小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

切れぎれの近況について

2023年02月28日 | 日記

まる2ヵ月もブログを書けなかった。新年を迎えて慶ばしいひとときを過ごし、気が緩んだともいえる。年末と年始に化学療法(抗がん剤の点滴)をうけ、身体的にはさしたる不調もなく、お取り寄せの正月料理を堪能・・。美味しいものをいただいても、どうも心は満たされない・・。そんな無粋な老人になっちまったのか。

それが祟ったのか知らん。1月中旬ころから下痢症状が酷くなった。こんな私にもちっぽけな尊厳はある。詳しいことは書きたくない。寝て過ごす日々が続いた。抗がん剤の影響で免疫力が落ちて、それが影響したのだろうか。昔、インドへ行ったことがある。当時、現地で下痢になるのは通過儀礼のようなものだったが、へっちゃらだった。幼少の頃はビオフェルミンが欠かせないほどよく腹をこわす子供も、馬齢を重ねて丈夫な胃腸の持ち主になった、そう思ったのになあ。

ともかくも、常にアレのことで頭がいっぱいで、夜中になると何度も駆け込む。本は読めない、何かを考えることもできない。前頭葉が働かない、休止状態だ。脳幹だけで生きている。生理的な反応だけで生きている、そんな苦しい状態が続いた。抗がん剤を点滴してもらうために、粗相のないようそれなりの対策をして出かける。辛く、情けないことだ。

同時に、私の身体のすべてで脱毛が進行した。今は髭も生えなくなっている。まあスキンヘッドに近い坊主頭は若いころから変わりないので、周囲の人には分からないと思うが・・。ただ、眉毛もなくなると人相は変わるのだ、と自分自身は認識している。こういう身体の変化もさることながら、ガン患者としての一般的な余命を猛烈に意識しはじめた。担当医師からは直截の余命宣告はなかったのだけれど・・。

入院して徹底的な医療管理、食事療法のもとで、肺の組織に巣食ったがん組織は縮減したのだけれど・・。通院をふくめて4カ月に亘った化学療法。2月中旬のCT検査によると、残念至極、我が癌組織には、抗がん剤が効かなくなり、やや成長していることがわかった。

3月初旬には再入院し、新たな抗がん剤による化学療法を受ける。これが今年になってからの闘病の近況である。

 

今日は2月28日、春はもうすぐやって来る。私の狂っちまった前頭葉にも春が来てほしい。何かを集中して考え、自分なりのまとまった思考をトレースできることを願う。

話はかわり、話題も切れ切れで申し訳ないが、近場の東洋文庫の企画展のことに少しふれたい。1月の初旬、『本から飛び出せ! のりものたち』の期限が迫っていたので、まだ体は元気旺盛のころ、正月気分のさなかに東洋文庫に行った。副題の「祝・鉄道150周年」にも関心を引かれたが、戦争や輸送を担った「馬」についてもフォーカスされ、その多面的な紹介が秀逸であった。中央アジアからコーカサスつまり現在のウクライナあたりまでが野生馬の原産地であり、いろいろと夢想に遊んだ。

最後に、先日、妻も待望していた『フローラとファウナ』展に行ってきた。シーボルトの『日本植物誌』の現物を観覧。あの紫陽花「オタクサ」をはじめ、点数は少ないがボタニカル・アートのエッセンスを愉しんだ。

 

▲国立博物館の「兵馬俑」展はいまだに鮮明に焼き付いている。

▲隣接するレストランは小岩井農場が手掛けている。東洋文庫が三菱岩崎家の資産とはいえ、料理のクオリティは一級。

 

▲以前、「オタクサ」はこのブログでも紹介したが、色彩は予想をこえた美しさ。

 

 

 


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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
春はもうすぐ (sekko)
2023-03-01 01:18:57
更新されているのを見てほっと安心しました。ずっと心配していました。

東洋文庫の企画展にいらっしゃる気力と体力には希望が持てるのでは、と思います。

ウクライナ戦もエスカレート、トルコ・シリア地震の被害と救援にも地政学的複雑さを見せつけられ、無力感にとらわれていますが、それでも、春は来るし、シーボルト由来の日本の桐の花や藤の花がパリで咲く季節もやってくるでしょう。

闘病は大変ですが、自分の体の基盤と向かい合うことで見えてくる本質もあるかもしれません。小寄道さまの知的好奇心や感性は健在で頼もしくもあり、励まされます。ありがとうございます。
無理をなさらないでまた近況をお知らせください。奥さまにもよろしく。
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Sekko様へ (小寄道)
2023-03-01 02:10:55
早速に心のこもったコメントをいただき、胸が震えるような喜びと感謝の気持ちが沸き上がりました。
ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。
毎日、ブログをアップなさっているSekko様の記事を読み、その営為に何度も鼓舞されましたが、読むことさえも気力が萎えてしまったことは何度かありました。辛かったです。

正直なところ、妻に尻をたたかれて、なんとか書いたのが今回の記事です。で、すぐにコメントを寄せていただき感激です。

日を置かないで、これからも書くように頑張ります。
ほんとうに有難うございました。
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奥さまに感謝 (sekko)
2023-03-01 18:59:38
奥さまのお気持ちがすごく分かります。

小寄道さまがブログを更新していらっしゃることで、メンタルの余力があることを確認なさるからでしょう。

このブログをアップされたことで奥さまはどんなに安心されたことでしょう。

奥さまへの感謝のためにも近況を時々アップなさってください。
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おっしゃる通り (小寄道)
2023-03-02 02:29:31
さすがSekkoさま、ズバリです。
Sekkoさまについて、妻がいろいろ質問してきました。
人間の機微というかメンタルを察知する能力は、女性は圧倒的ですね。
いまや、頭が下がりっぱなしです。

リコメどうもありがとうございます。
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Unknown (小寄道 妻)
2023-03-02 13:30:49
sekko様、いつも夫のブログを読んで頂き、ありがとうございます。
なにげにsekko様の話は話題にのぼり、いそいそと花を抱えて会いに行く時などは微笑ましく思えました。
今の夫にとってコメントは大切な心の糧となっているようです。sekko様もお忙しいなか、ご自愛くださいませ。
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