僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

レジスタンス

2014年03月01日 | SF小説ハートマン



その時老婆はCMS(セントラル・モニターシステム)のコードをそっと引き抜き、フルサポートベッドを起床介護にセットした。

ベッドはウィーンとわずかな機械音と共に老婆を優しくサポートし彼女を遊歩カプセルへと導いた。
遊歩カプセルは全自動の車いすのようなもので、介護なしでも安全に散歩が楽しめるものだ。

一時期自動車メーカーと家電メーカーが開発を競ったが、
結局イスラエルの町工場で作られたものが圧倒的な実用性を武器に台頭し
またたく間に世界中のユーザーを獲得した。

今では遊歩カプセルと言えばこのメーカーのブランドロゴを思い浮かべるほど有名になっている。



つい今までまるで植物のように眠りに就いていた老婆は、2つの目を異常なまでに広げ瞬きもせず何かを見つめている。


深いしわに包まれた彼女の手は絶え間なく震え、何かを指し示している。
遊歩カプセルは音もなく建物を離れ、ストリートの下を走るケーブルスペースを移動していった。

保安担当がCMSの異常に気付き老婆のベッドを確認しようと監視カメラを向けた時、
すでに遊歩カプセルはカメラの監視範囲から遠く離れたところを
老婆の指さす方向に向けて最高速度で移動していた。















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