仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

その手の中に6

2012年06月15日 16時17分44秒 | Weblog
振り向くと、また、新しい仁が立っていた。
真っ直ぐにスグリを見ていた。
その視線から、目を離すことができなかった。

手が伸びた。

今度は両手の掌をひろげて、スグリの左右両方の乳房を包んだ。

掌が乳房の皮膚から身体の中へ入り込んでくる感覚。

目を閉じた。

掌のそれぞれの指が木の枝のようになって、身体の隅々にまで伸びていくような感覚。

とがった先端が、流れの途絶えた神経を刺激した。
何かが流れ出した。
記憶の作り出した壁を、身体に染みついた意識を、ニュートラルな状態にするような流れ。

スグリの力が抜けた。
スグリの身体が覆いかぶさるようにして新しい仁と重なった。
新しい仁にはさすがにその身体を支えることはできなかった。
乳房に掌をあてたまま、床に倒れ込んだ
はっとして、スグリは手をついた。
「重いよう。」
「失礼ねえ。」
スグリが身体を起こした。
新しい仁の手はそのままだった。
新しい仁の身体を起こして両手を握り、静かにはなした。
「本当に小学生のくせにエッチね。」
その顔は綺麗な笑顔だった。
新しい仁も笑った。
「スグリ、行こうよ。」
まるでずっと前から、スグリを知っているかのようだった。
新しい仁がスグリの手を取った。
「よし。」
ヒデオが言った。
仁がヒデオの肩に手をのせた。
「わかった。」
仁はリツコのいる、そして、得体のしれない生き物のいる土間の横の小部屋に向かった。
「サンちゃんどうする。」
「今日の感じだと、ハルのほうがいいかな。」
「そうね。」