秘境という名の山村から(東祖谷)

にちにちこれこうにち 秘境奥祖谷(東祖谷山)

菜菜子の超気ままにエッセイ( 或る小銭物語)

2018年09月20日 | Weblog


ある日の朝。セルフのガソリンスタンドで、カード会員値引きの画面操作の早押しを高速でやり過ぎて
値引きが出来ていないまま精算をし、損をしてしまった。損をした金額は、30円と少々。

1日の始まりに30円を落とした気分になって、テンションは下がり、いつものコンビニに寄る。
スパゲッティの30円の値引き券を持っていた事を思いだし、さっきの30円を取り戻す為に、背に腹は変えられない。
断腸の思いでスパゲッティを颯爽とレジに持って行った。

時々見かける知り合いと、軽く挨拶をして、会計を済ませてコンビニを出た。
何か忘れた気がして、車に乗り、思い出した。
肝心の30円の値引き券をお財布から出す事を忘れていた。

朝から合計60円を落とした気分になって、60円をどこで取り返そうか、暫し考えてみた。
小銭に妙に執着するこのヤヤコシイ性分は、幼少期に培われたものだ。

昔、昔。我が家に時々やって来た、変なオジサン。
変なオジサンは、いつも同じヨレヨレの、着物のような服を着ていた。
オジサンが入って来ると、家の中は臭くなった。何の臭いだったかは忘れてしまったけど、兎に角、臭かった。
そんな変なオジサンと、時々道で会う事があった。

オジサンが向こうから近付いて来るのが判ったら、わたしは必ず立ち止まった。
変なオジサンは、フラフラと酔拳みたいに歩いていた。
わたしを見つけると、必ず立ち止まり、顔をクシャクシャにして、何故か嬉しそうだった。

そして必ず こう言った。
「お~~ラーメンの子かぁ、10円いるか~10円やるぞ~」
わたしは必ず1歩下がり、言い返した。
「10円や、いらんわ!!」
「10円やるわっ!ホリャア~」

と変なオジサンは、手品みたいに10円玉を取り出して、目の前で見せびらかし、わたしが取りに行かないと
必ず10円を道路に軽く転がした。そして、再び酔拳の様に、立ち去った。

「お金放ったら、バチ当たるんじゃわ~!!」
と変なオジサンの背中に思い切り叫びながら、
わたしは道路に転がった10円玉を、必死で探した。オカッパ頭が地を這う。
そして必ず拾っていた。

あの頃の小銭の感触が、以後の私の人生に影響を及ぼした。
「小銭を笑う奴は、小銭に泣く」
お金は小銭から始まり、
小銭で終わる?

セコい独り言を書いていると、メディアが月旅行を発信していた。久々のおっとろっしゃあ!
同じ1日なのに、
みんな時間の使い方が違う。
時間の使い方は違うけど
同じ時代に生まれて来た。
昭和に生まれて 良かった。
進化と共に
人は何を失って
何を得ているのだろう…

時代や人に左右されないで
私はわたしを
その日までチマチマと生きて行く。


変なオジサンは
「つとさん」
と呼ばれていた。
つとさん~
カムバッ~ク~!

草 々
























コメント
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