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マザーと ナイフと ポークステーキ と・・・・



 子どもの頃、牛肉が食卓に上ることはまずなく、ましてやビーフステーキ(略して ビフテキ)など夢のまた夢。テレビのドラマの食事のシーンで ナイフトとフォークを優雅に操りながら、ビフテキを食べているシーンなど、羨望のまなざしでよく見ていたっけ。

 しかし、子どもというものは残酷?なもので、母親に「僕もナイフとフォークでステーキ食べたい」と泣きついた。母はしばし、困った顔をしていたが、「じゃ お父さんが良いって言ったら、今度の日曜にデパートに買いにいこうか」と言ってくれた。もちろん 飛び上がらんばかりに喜んだね。

 幸いにも父のOKがあっさりと出て、はるばる汽車(電車じゃないよ)に乗って、あごがれの「Dデパート」に行った。当時のデパートって、屋上に必ず遊園地あったよね。それもまた楽しみだったなあ。

 母は、清水の舞台から飛び降りる気持ちで、食器売り場に行ったに違いない(だって いまでは、ホームセンタで安価に変えるけど、その当時は高級品だったんだろうからね)

 で、ナイフとフォークを子どもの数の分だけ買って(もちろんセットではなく、バラ売り)、母はレジに向かった。レジで、母親は僕に向かって、やや誇らしげに「今夜は これでステーキを食べようね」と言ってくれた。

 その言葉を聞いたレジのお姉さんの手が ピタっと止まった。「お客様、このナイフは魚用でございます。お肉用は、刃にギザギザがついてございます」

母「・・・・・・・・・・・」
 
僕は 真っ赤になって下を向いていた。


 そんなことあんなこと いろいろあって、ようやく我が家にたどりつき、待ちに待った夕食の時間に。出てきたステーキは 脂身たっぷりの醤油で味付けした「ポークステーキ」でしたあ・・・

 あのしょっぱい涙と一緒に食べた ポークステーキの美味しさは 45年後の今も、忘れられない。 
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