仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

その手の中に7

2012年06月18日 16時14分27秒 | Weblog
ヒカルが名古屋にいってから、ベースのポジションが空いていた。
マサミのキーボードがカバーしていたが、挑戦者のサンちゃんがベースを取った。
それに次いでハルもベースに挑戦した。
ヒカルがいなくなってから、二人は競うようにベースを弾いた。
トレーニングはマサルの指導を受けた。
もともと、ドラムスのサンちゃんはリズム感には問題がなかった。
リズム譜以外の譜面は難しいものがあった。
ハルは、というと、解放弦のフィンガリングから始まった。
道は長そう感じられたが、センスがカバーした。
解放弦だけでも「ビーエス」のサウンドには調和できた。

再び、スグリは入室した。
新しい仁も、サンちゃんも、ハルも、マサミも、アキコ、ヒデオ、その他、仁とリツコを除くすべてのメンバー、いや、オージはもう寝ていた。

マサルの音が変わっていた。
マーのドレムセットの横にはもう一台、ドラムスがセットされていたが、サンちゃんは、ティンパレスとハイハット、シンバルを二枚セットしなおして、マーの前に陣取った。
マサルのギターはテンポがあるようでないよなリフを繰り返していた。

再スタートは、キーちゃんのサックスから始まった。

マサルの単音のリフに誘われて、少し上の空気を吸うようなフレーズがゆっくりとしたテンポで始まった。
ハルのベースがイー弦の解放で支えるように、ひろげるようにテンポとリズムの間を埋めた。

新しい仁がスグリの手を握っていた。
そのせいもあってか、スグリはジャストビートの呪縛から、いくぶん、解放されていた。

ヴォイスが始まった。

ワンヤ、カシャ、カシャ、カシャ、グン、ワンヤ。
イヨヤー、イヨヤ、イヨヤー、サバラワナ、ゴエ

むしろ、ヴォイスのほうがインテンポのようにスグリは感じた。

その上に波が、うねりが、音の渦が拡がるのだ。

押し寄せ、引き、登りつめ、はじけ、燃え上がり、結晶化して、分散する。

これは、何。
違う。
耳で聞こえるものじゃないのね。
身体が、いいえ、身体の奥のもっと深い部分が感じる。
そうか、頭で聞いてちゃいけなかったんだ。

気付くと、新しい仁の手が、握っていないほうの手が、スグリの脇腹から徐々に中央に移動していた。
その動きを止める理由がスグリには浮かばなかった。
動き自体が、その空間で始まった、いや、空間そのものがうごめくような空気に同調していたから。