マーはドラムセットの椅子に座って、、腕組みをした。
マサルは壁際に何本も並んでいるギターケースの中からストラトを出した。
コンプレッサーとオーバードライブをつなげ、ツインリバーブにジャックを差し込み、オンにした。
チューニング前のその状態で、マサルのストロークが始まった。
不快感を伴う微妙なずれ。
そのずれのせいか、共鳴するシンバル。
ディストーションのかかった不協和音。
意図的ではない不協和音
マーは腕組みをしたままで、スティックを握ろうとしなかった。
すべてをの弦を解放の状態でマサルはストロークを続けた。
そして、そのストロークを続けながら左手はチューニングを始めた。
スグリは漏れ出す不協和音に吐き気がした。
そして、自分が音楽的に次元の違うところにいるような気がした。
が、マサルの不協和音は意図的でないものから、意図的なものへと変わっていった。
ハウリングがアクリル板の窓を振動させた。
セブンスコードの響きに似たテンションのきいた音が長く伸びた。
マーがスティックを持った。
マーはマサルの恐怖に似た感覚を投影するかのように、激しいロールから入った。
スグリはいつ自分がそこに立ったのか、気づかなかった。
アクリル板の窓から中を見ていた。
もし自分のバンドのリハだったら、こんなことは許されない。
頭で回るのはプロ志向という言葉のもとに清水さんが自分に言い聞かせた言葉ばかりだった。
自分が清水さんに手なずけられたペットのように感じた。
どちらもリズムを合わせようとしない。
テンポを決めようとしない。
これが音楽か。
キーちゃんが横に立っていた。
マーに合図を送った。
マーはスティックを横に振った。
キーちゃんは中の音がかなりの音量であることを察していた。
が、今日のマサルには音量を下げるように知らせるのは難しかった。
キーちゃんが厚いドアを開けた。
大音量が、響き渡った。
飛び込むように「ルーム」に入り、ドアを閉めた。
「スグリも中に入るの。」
新しい仁が横にいた。
こんな子供に呼び捨てされている自分。
一瞬、ムッしたが、新しい仁の顔を見たら、なぜか、納得できた。
新しい仁は手をスグリの足に絡めていた。
抱えるように、手はスグリ自身の近くにあった。
その手を取って、言った。
「小学生のくせにエッチだぞお。」
「えへ。」
きれいな顔だった。
「まだ、みんな入らないよ。今日はマサルが落ち着いてからのほうがいいみたい。」
キーちゃんはミキサーのセッティングをして、マイクを立て、サックスを出した。
うねりのような音の中でその隙間を探すように単発で、音を出した。
マサルとマーの狂気をなだめるように。
「ごめんね。生意気でしょう。でもね、私たちには普通なの。生まれた時が違うだけで、生きている時間はいっしょでしょ。長さは違っても。」
マサミが言った。
スグリは清水さんの言葉の渦から少しだけ解放されてような気がした。
違う場所にいるんだ。
ここは「ベース」なんだ。
マサルは壁際に何本も並んでいるギターケースの中からストラトを出した。
コンプレッサーとオーバードライブをつなげ、ツインリバーブにジャックを差し込み、オンにした。
チューニング前のその状態で、マサルのストロークが始まった。
不快感を伴う微妙なずれ。
そのずれのせいか、共鳴するシンバル。
ディストーションのかかった不協和音。
意図的ではない不協和音
マーは腕組みをしたままで、スティックを握ろうとしなかった。
すべてをの弦を解放の状態でマサルはストロークを続けた。
そして、そのストロークを続けながら左手はチューニングを始めた。
スグリは漏れ出す不協和音に吐き気がした。
そして、自分が音楽的に次元の違うところにいるような気がした。
が、マサルの不協和音は意図的でないものから、意図的なものへと変わっていった。
ハウリングがアクリル板の窓を振動させた。
セブンスコードの響きに似たテンションのきいた音が長く伸びた。
マーがスティックを持った。
マーはマサルの恐怖に似た感覚を投影するかのように、激しいロールから入った。
スグリはいつ自分がそこに立ったのか、気づかなかった。
アクリル板の窓から中を見ていた。
もし自分のバンドのリハだったら、こんなことは許されない。
頭で回るのはプロ志向という言葉のもとに清水さんが自分に言い聞かせた言葉ばかりだった。
自分が清水さんに手なずけられたペットのように感じた。
どちらもリズムを合わせようとしない。
テンポを決めようとしない。
これが音楽か。
キーちゃんが横に立っていた。
マーに合図を送った。
マーはスティックを横に振った。
キーちゃんは中の音がかなりの音量であることを察していた。
が、今日のマサルには音量を下げるように知らせるのは難しかった。
キーちゃんが厚いドアを開けた。
大音量が、響き渡った。
飛び込むように「ルーム」に入り、ドアを閉めた。
「スグリも中に入るの。」
新しい仁が横にいた。
こんな子供に呼び捨てされている自分。
一瞬、ムッしたが、新しい仁の顔を見たら、なぜか、納得できた。
新しい仁は手をスグリの足に絡めていた。
抱えるように、手はスグリ自身の近くにあった。
その手を取って、言った。
「小学生のくせにエッチだぞお。」
「えへ。」
きれいな顔だった。
「まだ、みんな入らないよ。今日はマサルが落ち着いてからのほうがいいみたい。」
キーちゃんはミキサーのセッティングをして、マイクを立て、サックスを出した。
うねりのような音の中でその隙間を探すように単発で、音を出した。
マサルとマーの狂気をなだめるように。
「ごめんね。生意気でしょう。でもね、私たちには普通なの。生まれた時が違うだけで、生きている時間はいっしょでしょ。長さは違っても。」
マサミが言った。
スグリは清水さんの言葉の渦から少しだけ解放されてような気がした。
違う場所にいるんだ。
ここは「ベース」なんだ。