ウロコのつぶやき

昭和生まれの深海魚が海の底からお送りします。

妖精を見るには、妖精の目がいる

2006-11-21 23:06:29 | 日記
今読んでる本から。

■「オペラ座の怪人」ガストン・ルルー
色んな所から出ていますが、とりあえず訳の新しそうな角川版で。

まだ途中までしか読んでませんが、ちょっと感動したところ。
映画版でははっきりとは描かれていなくて、でも私が「こういう意味もあるのかな?」と漠然と感じていたことが、原作ではきっちり書いてあった、という部分が2箇所ありました。

ひとつは、「マスカレード」の解釈。前の記事で「世の中のすべての人間が仮面を被っているようなものだと歌ってるんじゃないか?」と書きましたが、原作の最初の方にそれを示唆する記述があります。
「パリの人たちはいつも仮面舞踏会をやっているようなものだったから(以下略)」
あ、やっぱりそういう含みだったんだ。

もうひとつは西洋の「妖精」について。
私はファントムという存在に「妖精」の面影を感じたのですが、原作にはちゃんと、ラウルとクリスティーヌが幼い頃に妖精たちの物語に親しんでいたこと、クリスティーヌの父親も妖精に詳しく(スウェーデン出身という設定はここで活きてくるんですね。スカンジナビア半島はケルトと並ぶ妖精の本場だし)、「音楽の天使」の話もそれら妖精の話に混じって語られていることが描写されています。
やはり「音楽の天使」の「天使」はキリスト教における神の忠実な僕ではなく、キリスト教によって駆逐されてしまった古代宗教の神、その零落した姿である妖精の仲間なんじゃないかと思うんですが、どうでしょう。
クリスティーヌのパパによると、「音楽の天使」は音楽に対する神秘的なひらめきを与えてくれる存在のようですが……どうしても私は「リャナン・シー」のような存在を連想してしまいます。
リャナン・シーは女の妖精で、彼女に恋した詩人に天才的な霊感を与える代わりに、精気を吸い取って早死にさせてしまうんだそうです。

そういった部分は、原作から舞台化する際に描写としては省かれてるんですが、ちゃんとその本質は伝えてたんだなあと、これは舞台の脚本を担当した人の仕事ですね。すごいと思いました。

というわけで、リャナン・シーの出て来る漫画↓
■「妖精標本(フェアリー・キューブ)」由貴香織里
その他の妖精についてもよく調べてます(←偉そう)。3巻で完結。
でも由貴さんの漫画に関しては、こういうスペクタクルなラストより、初期のカインシリーズみたいな身もフタもない終わり方の方が好きですね。個人的には。
3巻に関してはなんだか、「母の愛炸裂!」っていう感じで、ああ、そう言えばこの人子供生まれたんだなあと思いました。作者のそういう心境の変化って、やっぱり作品にも反映されるのかも知れませんね。
相変わらず絵は美麗で素敵です。ちょっとホラーも入ってるけど。

おまけで、オススメの妖精あんちょこ本です。これ1冊で結構知ったかできます。
■「妖精の誕生―フェアリー神話学―」トマス・カイトリー
それからこっちは私の趣味。水木サン大好き♪
■「カラー版 妖精画談」水木しげる

ちなみにエントリータイトルの「妖精を見るには、妖精の目がいる」は「戦闘妖精・雪風」より借用。
「戦闘妖精・雪風(改)」神林長平
「グッドラック―戦闘妖精・雪風」神林長平

***

で、まあ、今回「オペラ座」を演じることになった件の彼は、多分妖精の目を持ってるんじゃないかと私は勝手に思ってます。目には見えないものを見、耳には聞こえないものを聞かなければあんな表現は出来ないと思うので。そんな彼が、これからどんな「オペラ座」を作り上げて行くのか、とても楽しみです。

***

という訳で、拍手コメントへのお返事。

エリックという名前自体はフランスでよくある男性の名前のようなので、元ネタの有無までははっきりとは分かりませんね。
でも、ガストン・ルルーが「エレファントマン」のモデルであるジョン・メリックの存在を知っていて、「オペラ座」を書く上で参考にした可能性はあると思います。
原作を読み終わってから、また何か思うことがあればここに書くと思います。
興味深い話題をありがとうございました。

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2 コメント

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Unknown (なおみ)
2006-11-22 03:43:46
こんばんわ。
私はね、大ちゃんにはスケートの天使がついていると信じてます。
だってそうじゃなきゃ、何故彼は親がコーチな訳でもお金持ちでもないのに、日本男子なのに、フィギュアスケート界で世界のTOPグループにいると思います~?彼は奇跡の人だと思いますよ、ほんと。思い込み激しすぎですか?(笑)
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Unknown (虹川 章)
2006-11-22 23:07:25
なおみさん、こんばんは。
私も「我ながら痛いわーひくわー」と思いながらも、「この人って……」と思ってます。
たまたま近所にリンクができて、たまたまホッケーの見学に行ってフィギュアと出会って、という流れは妙にドラマチックだし。
その後は彼が自分の意志で運命を切り開いたというより、彼の才能によって周囲の人が動かされて来たような感じもします。
今は自分で自分の運命をコントロールしようとしているようなので、上手くいくことを祈ってます。
私はあんまり神様とか運命とかは信じていませんが、それでも努力や才能だけではどうにもならない何かはあると思います。
そして大ちゃんには確かに、何かこうタダでは済まない何かがあると思います(笑)。
そういうタイプに私は弱いんですよね…。
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