仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

その手の中に8

2012年06月21日 14時24分46秒 | Weblog
身体を流れる不思議な電流。

スグリの右手を新しい仁の左手が握っていた。
新しい仁の右手はスグリの脇腹からへそに向かって動いた。
へそに到達すると一度止まった。
そこからへその周りを円形に移動した。
あわてたわけではないが、スグリはその時、新しい仁の手に自分の左手をのせた。

電流が走った。

強烈な静電気とは違った。
痛みはなかった。
が、一瞬にして身体のすべての部分を駆け巡り、新しい仁の手と重なったスグリの手に集中した。
暖かな感触が、スグリのへその周りを回った。

ヒデオもアキコも全裸にならなった。
ムービングでなくヴォイスの中にいた。
すっと新しい仁が重なったその手を抜き取り、スグリの手を握り返した。
そして、大きく両手をひろげるようにして、スグリを解放した。
スグリは身体の中をめぐる電流に導かれるように身体が揺れた。

新しい仁の手がスグリの服に触れた。
あらゆる呪縛から解き放たれるように身体をくねらせ、新しい仁の手に絡まるようにスグリは服を脱いだ。
ブラジャーはつけていなかった。
パンツも新しい仁の手に絡まって落ちた。
ショーツも落ちた。

皮膚が音を吸収した。

新しい仁も全裸になった。

二つの影がシンクロするように動きだした。

波のように、風のように、蝶のように、

ずっと以前から組んでいたかのように二人は踊った。

同調はすべての奏者に伝わった。
あの時のように、演奏を止めることなく、皆が互いに導きあい、全裸になった。

スグリと新しい仁は背中を合わせるようにして中心で回転した。
ヴォイスの面々はその手をつなぎ、輪をつくり、中心を支えた。
演奏が、静かなテンポをつくり終焉に向かうまで。

スグリの身体からはそこに内在するすべての液体が、毒素をはきだしように噴出した。