週刊 サイエンスジャーナル 2014.3.2
H2Aロケット打ち上げ成功!全天降水観測衛星(GPM)が「ゲリラ豪雪」を予測可能に 2014年2月28日、H2Aロケット23号機が午前3時37分、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。約15分後、搭載していた全球降水観測(GPM)衛星を予定軌道に投入し、打ち上げは成功した。 国産の主力ロケットであるH2Aの打ち上げ成功は17回連続。成功率は約96%となり、高い信頼性を示した。日本が官民挙げて取り組む、世界の衛星打ち上げビジネス参入にも弾みがつきそうだ。 GPM衛星は、複数の衛星で地球規模の降水量などを観測する計画を担うメーンの衛星。宇宙航空研究開発機構(JAXA)と、米航空宇宙局(NASA)が共同開発した。得られたデータは、台風や豪雨など気象災害の予報精度の向上に生かされる。 打ち上げ後の記者会見で、NASAのマイケル・フレリック地球科学部長は「この衛星で地球の天候循環を深く理解できる。洪水や暴風雪、異常気象の予測がよりできるようになるだろう」。JAXAの小嶋正弘プロジェクトマネジャーは「日本が開発したレーダーの出番が来て、わくわくしている」と語った。 GPM衛星のほか、香川大、信州大、帝京大、鹿児島大、多摩美術大、大阪府立大、筑波大が開発した小型衛星7基も、H2Aによって宇宙に運ばれた。 H2Aは2001年に初飛行した日本の主力ロケット。昨年1月の22号機以来、約1年ぶりの打ち上げだった。2003年の6号機が失敗して以降は成功が続く。製造元の三菱重工業は高い信頼性と円安を背景に、海外の衛星打ち上げ市場へ積極的に食い込みたい考えだ。宮永俊一社長は「安全に、正確な時間に打ち上げることは私たちの使命。世界の衛星打ち上げニーズが広がるなか、世の中に貢献していきたい」と語った。 |
花粉症とダブルパンチ!全国でPM 2.5濃度が上昇「注意喚起」レベルに!対策は? インフルエンザもようやく減少傾向になり、少し暖かくなった今日この頃だが、まだまだマスクが欠かせない日が続いてる。というのはスギ花粉がいよいよピークを迎えるうえに、中国から飛来したPM2.5が話題になっているからだ。 2014年2月26日、日本列島が霧が覆ったように真っ白になった。原因は中国から飛来したPM2・5だ。日本海側を中心に、山口、兵庫、香川、大阪、三重、福井、金沢、富山、新潟、福島の10府県で注意喚起情報が出された。春の移動性高気圧に乗って中国から飛来したらしい。 話題のPM2.5とは何だろうか?PMとは、英語でParticulate Matter。2.5とは、直径が2.5μm以下の超微粒子のこと。微小粒子状物質という呼び方もある。大気汚染の原因物質とされている浮遊粒子状物質(SPM)は、環境基準として「大気中に浮遊する粒子状物質であってその粒径が 10μm以下のものをいう」と定められているが、それよりもはるかに小さい粒子。 PM2.5はぜんそくや気管支炎を引き起こす。それは大きな粒子より小さな粒子の方が気管を通過しやすく、肺胞など気道より奥に付着するため、人体への影響が大きいと考えられている。 代表的な微小粒子状物質であるディーゼル排気微粒子は、大部分が粒径0.1~0.3μmの範囲内にあり、発ガン性や気管支ぜんそく、花粉症などの健康影響との関連が懸念されている。 大気中粒子状物質の発生源としては,ボイラー、焼却炉等のばい煙を発生する施設、自動車、船舶等、人為起源がある。また、火山の噴煙や黄砂、花粉など植物由来、海塩等の自然起源など多様な要因がある。 |
地球最古の地殻、44億年前と年代特定!ジャック・ヒルズのジルコン粒子から 地球はいつ誕生したのだろうか?地球は今からおよそ、45億年前に誕生したと考えられている。太陽系の隕石や月の岩石の生成年代から、この頃、原始地球が形成されたと考えられている。では地球上で最古の岩石とは何だろう? 地球が誕生して間もない45億4000万年前から44億4000万年前のマントルに由来する溶岩が、カナダ・バフィン島とグリーンランド西部で見つかったと、米カーネギー研究所の研究チームが2010年8月『ネイチャー』に発表している。 44億年前、現在、知られている最古の岩石鉱物が現れる。西オーストラリア州のジャック・ヒルズで発見されたジルコン粒子のうち最古の物(44億400万±800万年前)。ジルコン粒子の中にダイヤモンドが含まれていることが、2007年に明らかになっている。 今回、オーストラリアで地球上で最も古い大陸地殻が、44億年前に存在したことが再確認された。 ウィスコンシン大学の研究チームは、岩石に含まれる「ジルコン粒子」を詳しく調べ、結晶内に捉えられた放射性の鉛について、その原子の実物を調査した。これらの原子は、溶岩が固まる際に分析対象となったジルコン結晶の中に閉じ込められたものだ。 これは当初は放射性を持つウランだった物質が、崩壊を経て鉛に変化するもので、その過程を調べることでこれらの物質の年代が特定できる。鉛原子の直接観察による年代測定から、これらのジルコン結晶は43億7400万年前(誤差はプラスマイナス600万年)のものである可能性が高いことがわかった。 |
アイソン彗星の置きみやげ?アンモニアから太陽系誕生の歴史がわかる! 昨年11月29日早朝、アイソン彗星は、太陽に最も接近(近日点を通過)した。その後、近日点通過前の日本時間午前2時過ぎから暗くなり始めた。 近日点通過後は、核と思われるような構造がほとんどなくなり、軌道上に広がった細長い構造が淡く輝くのみとなった。これは核が崩壊した後ほとんど融けてしまったと考えられる。その後、アイソン彗星が明るい彗星として見えることはなかった。 昨年話題になった、パンスターズ彗星、アイソン彗星はどちらも予想より暗くなってしまい。一般の観測者をがっかりさせてしまったが、天文学的には貴重な観測データを得ている。 今回、京都産業大学の研究者を中心とする研究チームは、2013年11月にすばる望遠鏡の高分散分光装置(HDS)を用いてアイソン彗星を観測し、単独の彗星としては世界で初めて15NH2(アミノ・ラジカルの窒素同位体)の検出に成功した。 15NH2は彗星に含まれる窒素の主な担い手であるアンモニア分子の由来を知る上で手がかりとなる物質。今回の観測により、単独の彗星においてもアンモニア分子の窒素同位体比(14N/15N比)は、太陽や地球大気の値に比べて「15Nがより多く濃集している」ことが明らかになった。 今回の観測結果は、彗星に含まれているアンモニア分子が、低温度の星間塵表面で形成されたことを示唆している。さらに本研究結果は、彗星に取り込まれたアンモニア分子の形成温度 (約10ケルビン)は従来考えられていた温度(約30ケルビン)より低いことを示唆しており、太陽系形成期の温度環境について再検討を迫る成果である。 |
われわれは“ブラックホール”の中にいる?それとも“ブラックホール”は存在しない? ブラックホール (black hole) とは、極めて高密度かつ大質量で、強い重力のために物質だけでなく光さえ脱出することができない天体である。 ブラックホールはその特性上、直接的な観測を行うことは困難である。しかし他の天体との相互作用を介して間接的な観測が行われている。 1971年、今から40年ほど前に「はくちょう座X-1」という、X線で明るく光る不思議な天体が発見された。X線強度が秒以下の短い時間で変動することや、太陽の数倍以上の質量を持つこともわかった。短い時間でX線が変動することは、X線を出す領域、すなわち天体が極めて小さいことを意味する。こうして、「はくちょう座 X-1」 はブラックホール候補天体となった。 物質がブラックホールへ落下するときに発する「X線」で、ブラックホールの存在は確認できる。しかし今なお、その正体ははっきり捕らえられず、謎に満ちており、いろいろな仮説が百花繚乱、咲き乱れている。 今日はそのうち幾つかの説を紹介しよう。まず、われわれの宇宙がブラックホールからはじまったというものである。 過去数十年 の間に、多くの理論物理学者が、宇宙は、われわれが暮らす宇宙1つだけではないと考えるようになった。この 宇宙は、無数の別々の宇宙からなる「マルチバース(多宇宙)」の中の1つかもしれないということだ。 1つの宇宙が別の宇宙とどのようにつながるのか、あるいはそもそもつながっているのかという問題は、大きな論争を呼んでいる。すべては非常に思弁的な議論で、現時点では証明はまったく不可能だ。しかし、もし植物の種のように、「宇宙の種」があり、基本物質が高度に圧縮され、保護殻の中に隠された塊となっているとしたらどうだろうか? この記述は、まさにブラックホールの内部で作られるものの説明と同じだ。そのブラックホールの中で鍛え上げられた種が、138億年前にビッグ・バンを起こした可能性がある。われわれの宇宙は以後ずっと急激な膨張を続けているが、それでも今なお、われわれはブラックホールの中にいるのかもしれない。 |
世界最高耐熱(390℃超)のポリイミド・バイオプラスチックを開発!金属代替素材 バイオプラスチック (bioplastic) とは、生物資源(バイオマス)から作られたプラスチックである。主にデンプンや糖の含有量の多いトウモロコシやサトウキビなどから製造される。技術的には木、米、生ゴミ、牛乳等からも製造可能であるとされている。 バイオプラスチックの多くは生分解性プラスチックとしての性質を持つ。微生物によって水と二酸化炭素に分解され、その二酸化炭素を元に植物が光合成によってデンプンを作り出し、デンプンからまた生分解性プラスチックの原料を作り出すことができるので循環性がある。 しかし、プラスチックの利点であった耐久性、機能性に劣り、我々の生活する環境に耐えられず、使用中あるいは保管中に分解が進み、使用不能となる可能性があった。 今回、北陸先端科学技術大学と筑波大学の研究チームが、遺伝子組換えした大腸菌から得られるシナモン類を光化学的手法で加工して、世界最高耐熱性で、丈夫なポリイミドのバイオプラスチックを作るのに成功した。 耐熱温度は、390℃超。得られた史上最高耐熱のバイオプラスチックシートは、透明性、低熱膨張率などの高い機能を持ち、電装部品や自動車部品などのガラスや金属の代替として期待される。 |