ウロコのつぶやき

昭和生まれの深海魚が海の底からお送りします。

ゾウは夢をかなえてくれたか?

2009-02-05 19:52:02 | 読書感想文

夢をかなえるゾウ

かーなーり売れてますね。
こう、あんまりにも売れてると却って手が出しにくくて、でもちょっと気になるなあ、と思ってたら、たまたま読む機会があったので読んでみました。
ぱっと見分厚く見えますが、紙も厚いし字も大きめなので2、3日でさらっと読めます。文章も読み易いですしね。

以下、多少のネタバレも含みますのでご注意下さい。

***

小説の形式を借りたサラリーマン向け自己啓発書…とどこかで聞いたんですが、実際そんな感じでした。

ガネーシャというのは、ヒンズー教ではシヴァ神の息子という事になってる神様です。ゾウの頭と4本の腕を持つぽっちゃり体型の神様で、日本では聖天とか歓喜天とか呼ばれています。
障害を取除いてくれる他、学問の神様とも商売の神様とも言われ、現世利益のある神様としてインドではとても人気があるんだとか。
そんなガネーシャが夢をかなえてくれる訳ですが、神様のミラクルパワーで助けてくれる訳では決してなく、本人が自力で自分の夢に辿り着けるよう、助言を与えてくれる神様として登場します。
要するにこの本では、「仕事の上で成功するためのノウハウ」をガネーシャの言葉を通して語らせるという事ですね。現世利益の神様であり、見た目も個性的でインパクトのあるガネーシャ神をキャラとして使うという目の付けどころは上手いなあと思いました。

この本に書いてある成功の法則、その内容自体はごくシンプルで既によく知られている、当たり前の事が多いです。正しいけれど、正しさ故に当たり前過ぎて顧みられなくなっているものを、ガネーシャというユニークなキャラに語らせることで目先を新しく見せることに成功したって言う事かなあ…と思いながら読んで行ったら、最後の方でガネーシャが自分で「こんなことはずっと昔から言われ続けて来てる」とか言ってました。

個人的にびっくりしたのは、終盤の展開。
主人公の「ぼく」がガネーシャとドタバタコメディを繰り広げる日々も終わりに近づいた頃、ガネーシャは主人公に行動せよ、と促します。
ここからの主人公の行動、ちょっとだけ数年前の自分と被ってデジャヴを感じてしまいました。
今の自分の仕事は本当に自分がやりたい事なのか、と考え、「ずっとやってみたかったけど、どうせ無理だろうと思って心の片隅に追いやっていた」仕事への挑戦を考える。嫌々仕事をやっていて、いい仕事なんかできる訳がありません。
今からではもう遅いかも知れない。でも、今やらなければどんどん遅くなって行くだけ。
もちろん、ただ闇雲に夢に向かって突撃しても玉砕あるのみな訳で、それなりの準備や勉強はして行かなくてはならない(その為の方法は、その前の段階でさんざん語られている訳です)。
「そう言えば、本当は建築の仕事がやってみたかった」そう思い出した主人公は、アマチュアを対象としたコンペティションへの応募を目指して勉強を始めます。
自分の作品を専門家に評価して貰う。これ、大事なんですね。特に経験のない異業種への転職を目指す場合は。
その道の専門家からある程度のお墨付きを貰えれば、就職活動の際に売りに出来るし、自分に取っての自信にも繋がる。逆にいえば、余りにも評価されないのなら、それは自分に適性が無かったということ(ガネーシャの教えの中には、「自分の得意なことをやりなさい」、というものもある)。

私自身、岡山の田舎から関西へ出て来る時には、二十代も終わりの頃で正直もう遅いかも、と思ったりもしました。でもこのまま本当にやりたい事に挑戦せずに三十超えたら絶対後悔する、と思って出て来たんですよね。
その後は必ずしも思い通りにことが運んだ訳ではありませんが(正直、何度田舎へ帰ろうと思ったかわからない)、でも取りあえずあの時行動を起こして良かったと今は思っています。

***

そこでガネーシャの、最初の台詞に戻ります。
「覚悟でけてる?」
この本を読んで、ガネーシャに振り回される「ぼく」を笑って終わるなら、この本はちょっとしたヒマ潰しにしかならないかも知れません。
でも、「ぼく」の姿に自分を重ねて行動を起こす人がいたら、その人に取っては「自分の人生を変えた本」になるかも知れないですね。
私に取っては…既に一度通った道だったみたいです(笑)。

***

でも実際、友達見てても一回就職してから「私、ホントはコレがやりたいの!」とばかりに転職する人多い気がする。専門学校に入り直したりして。
一度就職して「仕事」というものがどういうものか分かってやっと、自分がやりたいことをきちんと考えられるというのもあるし、中々最初の一発目でいい仕事に辿り着くのは難しいですね。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿