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森嶋通夫 『血にコクリコの花咲けば』を読む

 

 昨年没した母親の法要で帰省の折に、往復の新幹線の中で読みました。森嶋通夫は説明不要の高名の経済学者ですが、その半生記です。戦争終結までがこの巻に記されています。まあ、功成り名遂げた著名人が自ら書く自伝は、往々にして武勇伝になる傾向がありますが、それはもう仕方ないことですね。

 この世代の著名人って学者に限らず実業家でも政治家であっても、ほぼ帝大卒なのですが、それはつまり必然的に旧制高校卒と言う訳で、彼の場合7年制の浪速高等学校でした。「地にコクリコの花咲けば」は、なんとも時代がかった調子の書名かと思いましたが、浪高の寮歌の一節とのこと、納得した次第です。

 著者によれば、旧制高校のナンバースクールが、東京、京都と名実ともに日本を代表する都市に開設されたのは納得できるが、なにゆえ仙台、金沢、熊本と地方都市にも開設されたかと言うと、伊達藩、前田藩、細川藩と徳川時代の雄藩だったからとのこと。加えて山口、鹿児島にでできたのは薩長政権だったからとのこと。(山口はナンバースクールではないけど)。まあ森嶋氏の見立てが正しいかどうかはわかりませんが、そういう要素があったとしても不思議ではないですよね。

 小生も半世紀前に何ゆえに金沢に来たかと言うと、旧制四高の流れをくむ大学だったからにほかなりません。

 話がどんどん横道にそれてしまいましたが、この本の後半は、通信兵(任務は暗号解読)として軍隊生活をする中での様々な経験から、舌鋒鋭く軍部批判を展開しており、小生としてはそれに全く異論はないけれど、どうしても「後だしジャンケン」に思えて、もやもや感がぬぐえないのでありました。

 

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