僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

歩く女

2007年08月10日 | 何でも掲示板
女はうきうきしていた。
今日こそ今までのウサを解消できそうだった。
石畳を叩く靴音が自然にスイングする。
I can't stop love'n you…
鼻歌が出てしまう自分が嬉しかった。


この数日というもの、いいことは何もなかった。

同僚が起こしたつまらない失敗の穴埋めで
深夜までの残業。

休日の為にと引き出しから取り出したサングラスを
うっかり床に置いて、踏んでしまった。

ポイントが5000円分ほど溜まっていたイタリアンレストランの
カードをポケットに入れたままクリーニングに出してしまった。
当然のことだが、問い合わせても知らないとの答えだった。

一月前に治したばかりだった奥歯が
またうずき出していた。

連日の暑さにうんざりする通勤ラッシュで
後ろに立った男が堅くなった股間をこすりつけてくるのに
抗議する気力も失っていた。


それに引き替え、今日の軽やかな気分は何だ?
二月前にバーゲンで手に入れたミハマのパンプスが
足にぴったりだったから?

そうだ!

ベルベットの大きなリボンがカワイイと
一目惚れして買った。
たった1500円しか割引がなかったが
思い切って6㌢のパンプスを買ってしまった。
3㌢以上のものを履いたことがなかった女にとって
それはかなりの冒険だったが
試着した時の、ふくらはぎがキュッと締まる感覚が
妙に新鮮だったのだ。

つづく


コメント (7)
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