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『台湾生まれ 日本語育ち』@温又柔(オン・ユウジュウ)

 

 

 この本とのなれ初めは、岩波の『世界』の7月号を読んでいたら、この温さんの連載エッセイが載ってたんです。その筆力が印象的でした。で、温さんのエッセイ本である本書を取り寄せた次第です。

 

 台湾人の両親のもとに生まれ、3歳から日本で暮らし、妹は日本生まれという家庭で、「自分の言葉は?」「自分の国は?」「母語は何語?」と問い続けてきた様子を綴っています。なのでタイトルも「日本育ち」ではなく「日本育ち」なんですね。

 

 台湾語も中国語も似たようなもんじゃねとお気楽に思ってた小生ですが、台湾の人にとって、中国で公用語とされている中国語は、外国語だそうです。

 

 著者の祖父母の世代は。日本語も話し、母親は中国語と台湾語のミックス、ビジネスマンの父親は中国語、著者自身は高校から外国語として中国語を勉強し始めたという、言語的にはそれぞれなんですが、そうなっているのはそれぞれ政治的背景があるわけです。

 

 この本を手に取る人の動機はいろいろでしょうが、僕の場合、「台湾と中国」の関係を台湾の普通の人はどう考えているのか という事でした。

 

 そもそも台湾語は、大陸の福建省の一地域の言葉にルーツがあるのですが、それもまた政治的背景があるようです。若い著者〈1980年生まれ〉も、ちょっと前までの台湾を「国民党独裁政治」と考えていることも意外でしたね。

 

 たぶん、国民党支持、民進党支持に関わらず、台湾市民の圧倒的多数は「独立するでもなく、中国に併合されるわけでもなく、今迄のままが一番いい」と思ってるんでしょうね。

 

 台湾 行ってみたいなあ~。

 

【追記】

 このエッセイ本の出版は2016年1月ですが、翌2017年夏の157回芥川賞選考で、温さんの小説「真ん中の子どもたち」(モチーフはエッセイ本と共通)が芥川賞候補にノミネートされましたが、残念ながら受賞はならず。

 その時の選考委員の選評で、こっぴどく叩かれていましたね(これです)。まあそういうことは、毎回おなじみなことですが、著書の温さんが、ツイッターで「猛反論」してたのは、よく知られています。

 この件のについての小生の意見は、「文学作品は、文学作品としてのみの評価をしてほしい、お互いに。その文学的評価とは、人々の魂をどれだけ揺り動かせたかどうかにある」です。

 

 

 

 

 

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