が良いって言うじゃない?」
ル「てゆーかゾロっていつまで経っても方向オンチ自覚しねーのな」
ウ「そんな事ぬかすテメェにも、俺は容赦なくツッコミかましてェけどな」

ナ「今から上陸するハウステンボスは大人のテーマパークよ。大半の店が上等な酒を置いてるってのに、道に迷って辿り着けず、船に戻って独り酒してる寂しいあんたの姿が目蓋に浮ぶわ」
ゾ「失礼な未来予想図、目蓋に浮かべてんじゃねェ!!!――というのは一旦置いて、大半の店が上等な酒置いてるっつうのはマジか!?」
ナ「マジよ。酒を出さない店を数えた方が早い位みたい」
ゾ「ヘェ…悪くねェ所じゃねェか。中でも良さ気な酒場は?」
ナ「え~と、向うから送って来た情報によると…」
ゾ「だから一々パンフ見ながら話すのは止せって!おめェの目から見て、良さ気な店を挙げてくれりゃあ良い」

ナ「私の目で見て判断するに、総合評価で最高は、ホテル・ヨーロッパ内ラウンジ、『シェヘラザード』になると思うわ。
  フッカフカの高級ソファで寛げて、ワインにビールにウィスキーに地酒にカクテルと、色んな種類のお酒が呑めるんだって。
  ホテルだから店員のサービスも超一流。
  さっきも言ったように今なら生ビール呑み放題フェアをやってるし、加えて土地の英雄坂本龍馬に因んで、彼をイメージしたカクテルや焼酎を出すフェアも開催してるそうよ」

ル「さかもとりょーまって、どんなやつだ?」
ナ「敵対してた2つのグループを結び付け、国に夜明けをもたらそうとした志士だって。海へ出ようと仲間を集めて貿易会社を興したり…」
ウ「話聞いてるとルフィに似たイメージ浮かべちまうな」
ゾ「ルフィに似てんのか?じゃあ気分屋だな」
ル「気分屋とは何だ、ゾロ!!しっけーなやつだな!!」
ウ「お前実は意味解らず怒ってるだろ?」
ゾ「そのりょうまはさて置き、他にはどんな店が有るんだ?」

ナ「他にはアムステルフェーンとか…海辺に5つの酒場が密集してる建物を指してそう呼ぶんだけど、居酒屋にミニシアターにカラオケクラブにパブとタイプも様々で、深夜まで楽しめる、酒呑みには天国のスポットよ」
ゾ「居酒屋が有んのは有難ェな。酒は美味けりゃ何でも構わねェが、ワインバーの雰囲気は、俺にはあまり馴染めねェし」
ナ「『按針』って名前の居酒屋で、確かにゾロの好みに1番はまる店かもね。
  焼き鳥や御飯物も置いてるし。
  カラオケクラブは『パロット』って名前で、歌って呑んで騒げるグループ向けの店。
  ミニシアター『ムーンシャワー』ではカクテル片手に、マジックショーやものまねコントやクラシックコンサートを観賞出来るんだって。
  『カフェ・ドハーフェン』は如何にも港の酒場って雰囲気のパブで、私達海賊が呑むにはぴったりな所かも。
  『グランキャフェ』は喫茶としても営業してて、女の子好みのスイーツが美味しいと評判。
  バーテンのカクテルを作る手際も見事で、酒呑みと下戸双方から愛されてる店みたい。
  ペット同伴、喫煙OKだから、チョッパーもサンジ君も、ゆっくり寛げると思うわよ♪」

チ「オレはペットじゃねェぞ!!!」
サ「あああvvナミさんが俺の事を気に懸けてくれた…vvv」
ブ「あの…骸骨は同伴OKなんでしょうか?」

ナ「ルフィの番の時に紹介した佐世保グルメストリート内にも、バー&カフェ『サルソウル』って店が有るし、場外になるけど全日空ホテルの最上階ラウンジ『アストラル』は、パークの全景を見渡しながらカクテルが呑めるという、展望の点で随一の店よ。
  酒場じゃないけど、名酒を土産に買うなら、ビネンスタッド地区マルシェ・ド・パラディ内『ディオニソス』と『DEJIMA』ね!
  『ディオニソス』はワイン専門、『DEJIMA』はそれ以外、特にビールや焼酎を多く置いてる店で、今丁度世界のビールフェアを開催中、150種類を一堂に揃えてるそうよ!
  隣り合ってて、どっちも試飲OK、おつまみ類も置いてるから、酒呑みなら忘れず寄りたい所ね♪」

ゾ「ホテルの上品なラウンジは柄に合わねェ…が、ビール呑み放題は見過ごせねェな。だったら、その後にハーフェン、按針と続けて呑みに行かねェか?」
ナ「暮れてく空を眺めつつ外でってのも良いんじゃない?サルソウルで1杯引っ掛けてから、シェヘラザードで優雅にビールを呑み干し、グランキャフェ、ハーフェン、按針とはしごするってのは?」
ゾ「5ヶ所も廻んのかよ?まァ、悪くねェけど…んじゃその予定組みで行くか?」
ナ「OK♪その誘い、ノったげる!」

サ「クソォォアア~~~…!!ハゲ藻のクセして、ナミさんをデートに誘いやがって…!!」
チ「ああ!?サンジが血反吐まで吐いて悔しがってる!!」
ウ「デートって風にゃ見えねェが、あれは羨ましがってもいいかもな」
ブ「良いですねェ~~。BGMに『男と女のラブゲーム』を弾きたくなるよな親密ぶりです。ちょっと弾いてみましょうか?」
ロ「駄目よブルック、その曲は危険だわ。2人帰らなくなっちゃうかも」
ル「なんだよ2人だけで遊びに行く相談しやがって、ズリィぞ!俺も連れてけ!」
サ「あああ俺もォ~~!!俺も行くゥゥ~~~!!!」
ウ「んじゃ俺も!」
フ「俺も付いてってやるぜ!」
ロ「ふふv私もお邪魔虫で付いて行こうかしらv」
チ「皆が行くならオレも行くぞ!!独りなんて嫌だ!!」
ブ「あの…では私も御一緒に…お邪魔しませんから、連れてって下さい」
ル「よし!じゃ、結局皆で行くって事で良いな!」
ナ「駄目よ!!皆で行ったら、しんみり呑めないじゃない!!」
ゾ「右に同感だ!」
サ「テメェ、何故そんなにも2人っきりで呑みたがる…?さては送り狼を狙ってやがるな?この毬藻なだけにムッツリめ!」
ゾ「自分がそうだからって他人も同じだと思うなよ、回転コースター眉毛!」
ロ「第一、ナミ1人で迷子をお守するのは大変じゃない?」
ウ「一瞬でも目を逸らしたら予想外の方向に進むファンタジスタだからな」
ナ「その辺は大丈夫よ♪パークはペット同伴可って事だし、首輪に鎖付けて引っ張ってくから♪」
ゾ「俺は迷子でもペットでもねェ!!!」
ル「うはは♪ゾロにチョッパーがうつったぞ♪」
サ「良いなァ~~~…!俺もナミさんに鎖で繋がれて引き摺り回されてェ~~~…!!」
チ「サンジがすっかり変態だ!!」
フ「チッ!軽く上行かれちまったぜ…!俺も更なるスーパーな進化を遂げねェといけねェな…!」







…ミュージアムスタッドに新しく出来た『GMAレストラン』も酒が呑めるし、ハウステンボスではアルコールドリンクを用意してる店がデフォ。
個人的に気に入ってるのはシェヘラ、グランキャフェ。
昔カフェ・デ・ハーフェンに『サウザンド・サニー』って名のカクテルが在ったと、まったりさんのブログに写真付きで紹介されてた気がしたが…ワンピイベント開催中の今、復活して欲しいカクテルである。
ハウステンボスでは、イベント屋台でも酒を提供する。
屋台で在りながら、レベルは本格的。
全日空ホテル内のアストラルは、JRが関ってるホテルらしく、『エクスプレスカクテル』と名を付けて、JR九州の特急をイメージしたオリジナルカクテルを呑めるのが楽しい。
『ゆふいんの森』とか『白いかもめ』とか…鉄道ファンにはお薦めかもね。
各店のメニュー等詳しい情報については、まったりさんのブログを御参考になさって下さい。
夏休みに入って飲食店にかなり変化が起きてる事だし。(汗)
ホテル・アムステルダム内『オークラウンジ』が、ご好評に応えてかバーラウンジとして営業再開したらしいし。
あそこはひっそりと孤独に呑むには、最も適した場所ですよ。

写真はワールドビアフェスタ開催中の『DEJIMA』。


ワンピース目次に過去作数本リンク繋ぎました。
このブログに元から上げてたもので、日付変わっちゃう為上げはしませんでしたが。(汗)


それと8/4~、最近ハウステンボスに行った際のレポを上げる積り。
ワンピファンがナミ誕目当てで多数訪れてる今の内に上げなければ…!
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君は船の女神、僕はその船の大工 その4

2010年07月24日 13時03分22秒 | ワンピース






麦藁海賊団の新クルー、パウリーの朝は誰よりも早い。

薄靄立ち込める夜明け前から、前の船より数倍広くなった船内を、念入りに点検して回るのが彼の日課だ。

朝起きて――(中略)――グルリと見廻る。

この日も同じだった。




杖を支えに満身創痍の体を引き摺り、甲板へ向う。
風に靡く青々とした芝生を目にした途端、パウリーの体から力が抜け、その場にどうと崩れ落ちた。
手放した杖が、彼と同じく芝生の上に、ぱったりと身を投げる。
倒れた先には女が1人、朝陽の昇る方角を、一心に見詰ていた。

パウリーの胸に昨夜の屈辱が蘇り、沸々と女への憎しみが込み上がって来る。

あれから彼は一睡もしていないのだ。

女は今日も普段と変らず、下着の様な薄い布地の、丈の短いワンピースを着ていた。
潮風がヒラヒラと裾を弄り、彼女の白い腿を剥き出しにする。
募る憎々しさから、パウリーは女に聞えぬよう、悪態を吐いた。


「何時か飼犬に噛まれて泣きやがれっ」


直後――ゴォォン!!!と、彼の脳天に重い踵が突き刺さった。


「物騒な呪い吐いてんじゃねェよ!!まだ懲りてねェのか?クソ強姦魔!」


地にめり込んだ顔を起し、不機嫌を露に振り返る。
そこには何時の間に近付いたのか、彼に負けず劣らず不穏なオーラを纏ったサンジが立っていた。


「…だから冤罪だって何度言わせる気だ?俺はあの魔女に嵌められたんだ!…お蔭でハレンチ男の称号戴くわ、親にもされた事の無ェ辱めを受けるわで、男の面目丸潰れだぜ!呪いの1つも言ってやりたくなって当然だろっ!!」
「ああ、確かにな。あれほど魅力的な女(ヒト)だ…理性が欲望に負けて、ついフラフラと押し倒したくなるのも当然。男として、てめェの気持ちはよく解るぜ」
「言ってねェだろ、そんな事!!!いいよもう、お前!キッチン戻って味噌汁でも作ってろ!」
「生憎今朝はスープだ」
「スープかよ!?朝は味噌汁にしてくれって言ったろ!!」


ちっとも噛合わない会話に焦れてパウリーが喚く。
しかしサンジの右目は、半身を起して自分を睨むパウリーを通り過ぎ、夜明間近の海を眺めて立つ女に向けられていた。


薄暗かった水平線が、何時の間にか桃色に染まっている。
間も無く朱い陽が顔を出し、海上に黄金色の橋を架けた。
女のたおやかなシルエットが、男2人の下にまで伸びる。
存在に気付いて居るのか居ないのか、彼女は黙って海を見詰ていた。


「嗚呼ナミさん!!君は女神!!麗しき船の女神…!!」


突然サンジが、感極まったように両手を広げて叫んだ。


「天使じゃなかったのか?」

「女神で天使で天女で妖精なんだ!!ナミさんは!!」

「…だからもうキッチンに戻れって、お前」


最早コックの心は、パウリーには手の届かない天上の楽園に行ってしまっているらしい。
夢見がちな瞳の中には、雲の上を散歩する天使やら、花園を舞う妖精やら、人魚の泳ぐ泉やら…言葉で表現すればロマンチックであるけれど、要は裸の美女達の王国がそこには広がっていて、中心に建つ黄金宮殿の玉座には、きっとあの女が女神として君臨しているのだ、それも裸に近い姿で。

まともな会話が成立しよう筈も無い…今更に気付いたパウリーは、芯から空しさを覚えた。

せめてもの腹いせに、精一杯の皮肉をぶつけてやる。


「そんなに汚れ無き『女神』で居て欲しいなら、もっと『男』って生物を懇々と教えてやるんだな。残念ながら世に居て取り巻く奴等の殆どは、女神と違い清廉じゃねェ。知らせず居たんじゃ、何時か泣きを見せちまうだろうよ」


てっきりまた踵を落とされるかと身構えていたが、サンジは黙ったままで居た。

無言で内ポケットを探り、煙草とライターを取り出す。
そうして頬杖を突くパウリーの横へ来ると、だらしなく足を伸ばして座った。
パウリーもそれに倣い、体を起して胡坐を掻く。

彼の横で1、2度吹かした後、サンジは火の点いた煙草をナミに向けて言った。


「…ナミさんの左肩に、刺青が有るだろ?」


問われて「ああ」と頷く。

実はそれも「気に喰わない」ものの1つだった。
綺麗に産んで貰った体を傷付ける行為に、腹立たしさを感じていたのだ。


「あれな…以前は違う図柄だったんだ。その頃の彼女は刺青を隠して、袖の有る服を着てたんだぜ」


そこで一旦区切って煙草を吹かす。

ぷかりと浮いた煙が白い糸の様になって、後ろに流れて行った。


「で、俺たちと会って……今の刺青に変えたのさ」


それ以上サンジは説明しようとしなかった。

しかし話さなくても解る。

以前は隠していたという事は、その刺青は彼女の意思で入れたものではなかったのだろう。
それがこいつらと会ったのを機に、刺青を新しく彫り直し、以来隠さず居るようになったと…
言わば今の刺青は「呪縛からの解放」を意味している訳で…


思い起せばアクア・ラグナを越えようとした女だ。
思い起せばエニエス・ロビーに喧嘩を売った女だ。

「世間を甘く見ている小娘」だなんて、どうして考えたのだろう?
彼女も荒くれた大海を渡る、海賊の1人なのに。


いたたまれない気持ちになって、葉巻を1本取り出す。
透かさず脇からサンジが火を寄越した。
「ん」と軽く礼を示して、咥えた葉巻を近付ける。
吹かした葉巻の尻から煙が糸の様に棚引き、先行する煙と絡んで消えてった。

朱かった陽の光は黄金色に変り、前に立つ航海士の髪をも金色に輝かせる。


ふと仲間だった女の姿が、彼女の姿に重なって見えた。


「肌を露にしてられるのは、信頼している証と言うなら……」



――あの女も、俺を信頼してはいたのだろうか?



呟いたのを耳にして、サンジが怪訝な顔を向ける。
慌てて首を振り、「何でもねェ」と誤魔化した。
すると彼の態度を誤解でもしたか、サンジは牽制するかのように、こう口にした。


「ま、俺だって男だ、不埒な考えを持ってなくも無い。
 けど海の上で無体な真似は働かねェさ。
 彼女は海から愛される、船の女神。
 海の上で手を出したら、海神の怒りに触れて、船沈められちまうからな!」


ニヤッと笑う瞳は海と同じ蒼い色で、パウリーは「ああだからこいつはあの娘に御執心なんだな」といたく納得する。
きっと海神とやらの目も同じ色に違いない――そんな想像をしたりした。



仕事が済んだのか、前に立つナミが男2人の方を振り返り、明るい声を上げた。
それを合図にサンジが立上り、回転スキップしながら近付いて行く。

パウリーは胡坐を掻いたまま、片手を挙げて応えた。



海は空と陽を映して眩しく煌き、サニー号の1日は今日も始まる。





アイスバーグさん、元気にやってますか?

時々死に掛けたりもするけれど、俺は元気です。

この船の連中ときたら、毎日毎日船を壊してくれて、俺は一時たりとも気が休まりゃしません。

けど連中は笑ってこう言うんです。


『この船には女神が居るから大丈夫』


『女神が笑って居る限り、船は絶対沈みはしないんだ』ってね――





【終わり】



…「見え過ぎちゃって困るの」の続作っつうか、前作があまりにアレな出来だった為、リベンジの積りで書いた作品。(汗)
これに限らず、出来る事なら今迄書いた作品全部書き直したい…。
勿論書いた当初は「自分天才じゃん!?」なんて、自信たっぷり世に送り出すわけですが、時間が過ぎると共にその気持ちは先細りしてく。
そして「今だったらもっと上手く書ける!」という思いを募らせ、リベンジしてはまた先細りを繰り返し、結果同じ様な作品ばっかり増えるだけという。(汗)
ワンピ二次創作ならぬ、ワンパ二次創作である。

しかし二次創作してて面白いと思うのは、原作ファンにとっての本物は「原作」で在りつつ、ファンそれぞれに思い描かせると、それぞれ似て異なる世界を現出させる事と言うか…。
ファンにとってはルフィもゾロもナミもウソップもサンジもチョッパーもロビンもフランキーもブルックも、原作に登場する彼らこそ本物で独りしか在り得ない筈なのに、脳内から生れ出る者は原作で見られる彼らと微妙に違っておるのですよ。
つまり二次創作される毎に、原作世界とは微妙に異なる、パラレルワールドが現出してるって事で。
原作ワールドを核に、ファンが生出したパラレルワールドが、玉葱の様に幾重も取り巻いてる光景を想像すると、何やらSFチックでゾクゾク致しませんか?

ちなみにこの作品タイトルは、ジブリ映画「おもひでぽろぽろ」の主題歌、「愛は花、君はその種子」をもじって考え付きました。
特に意味無く何となく頭に浮かんだのですが(汗)…でもあれ、良い歌だと思いません?
「脳内でふとした拍子にかかる歌」マイベスト10入りしとるのですよ。


・2008年7月はにほへといろ様のナミ誕に投稿した作品。
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君は船の女神、僕はその船の大工 その3

2010年07月24日 12時09分33秒 | ワンピース






麦藁海賊団の新クルー、パウリーの夜は誰よりも遅い。

草木も眠る丑三つ時すら過ぎた頃、ランプの灯りを頼りに、船内を念入りに点検して廻るのが彼の日課だ。

いびきの煩い1階男部屋をスタートし、梯子を伝って地下1階格納庫へ下り、船底の具合を確かめた後は再び1階上ってグルリと見廻り、次に2階上って、女部屋で眠ってるだろう2人を起さないよう、静かに見廻る。
更に3階上ってグルリと見廻り、展望台に上った所で、その日の夜番と軽く挨拶を交わす。
そうして勤めを無事終えた後は、幾分沸かし直した残り湯に、ゆったりと足を伸ばして浸かる。

この日も同じだった。




波に揺られて湯舟の中まで細波立つ。
船の中で『舟』に乗るのも、考えてみれば愉快な話だ。
こんな体験は地に足を着けて生活してた頃には為し得なかった事。
身を削るような修羅場でも、時には良い事が見付るもんだ。
彼は己の発見したささやかな幸せに、しみじみと感じ入った。



――波に揺られて大浴場なんて夢みたい♪



ふと、乗船して直ぐに聞いた女の声が、頭の中に蘇る。



――湯舟が狭いのは嫌よ。洗い場も…大の字で寝っ転がれるくらい、広々~~と造ってねv



『のっけから遠慮無く我侭ぶつけて来やがって…!』


腹の中俄かに湧いた苛立ちを、彼は拳に篭めて湯面を叩き付けた。
窓から侵入し、ヒタヒタと湯に浮いていた月が、粉々になって散らばる。
煌く月光を一掬いして顔を洗うと、暫し落着いた心地を取戻せるよう感じられた。


思うに周りの男共がちやほや甘やかして、あそこまで助長させてしまったのではないか?
あのルックスだ、きっと幼い頃から皆に愛され、大切に育てられて来たのだろう。
そして幸運にも気の好い奴らと巡り会い…だがそれで良いのか?
男共と1つ船の中、年頃の娘がああも警戒心無く過して居て無事なものか?
親しい仲間だからって、牙を剥かないという保証は無いだろうに。



………胃の中に少しだけ苦い味が拡がる。



忘れようと再び勢い良く、湯でバシャバシャと顔を洗った。



その時だ、おもむろに――バタン!と、浴室の扉が開かれた。

湯気の向うにオレンジ色の髪の、白地にピンクの水玉ビキニを着た女が立っている。
口をポカンと開け、呆気に取られてるパウリーと目が合うと、女は悪戯っ子の様に笑った。
目の前現れた萌え漫画的光景を、彼は俄かには信じられず、蜃気楼かと疑る。

しかしその蜃気楼が――


「お背中流したげるわ、おにーさんv」


――と声を発した途端、パウリーは赤青赤青赤青とさながら信号の様に顔色を点滅させ、終いにはコウモリもびっくりするよな甲高い悲鳴を棚引かせた。


「アアアア~~~~アアア!!!
 アア~~~~ア!!!!
 アア~~~~~~~~~~~アア…!!!!」


「しぃぃっっ!!!大声出したら皆起きちゃうでしょー!?」


水濡れた床をピタピタ鳴らして駆け寄り、鳴き止まぬパウリーの口を塞ぐ。
彼の視界にナイスボリュームな乳と腿、それに括れた腰が、アップでいっぺんに飛び込んで来た。

湯に浸かる男の抵抗が益々激しくなる。
その様は水中の罠にかかってもがく水鳥に似ていた。


「ウムムムムゥ~~!!!ムムォムムムゥゥ~~!!!」


――バシャバシャ!!バシャバシャ!!


「『何しに来た、どうやって入った』って?――私、元泥棒だもん。昔取った杵柄で、大抵の鍵はチョチョイのチョイよ♪」

「ムゥ~~ムムムゥ~~!!!ムゥ~~ムゥ~~…!!!」


――バシャバシャ!!バシャバシャバシャ!!


「思うにあんた、女に免疫無くて、意識し過ぎなのよ。だから手っ取り早く慣れて貰おうと、裸の付き合いしに来たって訳!」

「ムォムォムォムォ~~~!!!?ムァゥ~~ムァムァムァァ~~~…!!!!」


――バシャバシャシャ!!バシャッ!!!


「本当は水着も着ない積りだったんだけど、流石にそこまでサービスしたげる義理は無いし、あんたも目のやり場に困るだろうし」


全く悪びれず答えるナミに、始めこそ焦り慄き困惑が勝ってたパウリーだったが、次第に憤りが身を占領して行く。
それが遂に喉から飛び出た所で、彼は己の口を塞ぐナミの両手を力いっぱい掴み、爛々と光る目で睨みつけた。

虚を衝かれたナミが、瞼をぱちくりと瞬かせる。

その無防備な表情に憎しみを募らせたパウリーは、低くドスを効かせた声で怒鳴った。


「…お前な…神経どうかしてんのか…!?女が男の風呂に侵入するなんてハレンチな真似、正気の沙汰で出来るこっちゃ――」


そこまで言いかけた所で、突然船がグラリと傾いた。

安定を崩したナミが、「きゃっ!!」と叫んで、背中から床に倒れこむ。
ナミの両手首を掴んでいたパウリーも、勢い湯舟から引張り揚げられる形となり、「うわっっ!!」と叫んでその上に倒れこんだ。

傾いた床の上を石鹸とシャンプーとリンスと空桶と風呂椅子がつつーーっと滑って行く。
それらが壁にぶち当たりカコーン!!と響く音で、2人は同時に互いの体勢を意識し――ピシッッ!!!と身を固めた。

パウリーの下には扇情的なビキニ姿のナミが、仰向けに転がっている。
ナミの上には素っ裸のパウリーが、ナミの手首を押え付け覆い被さっている。


僅か数cmの間を置いて、2人は暫し無言で見詰め合った。


湯気の篭る浴室内は、さながらミストサウナの如き蒸し暑さ。
汗と水が滲みて、ナミの肌身はすっかり濡れそぼり、桃色に染まっていた。
パウリーの金色の髪を伝う滴が、ナミのすべらかな谷間に雨を降らす。

秀でた額に濡れて貼り付くオレンジの髪、滑々の頬。
少し頭を下げれば触れそうな珊瑚の唇。

自分を見上げる澄んだ琥珀色の瞳から中々目が離せない。

それでもパウリーは己の唇を噛付けると、気力を振り絞って叫んだ。


「…あのな……お前は女で、俺は男なんだぞ…!!」


途端に、ナミの瞳が拍子抜けしたかの様に点となる。


「………だから?」


そんな事は見れば解ると言わんばかりに、彼女の視線が、日焼けして筋骨逞しい男の体を行ったり来たりした。


「だから…!!例えばもし俺が、このままお前を襲ったとしたら…!!」

「何?あんた、私を襲う積りなの?」
「積りな訳有るか!!馬鹿ガキッ!!!」
「じゃーもー何が言いたいのよ!?抽象的じゃなく解る様に喋って!!」


故意からではないといえ、男に押し倒されてる体勢に在りながら、ナミは強気に睨み返す。
自分の置かれた立場を省みないにも程が有る、ひょっとしてこの女、不感症なのではないか?
パウリーは最早どう説得したもんか、途方に暮れる心持がした。

それでも息を大きく吸って溜めると、地獄の赤鬼もかくやといった形相で、一気に捲し立てた。


「いいか、ガキ、よく聞けよ!!
 男ってのは氷の鎖で内に潜む獣を抑えてる!!
 熱を加えて加えて加え続けりゃ、鎖は融けて獣は解放されちまうんだ!!
 そうならないよう常日頃どんだけ理性を働かせてるか、お前は考えを巡らした事が有るのか!?
 獣に腹食い千切られたくなかったら、あんまり男を舐めてんじゃねェ…!!!」


言い終ってハアハアと肩で息を吐く。
鼓動を激しく打ち過ぎて、心臓が爆発しそうに思えた。

男の下で黙って言葉を聞いていた女が、俄かに身を震わせる。
震えは次第に増して行き、遂には弾ける様に、ケタケタと笑い出した。


「笑ってられる立場かっっ!!!」


両手首を握った手に、思わずギュウと力を篭める。

目を剥いて迫るパウリーに、しかしナミはびくともせず、朗らかな顔で答えた。


「そりゃ私は御覧の通り頗る可愛いし、男共の中に居て貞操を守れるのか、不安に思うのは解るけど…」
「何自分で可愛いとか言っちゃってんだよ!!?つか、お前意識してやってたのか!?もしかして…!!」


てっきりガキの無邪気さで仕出かしてる行動と考えてたのに、実は計算ずくの魔性が潜んでいた事を知り、パウリーの背中に冷たい汗の玉が浮んだ。

ナミは悪びれもせず、尚も屈託無い笑顔で続ける。


「けど心配には及ばないわ!この船に乗ってる限り、私の身の安全は保証されてるの。…良い機会だし、あんたに教えたげる。私に手をかけたら、どんな目に遭うのかを――」


直後、ナミの顔から天使の微笑が消え、代わって小悪魔な媚笑が現れた。

唐突な変貌にうろたえるパウリーの下で、ふうーーーーー…と大きく胸を膨らませる。
そうして限界まで溜めた息を一気に吐き出し、船内隅々まで響き渡る様な大声を上げた。


「キャーーーーー!!!!!誰か助けてェーーーーー!!!!!犯されるゥーーーーー!!!!!」


僅かの間も置かず――バタバタバタバタバタ!!!!と激しい足音が近付いて来た。
足音が大浴場の前で止ると同時に、勢い良く扉が開かれる。
中から、既に戦闘態勢を整えたクルー達が、血相変えて飛び込んで来た。


「ゴーカンマが現れたって!?無事か!?ナミィ!!」
「どうやって忍び込んだ!?この船に侵入するとは命知らずな奴だぜっっ!!」
「もう安心だぞナミ!!このウソップ様が駆けつけたからには一撃必殺一網打尽!!」
「俺のナミさんにおイタしようってクソ野郎は何処のどいつだァァ!!?」
「大丈夫か!?怪我させられたりしてないかナミィ!?」
「まだパンティーは下ろされてなくて!?」


ルフィがポキポキ指を鳴らして、ゾロが抜いた刀を閃かせて、ウソップがパチンコを構えて、サンジが緩んだネクタイを締め直して、チョッパーが救急箱を用意して、ロビンが着せる用の上衣を持って、浴場内に並び立つ。

勇ましく駆けつけた彼らだったが、しかし信じ難い光景を目の当りにして――ビキィィィン!!!!と身を硬直させた。

白地にピンクの水玉ビキニを着たナミを、全裸でマッチョな金髪男が押し倒している。
あろう事かその男は、この船のクルーの1人、パウリーだった。



浴場内に居る全員の時間が凍りつく。



しじまが支配する中で、天井から落ちる水滴の音だけが、ぴちょーーん!と響いた。



サンジがゆっくりと前へ出て、胸ポケットを探る。
ケースから煙草を1本摘み、口に銜えた。
ライターで火を点し、ふう……と息を吐く。
立ち昇った白い煙は、湯気と混じり合い、溶けて行った。


「…ようく解った。死ぬ積りだな、このクソバカ」


呟くや否や――クワッ!!!と物凄い勢いで、サンジの右目が開かれた。


「上等だあああ!!!!この俺が地下6,300km深くまで蹴り潰してやるから直ちに懺悔を済ましやがれっっ!!!!」


――ドン!!!!とサンジを取り巻き猛烈な火柱が立ち昇る。

その熱で浴場内の温度は一気に90℃まで上がり、湯舟の中の湯がボコボコと沸き立った。


「ああ…いや…これは違う!違うぞ、お前ら…!」


呆然と押し倒したままで居たパウリーが、漸く事態の急変を呑込み身を起す。
しどろもどろ弁解する彼を、ナミは下から突飛ばし、泣きながらロビンの元へ走って行った。


「…恐かった、ロビン姉さん!!…パウリーったら、嫌がる私を無理矢理押え付けて、『大人しくしろ!!抵抗したら容赦しねェぞ!!』って脅したのよ…!!」


ひしっっと縋り付くナミの体を、ロビンの両腕が優しく包み込む。


「まあ酷い…手首にくっきり痣が付いてるわ。か弱い女の子に暴力をふるって自分の意のままにしようなんて、男の風上に置けない卑劣な人ね」


ロビンのこの言葉に、パウリーを見詰る皆の目が険を増し、火柱は更に赤々と燃え盛った。


「パウリー!!!…オオオオレ、お前を見損なったっっ!!!」
「よりによってナミを押し倒すなんて、命捨ててるよなァ~~」
「ま、或る意味、漢らしいとも思えるけどな!」
「あばよ、パウリー。短い間だったけど、楽しかったぜ」

「ち…違う!!違う違う違う!!!俺はそのハレンチ女にハメられてっ…!!――ってかお前らっ!!俺が悲鳴上げた時は無視してスヤスヤ寝てたクセに――」
「黙れ強姦未遂野郎!!!…全裸でナミさんを押し倒した時点で、てめェの罪状は確定してんだ!!!この…クソ・ハレンチ船大工っっ!!!」


――ビシィィッ!!!と鋭くサンジが指を突き付ける。


指されたパウリーの体から、いっぺんに血の気が失せた。


「麦藁海賊団血の掟第1条、『ナミさんを泣かす者には死、有るのみ』――そうだな!?ルフィ!!」


サンジがルフィの方を振向いて叫ぶ。

フられたルフィはニッと凶悪な笑みを引き、右拳の親指を下に向けて裁きを下した。


「死刑!」


その宣告を受け、ウソップが鞄からゴングを取り出し、カーン!と鳴らした。




「さあ始まりました、ルフィ海賊団名物、『オシオキ・スタジアム』!!
 実況は私、8千人のファンを抱えるナイス・ヒーロー、ウソップが務めさせて戴きます!!
 さて本日の生贄、あいや悪漢レスラーは、航海士ナミを手篭めにしようとしてお縄を頂戴したバカヤロウ、『全裸マン・パウリィ~~~~』!!!
 対するは我らが性戯のエロコック――おっと!!そのサンジが紹介を待たずに蹴りかかってくぞ!!
 クー!!キュイソー!!ジャレ!!――流れる様な連続キックだ!!!
 全裸マン堪らずダウン!!!――しかし息をも吐かせず上空からポンポコドクター・チョッパーが刻蹄クロスを仕掛ける!!
 ――決ったァ~~~~!!!全裸マン、最早立上れないかァァ!!?

 解説のルフィさん、今の技は実に綺麗に決りましたね!!」

「んあ~~~、しかしこのまま一方的じゃあ、盛り上りに欠けてつまんねーなァ~~~」

「仰る通り、このまま一方的な展開が続くようでは、ただイジメてるだけに思えて、私共も甚だ寝覚めが悪いっ!!
 此処は一発全裸マンに奮起を促したいぞっ!!
 立上れ、全裸マン!!君の力はその程度か!?今こそ必殺のロープ・アクションで、悪魔帝国復活の狼煙を上げろ!!
 嗚呼しかし、悲しいかな彼は全裸!!モザイク無くして闘う丸腰の戦士!!
 これはちょっと分が悪いにも程が有るかァ~~!?――おっとそこへ次なる魔手が忍び寄って来たぞ!!
 言葉通り襲い来る手!手!手の群れが、ダウンした全裸マンの首に肩に腕に脚に、さながら彼の武器である縄の如く、彼をがんじがらめにして離さない!!
 そして更に現れた2本の手が――おあっと!?これは何処を…一体何処を狙っているんだ、デビルフラワー・ロビン!!
 よもやまさか××××に行っちゃうか!?そこはヤバイぞ流石に死ぬぞ、再起不能は間違い無いぞ!!
 幾ら強姦未遂罪といえど、私、同じ男として同情を禁じ得ません!!」

「やめろォ~~~てめェ!!!!おお女が男のそんな所を掴むなんてハハハハレンチ極まりないと思わねェのかコラッ…!!!」

「あら、だって此処が諸悪の元でしょ?もう2度と悪さを働かせない為にも、引っこ抜くべきじゃない?」


大層怖ろしげな事を微笑みながら言うロビンに、パウリーだけでなく他男共まで顔面を蒼白に変える。
誰も彼も己の××××を押え、同情を篭めた眼差しで、パウリーの××××を見守った。


「やっちゃえ、御姉様!!引っこ抜けー!!」
「…お前な…そろそろ良心が痛まねェのかよ…?」


1人エキサイティングな声援を送るナミに、隣に座るゾロがさも呆れた顔で咎める。
その言葉を聞いたナミは、きょとんと目を丸くさせ、ゾロを見詰返した。


「どうして私が良心を痛めなくちゃいけないの?別に悪い事何にもしてないのに」
「嘘吐け!その水着は一体何の真似だ?あいつの言う通り、お前がハメたんだろ?」


詰問を受けたナミは、悪戯がバレた子供の様に、舌をぺロッと出して笑った。


「獣を飼い馴らすには最初が肝心って言うでしょ?この船の中で誰が1番立場が上か、体で覚えて貰わないとねv」


それを聞いたゾロは渋面を作り、大仰に溜息を吐いて見せた。


目の前ではパウリーが××××を握られ、苦悶の形相でもがいている。
悪魔女の処刑がいよいよ始まったらしい。

広々とした浴場内に、パウリーの断末魔が、途切れる事無くこだました。





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君は船の女神、僕はその船の大工 その2

2010年07月24日 12時08分24秒 | ワンピース






カッカッカッとリズミカルな音を立ててチョークが踊る。
掘りごたつ席に座る男クルー5人の前には黒板が設置され、そこにはこんな風な議題が書かれていた。


『題30回 朝ミーティング
 議題:ハレンチ航海士の服装を正す方法を皆で考えよう』


黒板の前に立つパウリーが、他男達の顔を見回して言う。


「それじゃあ今回こそ有意義な会議を目指したいと思う…異論は無ェな?」


問われたのを受けて、奥席に独り座るルフィが、すっと手を伸ばし意見した。


「有る。その前にメシ食わせろ」

「よし!なら始めるぞ!」
「有るって言ってんだろ!!!無視すんな葉巻ヤロー!!!」


己の意見を封殺するパウリーに対し、ルフィはテーブルを激しく叩いて抗議した。
その打音に負けず劣らず、彼の腹から出る音が重ねて抗議を示す。


「つくづく喧しいキャプテンだな。俺だって腹減ってんだ。早く飯にしたいなら尚の事、会議をスムーズに進行させるよう努めたら良い」

「…もう30回も同じテーマで話し合ってるじゃねェか。いいかげん諦めようぜェ、パウリー」


あくまで会議を進めようとする司会役に、ウソップが疲れた顔で意見する。
そうしてテーブルに手を伸ばすと、真っ赤に熟したリンゴを1つ掴み、口いっぱいに頬張った。
リンゴは会議中の空腹を癒す為、サンジが用意した心尽くしだ。
勿論ルフィは逸早く自分の分を平らげ、他の奴らの分まで隙をついて奪う気で居た。(←それを予見され、独り奥の席に座らせられた)


「ひーひゃへーは、はへはほんははっほうひへひょうは。…ナミが好きでやってるカッコだ、好きにさせてやれよ。一緒に過してる内に、お前だって目が慣れて来るって」
「甘いぞ、ウソップ」
「うん、確かに甘いな、このリンゴ」
「そうじゃない、考えが甘いと言ってるんだ!…お前ら、『ブロークン・ウィンドウ理論』と言うのを知っているか?」


チョークをコツコツと黒板にぶつけながら問うパウリーに、一同揃って「知らねー」と首を左右に振る。
それを見て、パウリーはまるで教師の如く、黒板に図を描いて説明した。


「或る街に、1台の、フロントガラスが割れた車が捨て置かれた。
 次の日、その車に、びっしりと落書きがされていた。
 更に次の日、落書きは周囲の道路にまで拡大していた。
 更に更に次の日、道路を埋め尽くした落書きは壁をも埋め尽くし…何時しか街はスラムに変貌した。
 
 たった1台の廃車が街の風紀を破壊する…恐ろしいと思わねェか!?
 同じく、たった1人の服装の乱れだと放っておけば、船全体の風紀が乱れる事態にまで発展するんだ!!――解ったか!?」

「…海賊に風紀を乱すなと説かれてもなァ~~」


話してく内、パウリーは徐々にエキサイトして行く。
そんな彼に、ウソップは途方に暮れた顔してツッコんだ。

ウソップの正面に座るゾロが、彼同様にリンゴへ手を伸ばし、シャリッと音を立てて齧る。
甘酸っぱい芳香を辺りに漂わせつつ、ゾロはポツリ呟いた。


「露出狂なんだよ、あの女」

「『ろしゅつきょー』?何だ、それ??」


隣に座るチョッパーが、無邪気な顔で尋ねる。


「人に裸を見せたくてしょうがない病気だ」

「病気!!?ナミ病気だったのかァァ!!?」


慄いて叫ぶチョッパーの前、ウソップがすっくと立上り、ゾロの言葉を継いだ。


「ああ!!なんて美しいの、私の自慢のバスト!!
 ああ!!なんて美しいの、私の自慢のヒップ!!
 ねェ見て…皆、私の美しい体を見て!!
 もっと穴の開くほど見詰てェ~~~ん!!!」


裏声で身振り手振りリンゴを交え、ウソップがクネクネと踊る。
それを見て正直者のルフィが「オエッ!!気色悪っっ!!」と感想を述べた。


「…とまァ、こんな病気だ。現代社会の歪みが生んだ、心の病と言えるだろう」


素に戻ったウソップが、席に着き実しやかに言う。
そうして胸からリンゴを取り出すと、再び大口開けて齧った。
シャクシャクという歯切れの良い咀嚼音が辺りに響く。


「…そんな恐ろしい病気が有ったなんて……早く治療してやらなきゃ!」


根っから素直なチョッパーはすっかり真に受け、顔面蒼白になって叫んだ。


「残念だがな、チョッパー。お前にこの病気は治せねェ」


しかしゾロはそんな彼に、非情な宣告を投げ付けた。


「オオオレには治せねェのかァァ!?」
「お前だけじゃねェ、誰にも治せやしないだろう」
「ゾロの言う通りだ。露出狂とは不治の病なんだ」
「エエエーー!?不治の病ィィーー!?」
「ナミのヤツ、そんな恐ろしい病気に罹ってたのか!?何とか助けてやんねーと!!」
「ダメだルフィ!俺達にはただ…見ているだけしか…!」
「そうだな…せめて皆で見守って居てやろう」

「…ってお前ら、仲間を肴によくもそこまで…ちったァ真面目に議論しやがれっっ!!」


何処までも脱線し続ける4人に、遂にパウリーが切れる。
黒板をバンバン叩いて怒鳴るそこへ、今迄黙って考え込んでいたサンジが手を挙げて発言した。


「皆、ちょっといいか?聞いて貰いたい話が有るんだ」

「どうした?勿体付けて…」


平時には見せないシリアス顔で訴えるサンジに、皆の注目が集まる。
彼の様子に、薄くは無い期待を持てたパウリーは、速やかに発言を求めた。


「俺なりに、この議題を真剣に考えてみたんだが――ナミさんって、天使なんじゃねェかな?」


「「「「「はァァ???」」」」」


予想だにしなかった答を受けて、5人の顔がハニワに変る。
しかしサンジは全く表情を崩さず、真剣に言葉を続けた。


「そう、彼女は天使…輝く美貌を天の女神に嫉妬され、地上に落とされた最後の天使なんだ。

 天使は衣を纏わない。
 
 汚れ無き体を隠さず居るのが自然だ。

 だから彼女は極めて薄い衣を好んで――」

「おいドクター、こいつ病気だ。早く治してやれ!」
「ダメだよパウリー、オレには治せない!!サンジのそれは不治の病なんだ!!」


己の空想に陶酔し切りポエムを呟くサンジを、パウリーに顎で指し示され、しかしチョッパーは哀しげに頭を振り、さじを投げた。


「よし!腹も限界だし、そろそろ決を採って終らせよーぜ!!」


此処で漸く己のポジションを思い出したか、ルフィが勇んで立上る。
そうして右手をすっと上に伸ばすと、皆を見回して叫んだ。


「ナミが今みてーなカッコでも良いと思ってるヤツ!!」


ルフィに倣い、パウリー以外の男共の右手が、すっと挙がった。


「むしろ足りねェ!いっそ素っ裸で居りゃー良いと思ってるヤツ!!」


再び、パウリー以外の男共の右手が、すっと挙がった。


「…OK!お前らの気持ちは解った!!――これにていっけんらくちゃく!!メシにすっぞー!!!」
「待て待てちょっと待て!!まだ全然問題解決してねェってのに、勝手に終らしてんじゃねェよ!!!」
「うるせーな多数決で『ナミは裸で構わねェ』って意見纏まっただろ!!?見てーヤツと見せてーヤツとで、じゅよーときょーきゅーが成り立ってるんだからいーじゃねーか!!!それよりメシだメシ!!!サンジ、一刻も早くメシにしろ!!!」
「ふざけんなてめェ!!!何が需要で供給だァァ!!!俺が言いたいのはそういう事じゃなくて…!!」
「お前の意見なんて知ったこっちゃねェ!!!今最も大事なのは、俺の腹が減って死にそうって問題だ!!!だから早くメシ食わせろ!!!これは船長としての命令だっっ!!!」


無理矢理会議の終了を迫るルフィに、パウリーはロープを振り回して抑えにかかる。
しかし空腹メーターを振り切ったルフィは止らない。
気圧されて皆のガードが緩んだ隙をつき、両手を伸ばして籠を奪うと、中のリンゴを全て丸呑みにしてしまった。
ウソップとチョッパーの口から悲鳴が上がる。


「ギャ~~!!!ルフィがオレのリンゴ食ったァ~~~!!!」
「俺のリンゴまで…!!てんめルフィ!!腹減ってんのは自分1人だけじゃねェんだぞ!!!クルーの食いもんに手を出すなんて、船長としてやっていい事だと思ってんのかクラァァ!!!」
「メヒメヒ!!!…シャクシャクシャク…メヒ!!!…シャクシャクシャク…メェ~~ヒィ~~~!!!!」
「ダメだ!!空腹で我を忘れてやがる…!!おいコック、早いトコ飯を此処に持って来て…!!」
「そんな事より俺のナミさん論の続きを聞いてくれねェか?これからが重要かつ山場なポイントなんだって」
「寝言は朝飯済ませてから10時のオヤスミ時間に独りハンモックの上で呟いてろ破裏拳ポエマー!!!」
「なんだと藻草剣士!!!聖書よりも尊い教えを説いてやろうってのに断るとは不信心な奴めっっ!!!」

「…あの…だから、ちょっ……1度位まともに会議させてくれよ、お前らァァ~~~!!!!」


騒ぎから置いてけぼりにされたパウリーの叫びが、部屋に空しく響き渡った…。





「――とこんな風に、今日のミーティングも、何の収穫も無く終了しそうよ」


男部屋でひたすら会議が踊ってるその頃、一方の女部屋では、ロビンが能力を使って耳にした男達の会話を、逐一ナミに報告していた。


「…あいつら全員、後で死刑!」


ソファにゆったり身を沈めて報告を受けたナミが、残酷な裁きを宣言する。
向いのソファに座るロビンは、それを聞いて愉快そうに微笑み、ティーカップに口を付けた。
つられてナミも、カップに入った香り高い紅茶で、喉を潤す。
そうしてテーブルに手を伸ばすと、綺麗にカットされた兎リンゴを1つ、フォークで刺して口元に運んだ。
温かい紅茶と兎リンゴは、男共が会議してる間の空腹を癒す為、サンジが用意した心尽くしだ。


「ほんっっと毎朝毎朝…いいかげんにして欲しいわ!」


シャクッとリンゴが音を立てた途端、ナミの周りに爽やかな芳香が飛び散った。


「後数分もすれば、強制終了の末、朝ご飯に呼んで戴けるんじゃないかしら」


空腹も重なって苛立つナミに、ロビンが宥めるよう言う。
甘酸っぱい水菓子を味わい、一瞬だけナミの表情が和んだ。
がしかし、直ぐに元のしかめっ面に戻って、愚痴を続ける。


「…大体さ、私だけじゃないでしょう?ロビンだって露出したファッション、しょっちゅうしてんのに…何で私ばっか…!」

「乗船して最初の頃は、私にも言って来てたわよ」

「へー、それで?今はどうして言われなくなったの?」


ロビンの告白を聞いたナミは、僅かに身を乗り出して先を促した。


「『今度気を付けるわ』って、適当にあしらってる内に、言われなくなっちゃった」

「あー……成る程」


「ふふふっ」と薄く笑い、大人の余裕を見せるロビンに、ナミの肩がガクリと落ちる。
少しだけパウリーに同情の念が湧いた。


「まだ堅気だった頃の気分が抜けないんでしょ。その内慣れるわ」

「……そりゃまー、まともに相手する私にも、問題有るんだろうけどさー…」


呑気な態度を崩さないロビンの前、背中で摺って一層深くソファに身を沈める。

天井で揺れるランプを見詰ながら、ナミは独り言の様に呟いた。


『慣れぬなら、慣らしてみせよう、ほととぎす……少し荒療治が必要かしら?』





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