舞蛙堂本舗リターンズ!~スタジオMダンスアカデミーblog

ダンス(フラ・ベリーダンス他)と読書と旅行とカエル三昧の日々を綴る徒然日記。

フラガール四方山話~ダンス編~

2006-10-04 01:20:06 | ダンス話&スタジオM
引き続き映画『フラガール』ネタでお送りします。
明日は水曜レディースデーということで、うちのフラ組メンバーは明日行く方が多いもようですね。

映画の画像ばっかり使ってると肖像権的にまずいので、今日はマミちゃんの昔の写真を載せてみます。
こちらは『フラガール』でもクライマックスに踊られていたタヒチアンダンスの衣装です。
覚えていらっしゃるでしょうか....かれこれ半年以上前、制作発表を聞いて初めてこのブログで『フラガール』の話を持ち出したことを...。
そのとき「『フラ』ガールなのにダンサーの衣装がタヒチアンなのがチョッチ気になる」と申し上げたかと思います。

そう、フラとタヒチアンは、まったくの別物なのです。

フラはご存じハワイの踊りで、本来タヒチの踊りとは異なるものです。
「ココナッツブラに腰ミノ」なんてベタな格好も本当はフラにあらず、タヒチアンの衣装から借用したものなのです。
しかし半世紀以上前のハリウッド映画では、似而非南国娘がこのスタイルで似而非フラを踊るシーンがしばしば登場しました。
何しろ当時のハワイはキリスト教布教が過剰に功を奏していた時代だったため、本場のフラは必要以上に露出度の低い衣装で踊らなければなりませんでした。
しかし、ハリウッド映画人から見ればそんな格好じゃコーフンしないということで、勝手にああいうチラリズム全開の衣装でクニャクニャ踊らせることにしたのでしょう。

その映像の印象があまりに強いらしく(実際、劇中序盤でダンサー志望者たちに見せていた映像資料もこんなんでしたね)、フラとタヒチアンはかなり混同して理解されてるようです。
本場ハワイのショーなどでも、確信犯的にミックスして演じられているようですね。おそらくハワイ語の意味を理解しない観客(すなわち観客の大多数)にとって、「踊りが歌のメッセージを表している」といわれてもピンとこないフラよりも、パッと見が派手なタヒチアンの方がウケがよいと判断されているのでしょう。

松雪さん演じるまどか先生のモデルとなった早川先生が学んだ「イリマフラスタジオ」は、ハワイアンルネッサンス(フラなどハワイ固有の文化を見直す動き)が本格化する前だったためもあり、フラとともにタヒチアンやポイボール、はたまたファイヤーナイフダンスまで幅広く指導する教室でした。
ハワイアンズで様々なポリネシアンダンスが踊られているのは、おそらくその影響でしょう。

でも、せっかくこんな映画まで公開されるほどの時代になったのですから、そろそろ一緒くたにされてる誤解を解いた方がいいんじゃないかと思います。
一緒の回を見ていた読売フラの方は賢明にも「最後の踊りってフラじゃないですよね...???」と見抜いてらっしゃいましたが、本物のフラを知らない人であれば、いわれなければその違いが分からないのが普通でしょう。
残念ながら、映画でこの違いが語られることは全くありませんでした

というわけで、これから観に行く方はぜひフラとタヒチアンの違いを感じながら観てほしいと思いまして、映画における見分け方をご紹介します。

一番のポイントは歌詞の有無です。
フラは歌詞にあわせて踊るものです。したがって、「打楽器の音のみに合わせて踊られている曲」は、全てタヒチアンとなります。
タヒチアンにも様々なスタイルがあり、フラと同じく歌詞にあわせて踊るジャンルもあります。実際にはそれもかなりフラとはステップや手の動きが異なっているのですが、慣れない方が見分けるのは難しいかもしれません。
しかし、この映画に関してはそういう紛らわしいジャンルのタヒチアンは登場しておりませんので、劇中のダンスシーンであれば「歌詞のあるのがフラ」「歌詞のないのがタヒチアン」と、とりあえず理解しておいて差し支えないと思います。

もう一つのチェックポイントは服装です。
前述の通り、足首まである長いミノをつけたものがタヒチアンとなります。
ただし、ドサ回りのシーンなどで登場する短いミノで踊っているのはフラ。これはいわゆる腰ミノではなく、「グラススカート」つまり葉っぱでできたフラ用スカートを模したものです。
あ、今書いて気がついた。元ネタが違ってても、代替品を似たような材料で作るから、よけい見る方が混同してしまうのね。
タヒチアン用のミノの方には腰の動きを際立たせる装飾がついていますが、フラのミノにはついていないのは、元ネタであるグラススカートについていないためです。

服装といえば持ち物も全く異なります。
タヒチアンで使うのは「い」というハタキのような形状の代物で、羽のついたウリウリ、竹でできたプイリなどは、あくまでもフラ用の道具です。
だからフラ用の短いミノ(ああ、やっぱり紛らわしい...)でウリウリとかを持って踊ることはあっても、タヒチアン用の長くて装飾のついたミノでウリウリを持ったらものすごくヘンです。
どのくらいヘンって、チマチョゴリで日舞を踊るのと同じくらいヘンなのです。

よく、うちの生徒さんが「フラをやってると友達に言ったら、『ココナッツブラで踊るの!?』と言われた」なんていう話を耳にします。
でもこの映画を見ても、それは仕方のないことだと思います。なぜなら、頻繁に練習シーンが出てきますが、どれがフラの練習シーンでどれがタヒチアンなのか何一つ説明されないまま、これらがランダムに出てくるのですから。
ましてタイトルが『フラガール』だったら、そのクライマックスで主演女優が踊っているソロは当然フラだろうと思ってしまいますよね。
(もっとも、彼女がソロで繰り返しやっているスピンはあまりにもバレエで、タヒチアンといってしまって良いものか苦しみますがw)

こういう映画こそ、フラに対する一般の認識を正す絶好の媒体だと思うのに。
そんな映画ならではの能力が活かされていないのが返す返すも残念です。

そうそう、レッスンシーンでのトリビアをもう一つ。
時代に合わせてステップ名をハワイ語で呼んでいましたが、40年前のハワイアンセンターでは、絶対に英語で呼ばれていたはずです。
すなわちコアカはクォーターターン、レレはスウェイだったにちがいありません。
なんたってマミちゃんが十数年後に先生と同じ学校に留学した時点でさえ、ステップ名は英語だったのですから。
ハワイ語で呼ばれ出したのは(流派にもよりますが)せいぜいここ20年弱というところです。

同じことが教室名にもいえます。
当時のハワイの教室はほとんど英語名でしたし、日本のフラの第一人者と呼ばれる早川先生の教室は「早川洋舞塾」といいます。
「ハラウうんたら」という名前の教室は却って新しいということですね。

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