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日本語指導を必要とする児童生徒指導法講座 ~ 名古屋市教育センター

2017年08月24日 | 日本語教育
名古屋市教育センターから、ご依頼があり、日本語指導を必要とする児童生徒指導法講座の一つとして、

日本語教育の理論と実践、

という研修会の講師を務めました。


午前3時間、午後3時間というものでした。

日本語指導が必要な児童生徒教育について、その背景や、受け入れ、進学や就職といった話は別の方がなさるということで、

日本語指導に特化したものを、というご依頼でした。


なので、

アイスブレーキングでは、自分が標準だと考えることをやめれば相手にどう伝えるか、に配慮が届くというお話をさせていただき、

続いて、日本語教育とは何を教えるものなのか、というお話をしました。語彙や文型を教えるのは全体の1割程度、重要なのは、それを使って自分の目的を達成すること。

同じ事実を複数の異なる表現で表す場合に、発話者がどのような気持ちでいるのか、またどのような気持ちのときにどの表現を使うのか、それができるようになるのが一つのゴールである、というお話をしました。

直接法、TPRの体験として、韓国語だけで韓国語を学ぶという活動を30~40分かけて行い、どういう配慮が直説法で日本語を教えるときに必要なのか、ということに気づいていただき、それから、クラッシェンの仮説を取り上げながら、それらの活動の振り返りをしました。


次いで、日本語の授業をどうやって組み立てていくか、単に日本語にとどまらず、学年相当の能力にいかに近づけるか、ということを取り上げ、

日本語指導の場で日本語が使えるのは当たり前で、いかに、教室の外で日本語が使えるようになるのか、使うようになるのかを考えた指導が必要だというお話をしました。

言い換えれば、日本語指導が日本語指導教室で完結するのではない、日本語を使うのは、教室の外である、ということを強調して、学校の先生方、地域の方々との連携の重要性をお話ししました。

ですが、この連携作業のために、新しい仕事が増える、というのは得策ではなく、ただでさえ多忙な先生方に、それを求めることはできないという前提で、

連携のための活動を一つ、提案してきました。実ればいいのですが


この後、学習項目を一つ取り上げ、学校生活の中でそれがどう使われているかを分析していただいたうえで、「到達目標」を決めていただき、実際の指導案を考えるという作業をしました。


最後に、母語の大切さをお話ししましたが、単に母語を尊重する、というのが子供の言語の保証につながるだけではない、というところを強調しました。
というのも、これまで、ほかの方のなさった研修でも母語保持の重要性はかなりお話しいただいたと聞いていたからです。

ですので今日は、日本社会における日本語は、権威があり、力のある人間が使っているものである以上、母語より日本語の習得に傾くのは仕方がない、という話から始め、でも、これを放っておくと、日本語ができない両親を見下し始めてしまう可能性があり、自分の母語も価値がないものとして扱うようになってしまう、という点を強調し、「日本語ができないのか」と否定的にとらえている様子を子供の前で見せないこと、日本語ができない保護者に対しても、通訳を介して最大限の経緯をもって接する姿を子供に見せることで、保護者や母語に対する自尊心を守ることが出来、それがのちには、家族の良好なコミュニケーションにつながる、ということをお話ししました。


3時間は結構あっという間で、

研修の後、質問にいらっしゃった先生もおいでになり、とても充実した研修であったように思います。

質問にいらっしゃった先生とやり取りをしている中で、その先生が、「ああ、わかった。そうか、そういう考え方なのか」と嬉々として帰って行かれたのがとても印象的でした。


複数回担当するわけではないので、3時間で、思っていることをすべてお話しするというのは非常に難しく、いろいろ不十分なこともあったかと思いますが、私にとっても、資料を作っているときにいい勉強になりました。


ありがとうございました。
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