「ルーム」のドアが開いた。
オージの家の奥座敷を改造した「ルーム」。
マサルの機材は、二度の引越にも耐え、健在だった。
さらにサンちゃんやキーちゃんの機材も増えた。
天井など張ってあるはずもない古い家屋。
上を見上げると、藁葺の骨組がそのまま見えた。
中心に太い大黒柱が伸び、その周りに大木の枝のように梁がめぐらされていた。
直線とアールの正確な曲線でできた都会の建築物とは違い、生き物のようだった。
その奥座敷の襖をあけると防音用の厚いドアがあり、「ルーム」があった。
マーとマサルは「ルーム」へ、サンちゃんとキーちゃんは外に走った。
ライトは消費電力を抑えるために非常に暗かった。
外から、エンジン音がした。
古い家の定格電圧は低く、すべてのアンプをオンにすると悲鳴をあげて消灯した。
そこで、現場で使わなくなった発電機をヒデオが安く手に入れ、電気楽器を援護した。
まあ、電気が使えなくても、「ルーム」は成立してのだが。
マサルが諏訪に来ると「ルーム」にこもることもあった。
高井戸に一人でいるマサルをそうさせた。
月に二回から三回程度しか「ベース」に来ることができなかった。
サンちゃんとキーちゃんが外から戻った。
が、「ルーム」に入るのではなく、また、飲み始めた。
防音を含めて、自作である「ルーム」は音が漏れた。
襖をすべて開けると、アクリル板の窓から中が見えた。
新しい仁が襖を開けた。
皆がいっせいに「ルーム」に入るわけだはないのだ。
スグリは、また、不思議な感じがした。
時間にうるさい清水さんはスタジオの二十分前の集合を義務付けた。
全員が集合し、譜面の確認をした。
チューニングの必要なものは、スタジオに入る前に済ませておかないと清水さんに怒られた。
スタジオは四時間が最短時間とされ、最初の一時間は、メトロノームを裏拍でとるリズム練習にあてられた。
「いいか、プロとアマチュアの違いはリズムだ。正確なリズムが刻めないようならやめろ。」
スグリは最初、何を言っているのか解らなかった。
が、そのトレーニングを続けるうちに、というか、ある時、演奏されている楽器の向こうに拍が聞こえた。
それは今までの音の世界と違うものだった。
見えないものが見えたような気がした。
と言っても、清水さんは毎回リハーサルを顔を出すわけだはなかった。
それでも、その練習、確かに練習は続けられた。
「ねえ、スグリちゃーん、ここも、ぺろぺろしてえ。」
厳格さを崩さない清水さんがスグリとホテルにはいった瞬間から、別人になった。
そして、ホテルを出ると、厳格さが復活した。
「バンドで飯食いたいんだろー。」
そのギャップに戸惑った。
最初にホテルに誘われた時はなんだこいつはと思った。
それでも、そのギャップがスグリを、スグリの女の部分をくすぐった。
そして、歳の数が増えていった。
オージの家の奥座敷を改造した「ルーム」。
マサルの機材は、二度の引越にも耐え、健在だった。
さらにサンちゃんやキーちゃんの機材も増えた。
天井など張ってあるはずもない古い家屋。
上を見上げると、藁葺の骨組がそのまま見えた。
中心に太い大黒柱が伸び、その周りに大木の枝のように梁がめぐらされていた。
直線とアールの正確な曲線でできた都会の建築物とは違い、生き物のようだった。
その奥座敷の襖をあけると防音用の厚いドアがあり、「ルーム」があった。
マーとマサルは「ルーム」へ、サンちゃんとキーちゃんは外に走った。
ライトは消費電力を抑えるために非常に暗かった。
外から、エンジン音がした。
古い家の定格電圧は低く、すべてのアンプをオンにすると悲鳴をあげて消灯した。
そこで、現場で使わなくなった発電機をヒデオが安く手に入れ、電気楽器を援護した。
まあ、電気が使えなくても、「ルーム」は成立してのだが。
マサルが諏訪に来ると「ルーム」にこもることもあった。
高井戸に一人でいるマサルをそうさせた。
月に二回から三回程度しか「ベース」に来ることができなかった。
サンちゃんとキーちゃんが外から戻った。
が、「ルーム」に入るのではなく、また、飲み始めた。
防音を含めて、自作である「ルーム」は音が漏れた。
襖をすべて開けると、アクリル板の窓から中が見えた。
新しい仁が襖を開けた。
皆がいっせいに「ルーム」に入るわけだはないのだ。
スグリは、また、不思議な感じがした。
時間にうるさい清水さんはスタジオの二十分前の集合を義務付けた。
全員が集合し、譜面の確認をした。
チューニングの必要なものは、スタジオに入る前に済ませておかないと清水さんに怒られた。
スタジオは四時間が最短時間とされ、最初の一時間は、メトロノームを裏拍でとるリズム練習にあてられた。
「いいか、プロとアマチュアの違いはリズムだ。正確なリズムが刻めないようならやめろ。」
スグリは最初、何を言っているのか解らなかった。
が、そのトレーニングを続けるうちに、というか、ある時、演奏されている楽器の向こうに拍が聞こえた。
それは今までの音の世界と違うものだった。
見えないものが見えたような気がした。
と言っても、清水さんは毎回リハーサルを顔を出すわけだはなかった。
それでも、その練習、確かに練習は続けられた。
「ねえ、スグリちゃーん、ここも、ぺろぺろしてえ。」
厳格さを崩さない清水さんがスグリとホテルにはいった瞬間から、別人になった。
そして、ホテルを出ると、厳格さが復活した。
「バンドで飯食いたいんだろー。」
そのギャップに戸惑った。
最初にホテルに誘われた時はなんだこいつはと思った。
それでも、そのギャップがスグリを、スグリの女の部分をくすぐった。
そして、歳の数が増えていった。