雨しのぐ廃家の軒に身をよせし我をあはれとうぐいすの声
はるさめに煙る山さと温もりし行き交ふひとはうれしき声なり
久保蔭のさとは日かげの多かりしされどはるかぜ吹きて来にけり
山の端に霞みてながむ麦生土は高みのさとぞ春かぜ来しか
啓蟄に入りて地熱に力あり
啓蟄や小鳥の声に上着脱ぎ
祖谷川にからから思ふ水の春
わが庵に北窓開けて香り呼び
あめのいのり
ちんもくのきぎのこずえは ざわめきとうめき
はるのあめのいのりは じめんをもりあげて
ざわめきとうめきを たべてちんもくのいのり
あいはちきゅうをいちじゅんして わたしをつかむ
かんせいがしゃしゃりでて あいをたべたわたしは
はるのあめのいのりに いりこんでいなくなる
はるのあめはよるをむかえて あかりにみをつつみ
わたしはいつかあかりのあいに ねむったのだろう
はるのあめのおおなみとうねり わたしはながれる
あいはいのりにふくれて わたしをやぶってひきさき
ちきゅうにとびだしして せかいをいちじゅんするだろう
わたしはいたみをぞうふくさせて あいをたしかめる
もはやへだてることもなく やさしいしょくしゅになる
はるのあめのいのりは ゆたかにやすむあいのくうかん
わたしはたしかめようと あいのくうかんにいなくなる