93歳・老大娘の日記

晩年を生きる

『羆嵐』 吉村昭著

2023-10-29 17:57:28 | 読書

最近は連日熊の出没が新聞テレビで報道されている

それも市街地に出てくることも多く、殺された人もいる、

怪我した人も大勢でている。熊のでた地域の人は日常生活も脅かされている。

長編ドキュメンタリー作品です

昔初読の時も衝撃を受けたが、今回の再読も吉村氏の筆致に迫力を

感じ、当時の開拓民たちの恐怖はいかばかりかと思いました。

時代背景は大正初め、北海道の開拓地。或る日2日間に6人の地区民が

羆に殺された。開拓民たちは銃を持っていない(貧しいため買えない)。

獰猛な羆は人肉の味をおぼえたら、また必ず出てくる。

お腹いっぱいになったその間は襲ってこないらしい。 

ガリガリと人骨をかじる不気味な音、人はなすすべもない。

そこで援けを求めに行くことになった。

通信手段もなく、役場や警察には2日がかりの行程を二人で行く。

途中は羆の出る森林ですから命がけです。

そして、役人、警察、猟師、医師など数千人が村落に救援に来て

遂に射止められた。

実話と知って読んでいるので、胸打つものがありました。

当時の開拓民たちの暮らしは「赤貧洗うが如し」。

それも衝撃でした。

この羆は「穴持たず」かも知れないといわれた。

 ※ 冬眠のための穴を見つけられない羆のこと

表題の『羆嵐』は羆を射止めたあと、吹く強い風のことを言う。

時代背景も違い羆ではありませんが、今東北地方に現れている熊も

人里には出てこないよう、うまく共存してほしいとおもいます。

コメント (8)
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