それはコンソールパネルの一角から静かに始まった。
コマンダーが通常チェックを終え一息入れようとシートを離れた時、ひとつの小さなREDが数回点滅し消えた。
ちらっと目をやったコマンダーはパネルをコツコツとたたいてみた、が変化はない。
バグか、やれやれ、つまらん仕事がまたひとつ増えやがった。
ぼやきながらパネルのメンテナンスボックスに手を伸ばした時、小さなREDがまたひとつ消えた。
コマンダーの表情にかげりが見えたが、それはまだ、数分後に始まる嵐を前にせっせと穴を掘る砂浜の蟹のように、たいした意味はなかった。
貨物ブロック遮蔽システムのRED消え、通信コントロール、推進動力制御部へと異常が広がると
コマンダーの心拍数は一気に跳ね上がった。
今進行しつつある現実をコマンダーが理解するにはあとほんの少しだが時間が必要だった。
をいをい、何だこりゃ、今までこんな故障は起きたこと無かったぞ。
ってことは、ひょっとして故障じゃない?
ま、まさかサイバー攻撃か?
危機を理解したコマンダーがハザードボックスに拳をたたきつけると、
非常事態を知らせるアラームが鳴り響き大型スペースシップ全体を振動させた。
ハートマンのバイオリストコンピュータは幾重にもブロックされたセキュリティシステムにウイルスを送り込む。
それが成功すると、もうスペースシップはハートマンの意思通りに動くでかいだけの宇宙船だ。
計画通り反乱の実行プログラムが開始されたのだ。