師走もいよいよ押し詰まって、思わぬ大雪に見舞われた奥祖谷の里は除雪も
なかなか捗らないために、新年の準備に外出に支障を来たしている
閉じ込められた一人暮らしのお年寄りには厳しい深雪となった
土地の暮らしを思うにつけても、降雪、積雪を喜ぶ心境にならず、まずは
お年寄りの労苦に想いを馳せてしまうのである
深雪ふり訪ふひとなかり山里にひとり住みにし老の寂しき
山里を離れし老は寂しかりみ雪ふる夜はわが庵思ひて
吹き過ぐる風雪厳し山里に老を訪ふにも失せし道なり
降りやまぬみ雪に道を阻まれし明日の糧なし老の哀しき
行く年をみ雪のなかに埋もれて寺の鐘聞く老の侘しき
病ひ得て癒すすべなし庵に居しみ雪に埋もれ訪ふひともなし
暫し待つ風収まりて掃納
山寺や参りて聞きし除夜の鐘
突として妻を誘ひて除夜詣
大年や夜更けの灯り机辺かな
年の夜やゆるり辞書引く閑の庵

