祖谷谷を妻恋ふ鹿を聞きし庵
いつも思うことだが、わが庵「わとうち」は林道から小径を下ったところにあり、しずかな庵であり
なによりも心しずかに過ごせるお気に入りである
縁側に座っていると、小鳥の囀りを聞きながら本を開けば行間に瞑想の夢が広がる思いである
時折、秋の日差しや風に運ばれて、祖谷谷を流れて聞こえる鹿鳴きを聞くにつけても、物悲しく
哀れに、じっと、耳を傾ける
居間に座し見守る老婦蕎麦の秋
集落を歩いていると、ある家の居間で、ひとり老婦が座っていた、秋の穏かなで、暖かい日差しに
気持ちよさそうである、じっと見つめる目の先を追うと、蕎麦畑で蕎麦刈りに精を出している
じいさんを優しく見守っていた
秋入り日落合富士や土地の星
もう、かれこれ7,8年まえに中上集落のお年寄りから聞いた話によると、むかしの畑仕事は
朝早くから夜遅くまで働いたものだそうだ
目の前に聳える落合富士は、畑仕事を終える目安になったそうな、薄暗くなって落合富士の山頂に
星が煌めきだすと、もう、そろそろお仕舞いにするかと鍬を担いで家路に着いたそうだ
暮の秋庵訪ねば裂けにけり
10月初めにはまだ、赤みが少し付いただけで、摘んでみても硬くて、まだまだ、先のことだろうと
思い、こんど、逢えることが出来るかな、待っててくれよと願っていた
で、前の金曜日に帰ってくると、なんと、裂けかけている、もう、裂けて落ちたものもありだった