あの子って私みたい
ん、どれ?
ほら、シッポがちょっと赤いあれ
違う!留美子はこっちのあれだな
え~、どれ?
ほら、こっちに来た来た、こいつ
ナァにこの子落ち着き無~い、チョコチョコ動き過ぎ~
結構元気だよな
ねぇ辰雄、魚って水の中でずっと暮らしてるんだよね
そうだなぁ魚だもんな
水の中っていいのかなぁ
何が?
だって魚って上にも下にも行けるし
俺たちは地面の上だけだってこと?
自由なのは鳥と一緒だけど、羽ばたかなくても落ちないし
留美子って魚になりたい?
辰雄も魚ならいいよ
オレ、人間の方がいい
そうだね。人間の方がいいね、やっぱ人間の方がいいよ、人間でよかったー
自分だと言われた魚を目で追いながら、
留美子は何度もつぶやき、
その度に辰雄の肩にぶつけるショートヘアから
優しいシャンプーの香りがした
辰雄は、自分ならどの魚なのだろうと探しながら
留美子と魚になってもいいかな、と思ったりしている。